EP10
放課後になりミカエルに指定された階段下で食の好みが詳細に書かれたリストを手渡す。
「・・・なるほどね。アレルギーは特になし。
好きなものは味の濃いものが多くを占めてて嫌いな物は緑野菜・・・貴方は五歳のガキかしら?
いい年こいてこんな食好み恥ずかしくないの?」
俺の汚い字で書かれた「ハンバーグ」や「エビフライ」「オムライス」の字を見てミカエルは
隠さずにため息を吐く。
「ごもっともでございます。お母様」
「誰が人間なんかの母親よ。
取り合えず明日から参考にして作ってくるから、
また何かあったら明日の昼休みのタイミングで教えて頂戴。・・・そういえばサタン、アイツは?」
俺から受け取った用紙をご丁寧に持参したクリアファイルに入れ直してから学校指定の鞄に
仕舞いながらふと気づいたようでサタンの不在について尋ねてきた。
「サタンなら
「授業面白くなさ過ぎて眠いから帰って寝るわ」
とか言って先に帰ったぞ」
「あのバカ・・・。
圭吾が今聖戦においてのキーマンであることを忘れてるんじゃないのかしら。送ってあげるわ」
「いや、ありがたいけど流石にそれは・・・」
「何、遠慮してるの?」
「いや、それもそうなんだけど。
ミカと帰ってるのを他の男子生徒に見られたら多分明日から裏切者扱いされるだろうから」
実際、既に何人かミカエルに
捨て身の告白を仕掛けた生徒たちが
裏で先輩たちにボコボコに
こき下ろされているらしく。
入学数日にしてミカエルに
直接的な告白をするのはタブーとなっているのだ。
「はぁ、本当人間はくだらないわね。まぁ貴方がいいと言うのなら構わないわ、それじゃ」
「あぁ、わざわざありがとうな放課後まで」
「・・・そうだ一つ忠告を、この地上思ったよりも不純物が紛れすぎてるわ。
気を付ける事ね。
今の貴方は少々普通の人間とは
かけ離れ過ぎているわ」
「わ、分かった。心に留めておくよ」
「フフフ、お利口さんね」
意味深な言葉と不気味な笑みを残し
ミカエルは去っていた。
しばらく一人立ち尽くし、いい加減に俺も下校をするか足を動かし今いるC棟からAへと移動を進める。
この学校は都会のド真ん中に位置し生徒数が多い為開校当時から拡張が進み今では三つの
A、B、Cの棟に分かれており。
普段生徒がいるのがA棟、
合同授業や講習会等といった
広いスペースを用いる授業を行うのがB棟。
そしてゼウス様と会った時や今居るのが
余計な拡張によってゴーストタウンならぬ
ゴース棟になったC棟だ。
ゴース棟の名の通り生徒や教員すら碌に通らないので廊下には汚い雪が積もりに積もっている。
少し居ただけなのに履いているお気に入りのスニーカーは埃が付き色がくすんでしまっており、
既にデートには適さない
恰好に仕立て上げられている。
(これじゃあ家に帰ってすぐに綺麗にしなくちゃ)
歩くたびに巻き上がる埃のせいか咳が止まらない、
というか目がしばしばするような・・・。
(あれ、身体痺れて・・・)
バタンと埃に顔を擦り合わせる形で
倒れてしまった。
意識が段々と薄くなっていく中、
白衣を身に纏った何者かが俺の前に立ち
「キシシ」と笑った。
そこで俺の意識は途切れた。




