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講義①

初回につき5話連続投稿です。

 オーグメントリアリティー、拡張現実。通称AR。


 バーチャルリアリティ、仮想現実。通称VR。


 違うジャンルのようで、どこか似たその技術は、互いに切磋琢磨するように競争しそして成長していった。

 

 そしてその良いとこどりをした新しい技術が産まれた。


 かつてそれはスマートグラスと呼ばれ、世界を席巻した。


 その眼鏡は世界を仮想の世界に誘った。


 しかし人類は足を止めない。


 眼鏡を超えてコンタクトレンズにまで技術を進化させた。


 それが『New Would』“新世界”。


 通称NW。


 現実を歩きながら、異世界さながらの風景を楽しめる。


 ファンタジー、SF、恐竜時代も体験できる。


 『現実革命リアルレボリューション』をコンセプトに売り出された画期的なガジェットだ。


 生きる現実は、仮想が加わった全く新しい世界となった。


 NWは当時でも既に全世界75%のシェアを誇り、まさしく前代未聞の商品として人類史にその名を轟かせた。


 しかし、技術は進めどまだ人類には辿り着けていない世界があった。


 それが“触覚"だ。


 五感のうち視覚と聴覚は言わずもがなだが、それ以外の嗅覚と味覚、そして触覚の再現度は低かった。


 そのクオリティは年々ゆっくりと成長していたが、日進月歩とは行かず、亀の歩みほど遅かった。


 そこにそれは突如として誕生した。


 それが“魔石生物~Magic Stone Creature~”だ。


 このアプリは全世界に一斉配信され、一月も経たないうちに一億ダウンロードを超える。


 それは“感覚"のある全く新しいコンテンツだったからだ。


 ゲーム内容いたって普通。


 とてもメジャーな内容であり需要の高い、生物を育てるゲームだった。


 魔石生物と呼ばれる生物と仲良くし、野生の敵性魔石怪物、通称“魔物”と共に戦い、魔石を食べたり経験などを積めば進化する。


 また、条件を満たせば敵でも手懐けるテイムすることが出来る。


 そんな生物が、()()()のである。



 それだけではない。


 例えば植物系の魔石生物が作った果実は食べることが出来た。


 臭いも、味も、感覚も、五感全てを完全再現してみせた。


 魔法のような力を使い、壁を走り、空を舞う。


 そんな浪漫溢れる可愛い生物や格好いい生物。


 そんなモフモフの生物に触れることができ、なおかつ生きているかのように温かい。


 もちろん無機物種は別だが。


 繊細な毛の感触までリアルで、手だけでなく全身でその感覚を味わうことができる。


 しっかりと個体差があり性格も違う。


 本当に本物の生物にしか思えない。


 あらゆるSNSで魔石生物との写真がアップロードされ拡散されていき、わずか3ヶ月でNW保有者の4割にダウンロードされたお化けアプリ、それが魔石生物というゲームだった。


 また、魔石生物とあるように魔物は魔石という美しい石が核となっている。


 その魔石に魔力を込めると召喚すると生物になるというゲームの仕様だ。


 その魔石が美しいことから、ペンダントにされたり指輪にされたりと、ファションの分野でも飛躍を遂げる。


 破竹の勢いでダウンロードされ、人気を得た魔石生物であるが、しかしその技術やそれを開発した人間が表に出てくることはなく、そしてその企業も不明のままであった。


 ましてや無料であり、課金要素も全くなかった。


 各国や企業がその技術を買収または、開発者を誘拐しようとしたため表に出れないのでは?という陰謀論は、どの国にも特許を取った形跡もなく、とある国の大統領が「どうか名乗り出て欲しい」とまで言わしめたため消失。


 その間にも多くの人間が開発したのは自分だと名乗りをあげたが、NWに“感覚"を付与させた技術を証明することが出来ず、メディアやSNSで叩かれ国によっては詐欺罪として逮捕された。


 半年後にはNWの普及者の8割がダウンロードされ、社会現象は国家単位で起きており、世界的社会現象にまで発展した。


 


 ――その絶頂期に、事件は起きる。


 


