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〔ライト〕な短編シリーズ

東京特許許可局というのは存在しないのよ

作者: ウナム立早

しいな ここみ様主催の『瞬発力企画』参加作品です。(お題:東京)

詳細はこちら

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2175055/blogkey/3441656/


『東京特許許可局は、実際には存在しない。』


 暇な時間にインターネットで情報を集めていた私に、こんな文章が飛び込んできた。


「へー、早口言葉で有名なのは架空の建物だったのね」


 この情報は雑学として、私の脳にインプットされた。




 あくる日、彼氏とデートしていた私は、カフェでコーヒーを飲みながら雑談をしていた。


「俺さあ、早口言葉がすごい苦手なんだよね」


 彼が早口言葉を話題にした時、あの時得た知識が脳の引き出しから、ポンと飛び出してきた。


「早口言葉と言えばさ、これ知ってる? とうとっとっときょ……」

「え、なんて?」

「ご、ごめん。とうきょうきょっきょ……」

「東京?」

「きょ、きょきゃきょ……」

「……」

「……ごめん、なんでもない、忘れて」


 何これ、罠なの?


 せっかく仕入れた雑学なのに、伝わらなければ何の意味もないじゃない!


 おまけに彼の前でこんな醜態を晒して……舌足らずな女だと思われたらどうすんのよ!


 東京特許許可局! ああ! 頭の中なら簡単に言えるのに!


 キイーッ! 許せないわ!


 いつかきっと、彼の前で言えるようになってやるから、見てなさいよ!




「夜景がきれいだね」

「ほんとね、こんな素晴らしい夜景、今まで見たこともないわ」


 何度目かのデートの後、私は彼に日本有数の夜景が見える場所スポットへ誘われた。


「あのさ、俺、今まで伝えようと思ったけど、伝えられなかったことがあるんだ」

「伝えられなかったこと?」

「うん、でも、今夜は勇気を出して言うよ」


 すると彼は小さな白い箱を取り出した。彼が箱を開けると、夜景にも負けないくらいきらびやかな、ダイヤモンドの指輪が姿を見せた。


「俺と結婚してほしい」

「え……ええ! いいです! よろしくお願いします!」


 嬉しさと驚きがぜになって、自分でもよくわからない返答をしてしまった。


「ありがとう! これからも……ずっと、一緒にいような」

「うん! ……ところで、実は私からも伝えたいことがあるのよ」

「えっ」

「そう、今まで伝えたくても、どうしても伝えられなかったことが」

「いったい、何なんだい?」


「東京特許許可局というのは存在しないのよ」



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
プロポーズ快諾の直後に彼女さんの方から「伝えたいことがある」と切り出されて、いざ出てきた発言がこれだったら彼氏さんも意外に思うでしょうね。 それだけ彼女さんの中では引っ掛かり続けてきた心残りだったと言…
これは……温度差がすごい(*´艸`*) 頭をそればかりが占めてると、肝心なところでやらかすという、いい見本をありがとうございました(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ
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