EP14
「・・・分かった。やってみよう」
数多唯の発言後最初に返事を返したのは俺で、答えは承諾だった。
「貴方正気なの?コイツは天才じゃなければましてや昨日私たちを殺そうとしてきた奴なのよ?」
「そうかもしれないけど、試さないと昨日のミカエルとの約束も果たされないんじゃないか?」
「貴方、やっぱり自分の命の価値を軽く見ているんじゃない?
貴方の命に私たち天使と悪魔の種がかかっているのよ?」
確かに、そうかもしれない。でも・・・、
「このまま現状を維持しても。いつか自分で自分の身を守れず殺され再び聖戦が元に戻るだけだ。
だったら、今目の前に転がってきた可能性に賭けてみたいんだ」
今まで襲われ結果俺は一度目はサタンに、昨日の二回目はミカエルに助けられた。
じゃあ三度目は?もし三度目もどちらかが傍に居て助けて貰えても四度目は?
それも助けられて五度目は?六度目は?今じゃないか、変わるなら。
「頼んだ」
「そう言ってくれると思ったよ。
やっぱり僕の作った可能性測る君は間違ってなかったみたいだね。キヒヒ!」
ーーーーー
「よいしょ、よいしょ」
ひーひーふー、言わせながら数多唯は小さな身体で装置を俺の頭に取り付けていく。
先ほどはあんな見栄を張るようなことを言ったが装置がいざ取り付けられると恐怖が沸いてきた。
賭けてみたいとは言ったが流石に逆張り過ぎないか?オッズ何倍だよ。
「じゃあ行くぞ。キヒヒ」
「待って!待って!待って!せ、せめてカウントダウンが欲しい!」
「えーめんどくさっ・・・。5・4・3」
「早い!早い!早い!100からにして!!!」
「長いわ!僕は湯舟にガキを漬ける母親か!?「100数えるまで出ちゃだめですよー」じゃないよ!」
改めて姿勢を正し辞世の句を詠み終え、目を閉じる。
「それじゃ、今度こそ。3・2・1・0!」
「ッ!」
身体中に電流が駆け巡る、きっと他の二人からは俺は骸骨に見えているのだろう。
「・・・ねぇ、これ大丈夫なの?圭吾死にそうな顔してるけど」
「大丈夫さ。なんせ天才の僕が作ったんだ。
それに死にそうなのは当たり前だ、
圭吾君が昨日電流を浴びた時も死に際ギリギリに調節した電流だったんだからな。
その上で身体能力が飛躍した今の圭吾君には昨日の電圧よりもさらに強い代物を浴びてもらってるんだ。
死の淵に立たされて当然さ。むしろそうじゃないなら実験は失敗さ。キシシ!」
(い、意識が・・・持ちこたえろ、俺!)
体感にして5分ほどの強力な電流攻めが終わり、数多唯が装置を外す。
「どうだい、今の感覚は?感想は?」
「・・・取り合えず。
この装置の特許を取って今すぐにでもSM器具として売り出すべきだと思います。一儲け出来ますよ」
「それは・・・気持ち良かったと、捉えていいのかい?」
「浴びてる最中は苦痛でしたけど」
俺は背中に再び生えた昨日よりも立派になった片翼を撫でながら続きを述べた。
「今は最高に気分がいいですね。数多”先輩”」
「キシシ!そうか、そうか!僕も後輩の役に立て大満足さ。
さて、それじゃあ美香君。僕は死ななくていいよね?」
目の前の俺と言う大成功の成果を指さし胸を張りながら数多先輩は偉そうにミカエルに問いただした。
ミカエルも殺すつもりで居た中での思わぬ展開に目に指を当て、
「う、うーん・・・」と悩まされている。その後もしばらく唸り続け。
「・・・まぁ、いいでしょう」と顔を上げた。
「ですが、もし今後同じように私たちを襲ったらどうなるかは分かってますよね?」
「あぁ、そのことなんだが・・・」
「まだ何か?」
「君たちのやっている輪に私も今後混ぜてくれないかい?」
「・・・何故?そもそも貴方側にメリットがないのでは?」
「確かに。前までの僕ならそうだったはず。だが、昨日と今日で僕は理解した。
人間と言うのは己の持てるポテンシャルを限界まで叩いて可能性を引き延ばす実験体なんだ。
確かに美香君が言う通り僕の器じゃ天才にはなれないのかもしれない。
だから、決めた。今世で出来る限りやり尽くし可能性の限界値に到達してから僕は自殺する。
天才になるのは、もう少し後にすることにしたよ」
煤汚れた白衣や、べた付いた髪。
目の下の隈などの見た目の小汚さには似合わない晴れた笑顔で数多先輩は笑った。
ーーーーー
「ということで、現状君とミカエル君以外で圭吾君の置かれている状況を理解している。
天才、数多唯だ。よろしくな一年の田中サタン君。キシシ!」
「おー・・・」
放課後俺の家にノーアポで押しかけてきたと思ったら、
俺には目をくれずサタンの元に向かうと数多先輩はそんな感じの自己紹介をして
サタンを混乱させていた。
「何でオマエ俺のこと知ってるんだ?」
「実は君も僕の実験品可能性測る君5号のセンサに引っかかっていてね、入学初日から調べていたんだ」
数多先輩は白衣の内ポケットからメモ帳を取り出すと、ペラペラとページを捲り
指を止めるとサタンに関する事前情報を喋り始めた。
サタンはそれを「はぁー」と阿呆面で聞いていた。
三人分のお茶の準備が終わったタイミングで丁度終わったらしく、
息を切らした数多先輩がメモ帳を閉じていた。
「あ、圭吾君ちょうどいい所に・・・喉が渇いてしょうがないんだお茶を飲ませてくれないか?」
小さい身体から伸びている手は身長通り小さな紅葉の様な手をしていてまるで幼子の様だった。
(果たしてこの人は今後役に立ってくれるのだろうか)
不安になりながらも俺はゆっくり急須を傾けお茶を数多先輩の口へと直接注ぐのだった。
「おわっ!?あつ、あつうううう!!!圭吾君止めてくれぇ!!