 まず先に説明しておくと、先ほども説明した通り魔石生物には各々性格があり、そして種族によりそれは異なる。


 人懐こい種族もいれば孤高な種族もおり、さらに個体差の性格の違いも大きい。


 超高高度のAIが魔石生物一体一体に入っているようなもので、もはや我らと同じ生物と言っても過言ではない。


 彼らは賢く、人の機微に聡い。


 愛には愛で返してくれるが、もちろん敵意には敵意で返す。


 話を戻そう。


 事件は、とある国で起きた。


 プライドの高い『アーマー種』の犬型の魔石生物を他人から無理矢理奪い、そしてその『アーマー種』が犯人に重症を負わせた事件だ。


 これに関しては犯人が悪い。


 しかし、我々はその時初めて気付いた。


 触れるということは、向こうからも触れる。


 つまり人間が攻撃を受ければ大怪我を負い死ぬ可能性も十分にあり得るということを。


 これにより世界はこのアプリを作った人間を徹底的に探し始める。


 そしてすぐに、とある事件が世界を震撼させた。


 危険なアプリと知ったとある老人が、孫に止めるように無理矢理迫り、主人のピンチだと思った魔石生物がその老人を追い出したことに起因する。


 怪我も特になく終わったこの事件はしかし、世界を震撼させる。


 その老人は魔石生物のアプリをダウンロードしたこともなければ、NWすら保有していなかった。


 老人は見えもせず、本来は触れもしない存在に一方的に“接触“されたという事実。


 このニュースは瞬く間に世界に拡散され大きな混乱を生んだ。


 しかしそれもすぐに終わる。


 とある日。


 なんでもないただの平日にその災厄は起きた。


 街にポップする魔石生物たちが、突然無差別に人間や他の生物や建物に攻撃を始めた。


 世界各国で事故が起き大混乱を招いた。


 死傷者はその日だけで五千万人に及び、その後さらに増え続けていく。


 後に『ポストアポカリプス』と言われるこの10日間。



  “死の10日間”。



 人類史最大のこの災厄は、たった10日で世界人口の37%の死者が出た。



 怪我人をいれたら60%を超える。人類史史上最悪の大虐殺だ。


 その中でとても強力な怪・物・達が自分たちの住みやすい環境を整えていった。


 拠点を作り始めた。


 その生物の環境にその地域は染まる。


 火の海に。


 荒れた大地に。


 毒の沼に。


 日本でも200ヶ所以上の場所が、魔物達に占領された。


 それが現代の“シンボルエリア”という場所だ。


 同調するように他の魔物もその中に棲みついていき、それ以外のエリアは安全となった。


 もし彼らがシンボルエリアに引き篭もらなければ人類の95%が死に絶えたと言われている。


 何か踏み外せば、今の我々はなかったのかもしれない。


 世界各国は過去類を見ない速度で協定を結んだ。


 これは互いの協力と、そしてABC兵器を各国が勝手に使用しないためだ。


 これに参加せず強行を企んでいた彼の国は、たった一夜で滅んだ。


 我々の想像もしない形で。


 しかしこんな大事件のアプリを作った犯人は未だ見つかっていない。


 とある国では怪しい人間をそれっぽく仕立て上げ、死刑に処することで民意をコントロールする国すらある。


 我々は未だ、敵について何もわかっていない。


 これが純然たる事実だ。


 ()()()()()()に開発されていたの技術を、人類の叡智を寄せ集めても未だ開発に至れていない。


 それだけ“触覚”という技術が、魔石生物というアプリがどれだけ先の未来の技術なのかを我々人類に知らしめている。


 さて。


 皮肉なことにNWは目標としていた“実質上”全人類100%の保有率を達成する。


 所持していなければ見えもしないし、対抗できもしないことから、国から支給品として与えられるからだ。


 また、“魔物”に対抗するには魔石生物を所持していなければ難しい。


 さらに言えば現在、食料やインフラ設備に魔石生物は絡んでいる。


 魔石生物はもはや切って切り離せぬ関係となった。


 こうして、人類には新しい家族が出来た。


 賢く、優しい家族が。


 同時に人類は共通認識で“敵”と断定出来る生物に出会った。


 空路や海路は、魔物が出現する魔境となり、海に囲まれた日本は外国との交流は()()孤立無縁になった。


 


 『ポストアポカリプス』後、1ヶ月も経たないスピード感で、各国の代表者が生放送で全てのしがらみ、遺恨を飲み込み、欲を忘れ、手を取り合うことを約束したその日。


 


 これが皆さんご存知、『新世界の始まりの日』だ。


 


 人類は魔石生物と共生を決意し、未だそれは解決を見ていない。


 


 それが今の世界の現実だ。


 


 これが今の世界の在り方だ。

『新世界始まりの日』


カタストロフィ。

ポストアポカリプス。

終わりの始まり。

神の去った日。

死の10日間。

様々な言い方をされるが、つまりは多くの人々が亡くなり、人類にとって多くの重要な遺産や文化財、そして人間とそれ以外の多くの生物がいなくなった日だ。

人と共に生きてきた、犬、猫や多くのペットは惨殺された。

家畜として飼っていた牛や豚や鶏は根絶やしにされた。

さらに他多くの生物が絶滅もしくはそれに準じた状態だと考えられるが、私たちにそれを確かめる余裕はない。

私たちは明日を生き抜くのに必死だからだ。

どうか地球の同胞よ、我ら人類を恨んでくれるな。見捨てる我らを憎んでくれるな。

私たちは今、滅びと戦っているのだ。


参考文献

終末の戦い

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― 新着の感想 ―
VRから進化したNWと、触覚を持つ魔石生物アプリがもたらした破滅と共生ですか……色々凄まじい
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