EP1
今日は俺の人生にとって一番の気持ちの良い朝だった。
何故なら今日は高校入学式つまりは俺の高校デビューの日。
しかも進学した学校は都会にあり、俺は地元を離れるのと同時に一人暮らしが始まったのだ。
そんなこんなで俺は今両親の居ない一人だけの城で優雅に伸びをしている。
さて、現在時刻は5時か・・・。
俺としたことが楽しみなばかりに少し早起きしすぎたようだ。
それならコーヒー好きの俺の為に進学祝いに両親が送ってくれたコーヒーマシーンでコーヒーでも入れて優雅に登校時間でも待とうかな。
部屋にコーヒーをドリップする音が鳴り始め次第に辺りがコーヒーの匂いが満ち始める。
(そうそう、これ。心が休まるなぁ)
そんな優雅なひと時を過ごしていると。
パァンッ!パァンッ!と爆音が二回ほど轟いた。
ドリップ中のコーヒー豆がポップコーンの様に
爆発でもしたのかと思ったがそんなわけがない今の音は確かに
俺の鼓膜を殺す勢いの爆音だったぞ。
なら、都会のニワトリが鳴いたのか?それもそんなはずがないさっきの音は銃声に近い音だったんだ。
口から銃声に似た音を出すニワトリとかどこの世紀末を探しても存在しないだろう。
俺は動作中のコーヒーメーカーをほったらかし
音の発生地だろう場所アパートのゴミ捨て場へと足を運んだ。
結果から言うとゴミ捨て場に銃声の様な鳴き声を持つニワトリはいなかった、代わりに着衣している
真っ白なワンピースを真っ赤に染め横たわる頭に輪っか背中に羽を生やした女性と。
それを見下ろす形で立ち銃を抱えている中性的な外見を持った一人の人物が立っていた。
銃を持った方が俺に気が付き振り向く、
横たわっている方は相変わらず動かないどうやら既に死んでしまっているみたいだ。
「あれ?こんな朝早くからそんな所で突っ立て何してんだオマエ?」
それはこっちのセリフだよ。こっちからしたら朝とか時間関係なく何してんの?状態だけど。
「もしかして俺が何者かって思ってる?俺はね悪魔サタンだ。んで、そこに横たわってるのは天使」
「アンタが悪魔でそこで死んでるのが天使ってことは。つまりお互いに敵対視しあってるってこと?
だからってこんな朝っぱらから殺さなくても」
「オマエたち人間は知らないだろうけど、
実は今我々悪魔と天使たちの間には大きな争いが起きているんだ」
「争い?」
「あぁ、皆「聖戦」と呼んでいるんだ。そしてその名に相応しい程規模は大きい。
負けた種は恐らく滅ぶ。
んで、コイツはこの世界での聖戦最初の犠牲者になったんだ。不幸なことにな」
引き金を引いた本人が言うのか・・・。
「あ、そうだ。見られたからにはオマエを殺さないと」
忘れてた買い物を思い出したみたいな軽いノリで思い出さないでそんなこと。
「だからどっちか選べ、悪魔であるオレの手に堕ちるか。ここで死ぬか」
「・・・」
死ぬのに恐怖し悪魔の手に落ちるか。
それとも潔く死を選ぶか、もうどうせ選ぶ時間なんてないんだし。・・・だったら俺は!
「俺はここで死ぬ。惨めったらしく悪魔の手下に堕ちるなんてカッコ悪いマネ出来るかよ」
「ふ~ん・・・ま、いいや。それじゃあ」
悪魔は俺の心臓へとその綺麗で長い指先を伸ばす。
(あぁ、せめて高校で青春を謳歌したかったな・・・)
そんな叶わない夢のことを考えると自然と涙が零れだす。
悪魔の指の先端が俺の胸元に触れ、そしてその瞬間耐えきれないほどの痛みが襲・・・ってこない?
