EP22
「さぁ、これで糸蛇と距離を取って戦うことが出来なくなったんじゃない?」
「・・・つくづく陰湿な人間だな」
ミカエルは巡流の問いに答えないものの短剣を取り出し睨みつけながら返答の代わりに悪態をついた。
「さぁ槍を失った貴方は恐れるほどでもないわ、言うならデザート、美味しく頂きましょう。
糸蛇たちからヨダレが溢れてもう止まらないの。食らいつきなさい!」
距離を保ち戦うことが難しくなったミカエルに向かって再び巡流の右手五本指から生まれている
五本の糸蛇がミカエルに向かって飛び出す。
短剣一本で立ち向かうミカエルだったが次第に状況が怪しくなり、そして・・・
「しまった・・・!」
短剣の相手をしていなかったうちの一本が手首を締め上げると、
もう一本が鞭の様に大きく撓り短剣を叩き落とした。
「は、離せぇ・・・」
抵抗するも振り落とすことは出来ずそのままもう片方の手首と両手足を締め上げられ
イエスキリストの様に十字に吊り上げられてしまった。
「さぁこれで終わりにしましょう」
左手の薬指を除いた四本指から出ている糸たちが集まり一本の大蛇に変化する。
「あの女を貫きなさい!ジャイアントスネーク!!!」
『グオォォォォ!!!』
「チョット待ったぁ!!!」
ドゴォン!とミカエルに向かって伸びていた糸蛇に向かって突然飛び出してきたサタンが嚙みついた。
「な、貴方なんでここに!?」
「あ?何でって帰りが遅いから心配になって見に来たんだよ。
そしたらお前がそんなザマだったからな、今助けてやるよ。地獄火!」
噛みついたサタンの口から黒炎が飛び出し巡流の糸蛇を燃やし尽くした。
「うぉぉぉぉ!このままお前も燃えちまえ!」
炎の勢いは止まらず糸の元である巡流の身体に引火し「ゴォゴォ」と激しく燃えた。
「やっぱ糸はよく燃えるな!」
サタンのおかげでミカエルの身体を縛っていた糸蛇たちは燃えミカエルは解放された。
「まさか、貴方に借りを作る日が来るなんてね」
「おいおい、まずはお礼だろ?」
「・・・アイツを無事倒せたらね」
「え、まだ死んで無いのか?」
「見なさい、圭吾はまだ縛られたままよ」
そうだ、何か炎の勢いで誤魔化されているが勝負はまだ終わっていなかった。
俺は以前運命の赤い糸に縛られたままだ、そしてその糸の先には・・・。
「熱いわね、竜の加護が無ければ今頃灰よ」
何事もなかったような顔をした巡流が立っていた。
「マジかよ!?おい、アイツ何者なんだよ人間じゃないのかよ!」
「竜の呪いを一身に受けた人間よ。
相見た感じ、100%とはいかないけど力も相当使いこなせてるみたい」
「なるほどね、それも”炎竜”か。やい!オマエ!ケイゴを離しやがれ!」
「また一人変なのがそれも火を噴く輩が増えたみたいですね。そもそも誰なんですかアナタは」
「俺はケイゴのご主人様だぞ!」
「・・・圭吾様ぁ?そういうプレイがお好きなんですかぁ?」
「ひ、ひぃ・・・そういうワケじゃ、ごめんなさい・・・」
その恐ろしい般若にも似た恐ろしい顔に思わず謝ってしまった。
「まぁいいでしょう。
圭吾様をたぶらかす泥棒猫が一匹から二匹に増えただけですから、やることは変わりません。絞め殺す」
「サタン、来るわよ」
「わーてるって!俺の今の恰好見て準備万端なのが分かんねぇか?」
指から再び糸を伸ばしている巡流に向かって拳を奮い立たせたサタンと、
拾い直した短剣を持ったミカエルが同時に巡流に向かって飛び出す。
サタンとミカエルが繰り出した拳と短剣を巡流は糸で作った盾で防ぐ。
「クッソ、そんな風にも操れんのかよ・・・」
「感心してないで相手の動きに集中しなさいお返しが飛んでくるわよ!」
左薬指を除いた計9本の指から放たれる糸蛇たちが二人に向かって襲い掛かるが
一度経験しているミカエルと口の中で炎の牙を生み出せるサタンの二人は
今度は手慣れたように処理をした。
「どうやら、決着だな」
これ以上このままなら苦戦を強いられることはないと確信したサタンが大きく前に詰めた時、
巡流の糸が先ほどまでとは違う動きをしだしたのだった。
何故だか分からないが傍から見ているとそれがとても危険な予感がしたのだ。
「マズイ、来ちゃだめだサタン!」
巡流の目の前にまで飛び出し拳を繰り出したサタンの先に
あったのは大蛇でもなく盾でも無く大きな竜の首だった。




