EP16
まさか日に二回も保健室を利用するなんて、それも入学してすぐに。
しばらく時間が経ち強打を受けた顎が腫れてきてしまった俺は、
ガーゼとテーピングで保護をした顎を擦りながら保健室から教室に戻る途中だった。
保健室の先生曰く一応授業を受けることは出来る状況とのこと。
しっかし、まさかあの貧弱そうな数多先輩からあんな強烈な一撃が飛び出してくるなんて。
チワワのような凶暴な小動物みたいな人だな。
教室に戻るとすでに授業が終わった教室には暇を持て余した生徒たちが談笑をしていたり。
授業に疲れ家に帰宅することよりも、
睡眠を優先させている生徒だったりとゆるい空気が教室に広がっていた。
「おー!ケイゴ、やっと戻って来たか」
俺が下校の為鞄を置いたままの教室に入るとサタンが俺の隣の自分の席で座っており
俺の入室に気づくと「ガタッ」と立ち上がった。
「何で待ってるんだお前。合鍵を前に渡したはずだろ?」
いつの間にか俺の家に住む形となったサタンには
下校時間が合わないと玄関前で待ってもらうことになる為以前に部屋の合鍵を渡している。
「さっき数多先輩が教室に来て
「放課後四人でそこらをブラつかないか。奢るからさ」って誘ってくれたんだ」
確かにこの学校は都会の真ん中にあるしブラつくだけでも楽しめそうではあるな。
それに奢りだなんて、数多先輩も太っ腹だなスリーサイズは棒みたいだったけど。
ーーーーー
「二人共遅いじゃないか」
数多先輩が呼び掛けた集合の校門前に向かうと既に数多先輩とミカエルが先に待っていた。
「数多先輩は発起人だから分かるけどまさかミカエルまで楽しみにしてるなんて」
「バカ言わないで私の本心は行きたくなんてないわよ。
ゼウス様に言われてるから仕方なく貴方の”青春ごっこ”に協力してあげているだけよ」
ミカエルは心底嫌そうな顔でため息をついて答えた。
その顔はこれから放課後、街に遊びに行く学生の顔のそれではなかった。
数多先輩が街を案内するような形で俺達四人は街中を歩いて行った。
どうやら先輩は生まれも育ちもこの街らしく「ここは~」等と説明をしながら案内をしてくれた。
しばらく歩き着いた先は大きなゲームセンターだった。
「すげぇー。ジャスコに入ってるゲームセンター以外のゲームセンター初めて見た」
「な、何なの。このギラギラで下品な外装の建物は?」
「ここは大手ゲームメーカが運営しているゲームセンターで中には様々な遊戯があるんだ。
田舎者の圭吾君は勿論、きっと天使と悪魔である二人も楽しめるよ思うよ」
「な、なぁ!扉が開閉するたびに騒がしい音が聞こえて何だか楽しそうだ。早く、早く入ろうぜ!」
「サタン君は子供みたいな反応をしてくれて本当に可愛いな。キシシ!」
中に入ると初めに出迎えてくれたのは無数もの大きなクレーンゲーム筐体だった。
子供の頃よく親にねだって遊んでいたので俺は懐かしいく感じたが、
どうやらサタンとミカエルには珍し興味を惹かれる物だったようで。
サタンは勿論のこと先ほどまで「めんどくさ・・・」といった様子だったミカエルまでも
「ジー」っとガラス越しに中を見つめている。
「な、なぁ。数多先輩これは何なんだ?」
「これはだね、クレーンゲームと言って。
お金を入れるとそこについているボタンで上中央にあるクレーンを動かせるようになるから
そのクレーンのアームを使って中にある景品を穴に落としてGETするんだ」
「うーん?あんまり想像が出来ない・・・」
「それなら僕が初めにお手本を見せてあげよう、そうだな・・・よしあの台に決めた」
数多先輩は大きな熊のぬいぐるみが景品の台の前で足を止めて、
白衣の内ポケットからコインケースを取り出し200円を台に投入した。
200円を受け付けると台からリズムいいサウンドが聞こえ数多先輩の手元にある液晶が光始めた。
「いいかい?この状態でレバーを動かして下ろす場所を決めるんだ。
その後こっちの降下ボタンを押すとアームが降りてきて景品をギュッと掴み穴の上まで
持ってきてくれるんだ。」
数多先輩は二人に向けて説明をしながら操作をしアームを降ろした。
だが、アームは景品のド真ん中に降りる事はなく少し右に寄って景品に近づき掴む。
さすがに説明をしながら精密な操作は難しいよなと思っていたらアームの爪の部分が
ぬいぐるみのタグに入り込んでおりぬいぐるみ本体は掴んでいないのにぬいぐるみは宙に持ち上がり
そのまま穴に落ちた。
「こういう感じさ」
「すげーな!数多先輩!」
「まぁ、このゲームセンターには出来た頃から通ってるからね。キシシ!」
「流石、数多貴方機械の操作全般が得意ね」
出会ってから数多先輩のことを一度も褒めていなかったミカエルが初めて褒めた(?)
「えー?褒めたって何も無いぞ。
まぁ今回誘ったのは僕だからここは先輩として奢ってあげるから好きな筐体で遊ぶといいよ」
褒められた先輩はオーバーサイズの白衣の袖で顔を隠し照れつつ
俺達後輩三人に1万を「ポン」と手渡した。
何も出ないと言いつつ一番生々しい現ナマが出てきちゃったよ。
「数多先輩流石にこれは・・・」
奢るとは聞いてはいたけど流石にこれは受け取れない。
「いや、いいんだ。昼間に君の事を殴ってしまっただろう?ソレの詫びと思って受け取ってくれ」
確かにあの一撃は重かったけど。
それに数多先輩もどこか申し訳なさを感じているようだし、
ここは素直に受け取って全力で楽しんで数多先輩といい思い出を作ることに専念しよう。