「あ、あれ?」
思わず動揺してしまう。
「何、泣いてんだオマエ。もしかしてあんなカッコつけてたけど本当は怖かったのか?」
「だ、だってそりゃ殺すって」
「まぁ、殺しても良かったけどオマエが命を捨てたから俺が拾っちゃった」
「ひ、拾った?」
「うん、要するにオマエが捨てた命の権利を俺が拾い直したのつまり・・・契約完了ってワケ」
契約完了?それはつまり、
「え、ってことは俺って今」
「そう、オマエは今日から俺の手下」
「は、はぁー!?じゃあ、さっきの俺の覚悟は」
「無駄だったって事だね」
無駄だったてそんな残酷な事をコイツは笑顔で俺にサプライズしてきやがった。
「・・・こ、この悪魔がぁ!」
「そりゃモノホンの悪魔だからな」
待てよ、死ぬのを選んだのにこの結果ってことはつまり
「どっちを選んでも結果は一緒だったんじゃ」
「いや、オマエがあの時にもう一つの方を選んでたら殺してたよ。
少しばかりの正義の心を持ったオマエを手籠めにしたくてつい契約しちゃった」
「人の覚悟を子馬鹿にするようなことをしやがって」と、思ったものの結果的に俺は助けられたらしい
この悪魔の子馬鹿にする行動に。
つまり俺はまだ青春を謳歌することが出来る!・・・って待て。
「今、何時だ?」
俺の焦りが混じった現在時刻の確認に悪魔は自身の腕に目を向ける。
「冥界時間だと今は44時奈落分だな」
「なんで普通の人間である俺の「今何時」って質問に対して冥界時間とかいうので答えるんだよ。
それに時間は44時とか言って地球時間の限界の23時を超えてるし。分に至っては何、「奈落」って?
何で時間を表す単位に文字が位置してるの?あと何だよ冥界時間って。
地球に居るんだから地球単位で表してくれよ。郷に入っては郷に従え」
「スマンスマン、普段冥界から出ないから冥界抜け切れてなくてな」
冥界が抜け切れないって何?
「オマエたち人間で言うと7時43分かな?」
「7時43分!?マズイ遅刻する!!!」
あまりの非現実的な出来事のせいで時間間隔が掴めていなかったが、かなり時間が経っていたようだ。
「今日何か予定でもあんのか?」
「今日は高校の入学式なんだよ。マズイこのままだと遅刻しちゃうぞ」
俺の家から学校までは20分程かかってしまう。
入学式の案内や、自身のクラスの確認の為の時間も考えると明らかに足りない。
「それならいい手があるぞ。その方法なら一瞬で登校出来る」
「ま、マジか。頼む初日から遅刻なんてしたら笑い者にされちゃう」
「しゃーない、任せろ。仕掛けを作ってやるから今すぐに身支度をして戻ってこい」
そういうとサタンはしゃがみ込み地面を指でなぞり始めた。
身支度を整え戻り。
しばらくすると立ち上がりそれと同時になぞった個所が光り始め一つの魔法陣が出来上がった。
「ほらこの円に入れ」
サタンは警戒している俺の手を掴み引き寄せ指を「パチッン」と鳴らした。
その瞬間目の前の光景が気が付くと入学予定の高校、私立新坂高等学校の屋上に居た。
「どうだ、黒魔術の一種で魔法陣中に居るモノを好きな場所に一瞬で送ることが出来るんだ」
「す、すげぇー・・・」
黒魔術?ってのがよく分からないけどやっぱりコイツは”本物”だ。
「ただなぁ、コイツには一つだけ注意点もあってそれが・・・」
悪魔は足元に目をやる、それに釣られて俺の目線も落ちる。
「予定移動地に人物などが居るとその人物は瞬間圧縮により・・・」
足元に”居る”そいつに思わず後ずさる。
すると足元に「ゴン」と生暖かいヌメっとした残骸が俺の足に触れ俺と目を合わす。
「爆殺死散する」
俺の足に居たのは恐らくここの学生または、
今日からここの学生にこれからなる予定だったハズであろう女性生徒の死体。
それも生首の部分だった。何も意識を持たない目で俺と視線を絶賛合わせている。
これが少し離れた向かいの席の女の子だったら思わず恋にも落ちてしまうのだが、
今の俺が抱く気持ちは恋心ではなく吐き気や嫌悪感だった。
目を逸らすために遠くに目をやると今度は女子高生の身体の部分が目に入る。
まるで大型オナホールの様に下半身だけになった彼女のスカートの隙間から
フリフリの下着が目に入る。今度は嫌悪感等ではなく気まずさから目を背けてしまう。
「ん、お前勃起してね?」
「・・・るせぇよ」