遺跡探索
遺跡の入口は、苔に覆われた半壊のアーチだった。
斥候Bが罠を解除し、戦士が前に立ち、レーネは小獣を先に走らせる。そのレーネの隣を主人公も歩いていた。
「気配は薄い。だが何か“動いた跡”がある」
斥候Bが地面を指差した。細い線状の引きずり跡。大きなモノではないが、人間ではない。
「探索範囲は地下1階層。深くはないようです。ですが……空気が、重い」
レーネの言葉には、何か引っかかるものがあった。
慎重に、音を抑えて進む一行。
中は意外にも整っており、苔の生えた石床と古代文字らしき装飾が刻まれた壁が続いていた。
【遺跡探索リザルト】
探索階層:地下1階(全踏破)
戦闘:なし(敵影は罠と幻像のみ)
イベント:石碑との接触成功
魔物使いレーネが“契約の碑”を起動
最奥にあったのは、朽ちかけた大理石の石碑。
レーネが触れると、淡い青光が走り、碑の表面が変化した。
「……これ、私たちの“枠”に関わるものだと思います」
彼女は碑の前で膝をつき、静かに祈るように目を閉じる。
瞬間――主人公の脳内に通知が走った。
【キャラ作成枠拡張イベント達成】
旧世界の記録に触れ、キャラ作成の資質が覚醒した
現在のキャラ作成枠:+10(合計13)
※高コスト職の作成が可能になります(一部制限あり)
※条件付きでスキル特化型のカスタムも可能に
「……増えた。これで、もっと色んなキャラを――」
戦士がゆっくりと剣型の石板を持ち上げて振り向く。
「宝らしい宝はこれぐらいだが……この石、重さの割に硬さが尋常じゃない」
斥候Bは壁に刻まれた文字を手帳に写しながらつぶやく。
「“創造する者よ、その責を知れ”。……警告でしょうか、それとも……」
レーネは石碑を見つめたまま、振り返らない。
「これは……ただの遺跡じゃない。“始まりの施設”のひとつ」
「始まり?」
「この世界に、マスターのような“創造者”が来た痕跡です」
主人公の背に冷たいものが走った。
自分だけではない。過去にも、自分と似た存在が……?
その時、レーネがゆっくりと微笑んだ。
「けれど、マスターはまだ“選ばれて”いない。これは、まだチュートリアルにすぎません」
遺跡を出る頃には、陽が完全に昇っていた。
小獣が主人公の足元にまとわりつき、斥候Bは新たな地図を完成させ、戦士は戦える武具に近い“重石板”を持ち帰る。
可能性は広がる。
魔物使い、戦士、斥候。
さらにその先――魔法使い、鍛冶師、学者、聖職者、異界の者たち……
けれど、彼は知っている。
それらを作れば作るほど、背負うものも増えていく。
「さて……準備は整った。ここからが本番だ」
主人公は静かに、次に召喚すべきキャラクターの構想を描き始める。
戦略を練り、力を育て、死なずに、生き延びるために。
次章:
▶「選択の代償──キャラ作成戦略と未知の接触」へ続く。