魔物使いレーネ
「――斥候Aを、しばらく休ませる」
主人公の言葉に、戦士ともう一人の斥候がわずかに目を見開いた。
そして、対象となった斥候A――【樹上移動】と【遠視】を持つ男は、静かに頷いた。
「了解しました、マスター」
その姿は誇りを捨てず、むしろ信頼に満ちていた。
彼は焚き火の傍に腰を下ろし、用意された毛布を肩にかける。
キャラクター枠の空きが1になる。
主人公の意識の中で、キャラ作成画面が再び起動する。
【魔物使い:女】
コスト:3(現在使用可能)
スキル:【魔物言語】【契約の印】+【観察眼】【小動物使役】
生成完了の瞬間、柔らかい風が吹いたような気がした。
そこに立っていたのは、黒髪を束ねた細身の若い女性。
粗末なローブの下には傷一つない肌。だが、その眼は獣のように鋭かった。
「名は……?」
「お望みなら、マスターがお決めください」
感情の起伏は穏やかだが、芯のある声。彼女は主人公をまっすぐ見て言った。
小さな獣――先ほど罠にかかった個体が、彼女の足元に近づく。
彼女は無言で手を差し伸べ、獣はまるで懐いた子犬のように身を預けた。
「……よし、君には“レーネ”という名をつけよう」
「レーネ、了解しました。マスターの意志、尊重します」
【魔物使い:レーネ】がパーティに加わりました。
現在使役可能:小型獣(特殊個体)「未鑑定」×1
「さて……次の探索に出す。斥候B、戦士、レーネ、3人で周囲の再調査を」
主人公は、焚き火の明かりを抑えつつ指示を出す。
昼間に調べた区域に加え、遺跡のさらに外周部、獣道、木の実や薬草の採取地点――夜間でも探索可能な範囲に絞る。
それぞれ頷き、三人は素早く森へと姿を消した。
主人公は一人、地図と簡易メモを広げて“夜の見張り”についた。
【探索リザルト】
斥候B
【罠作成:Lv3 → Lv4】
【アイテム:毒草×1、食用根×3】
戦士
【防御姿勢:Lv2 → Lv3】
【素材:太い枝(加工可能)、小石(投擲用)】
魔物使いレーネ
【魔物言語:小獣との完全意思疎通に成功】
【情報:獣から「遺跡内部に“なにかいる”」という断片的イメージを取得】
【スキル発現:調教術(条件達成)】
夜が明け始めた頃、三人は再び集まっていた。
斥候Bの肩には草袋、戦士は枝を背負い、レーネは小獣を抱えて戻ってきた。
「遺跡の内部……何かいるらしい」
レーネが静かに報告する。
主人公は焚き火の火を細く保ったまま、うなずいた。
「次にどう動くか」ではなく、「どう準備するか」――それが鍵だ。
斥候Aはまだ休ませている。再び起こすべきか、新たなキャラを作るか。
主人公は静かに、創造の“力”を見つめなおす。
次回:「遺跡への初潜入」へ続く──