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異世界転生、裏から見れば  作者: 黒魔
2章 レベル99異世界無双
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最初からレベル99・雄烈栄の視点

挿絵(By みてみん)

 長い間続いた病気の苦しみがいつの間にか消えていた。それどころか、ここは病院ですらない。辺り一面何も無い真っ白な空間。上のほうから光がさして、天使が舞い降りてきた。ああ、俺は死んだのか。


「私はあなたの願望を叶える天使カナエルですぅ。雄烈栄(おれつえい)くんですねぇ」


 天使が俺に話しかけてきた。


「はい、そうです」


「ここは天国ですぅ。あなたの人生は短かったですがぁ、とても模範的な生きざまでしたぁ」


 そう、病弱だった俺はずっと他人に逆らうことが出来ず、自分を押し殺して生きてきた。


「善良な(たましい)にはご褒美(ほうび)が与えられますぅ。あなたの願望を叶えるようなチート能力付きで異世界転生をさせてあげますぅ。あなたの願望は何ですかぁ?」


 やった! 今まで我慢(がまん)してきたかいがあった。どんな願いでもいいのかな。でも善良でないと叶えてくれないということは、何か立派な願いを答えたほうが良さそうだ。


「世界に平和をもたらす勇者になりたいです。叶うならば、すべての人々が安心して暮らせる世界を手にするための戦いに、この身を(ささ)げたいです」


「素晴らしい高尚(こうしょう)な願望ですねぇ」


 カナエルは不気味にニヤリと笑った。


「でもぉ、あなたの願望はそれではありませんねぇ。あなたはずっと優しくて人当たりのいい善良な人として生きてきましたけどぉ、本当は邪悪な願望を心の奥に秘めていましたねぇ」


 邪悪な願望。人の上に立ちたい、見下(みくだ)したい、という気持ちのことだろうか。確かにそういう願望はずっとあった。


「いいんですよぉ、自分の気持ちに素直になってもぉ。本当の願望をさらけ出しちゃってくださぁい」


 勇者になりたいとは言ったけど、本当は平和なんてどうでもいいし、他人の暮らしなんて俺には関係無え。俺の本当の願望……俺は最強になりてえ! 誰よりも強くなって、誰にも従わず、世界中から賞賛を浴びてえんだ! それが俺の本当の願いなんだよ!


 カナエルはベルトを外した。


「さあ、願望のままにぃ、この私を手籠(てご)めにするのですぅ! そして永遠の愛を誓うのですぅ!」


「んなわけあるか――――!!」


 俺は思わずカナエルの頭をつかんで床に叩きつけた。しまった、ツッコミが激しすぎた。でも今までの俺にはこんな力は無かったから、なんか爽快だぜ。


「……うう……そういうプレイは私にはちょっと……」


「やかましい、なんでしれっとてめーの願望叶えようとしてんだよ。俺の本当の願いは、最強になってちやほやされる事だぜ。俺をレベル上限の、レベル99の勇者として異世界に送ってくれ!」


「レベル99ですかぁ。それなら問題無さそうですねぇ」


 俺はもう我慢しねえ。邪悪だと言われようが、新しい人生を俺の好き勝手に生きてやるぜ!




 しばらくして、俺は異世界に転送された。俺の姿は背が高くがっちりした体つきに変化しているようだ。剣を背負っている。教わった通りにウィンドウを開くとステータスが表示され、俺は望み通りレベル99になっているのがわかった。ジョブは「勇者」。攻撃力とかの数字はすげえ値になっていて、保有スキルの欄にはたくさんの魔法が並んでやがる。やったぜ、これで病弱な俺とはおさばらだ! これからは思う存分暴れまわって、周囲に強さを見せつけてやるぜ!


 ここは森の中。ちょっと歩くとヒョウのような動物と遭遇した。剣を構える俺。ヒョウはじりじりと間合いを詰め、そして飛びかかってきやがった。俺が剣を軽く振ると、ヒョウはあっさりと真っ二つに切り裂かれ、やがて煙になって消えた。……気持ちいー! 俺は圧倒的に(つえ)え!


 少しすると3匹のヒョウに遭遇した。今度はステータスに書いてあった魔法を使ってみよう。俺は手を突き出して唱えた。


「火炎放射」


 すると手からヒョウたちに向かって炎が噴き出し、(またた)く間にヒョウたちを飲み込んだ。すげえ、敵を倒すのなんて思いのままじゃねーか!


 モンスターを倒しながら歩いていると、木のモンスターと対峙(たいじ)している男がいた。あっ、モンスターの(つる)に締め上げられて捕まっている女がいる! 俺は駆け寄った。


「大丈夫か?」


「すまない、仲間がトレントに人質にとられた! 俺は魔法使いギーテル。炎の魔法が得意なんだが、それだとあいつを巻き込んでしまう」


 蔓は女をぐるぐる巻きにして釣り上げてやがる。でもあまり苦しくはなさそうだ。


「はじょろーん。武闘家のココロだよー」


 は? 何を言いたいんだ?


「お兄さーん、ココロたちと一緒に冒険しよー」


「そんな捕まってる状況なのにずいぶん余裕じゃねーか」


「あっそうだった、順番間違えちゃった。てへ。きゃー、助けて―」


 俺が剣を構えると、ギーテルが制止した。


「なあ、巨乳美女が触手に(から)まれてるこの状況、このままだとどうなると思う?」


 ココロはかなりの巨乳。なんか漫画でよく見る光景だな。だとすると……


「恥ずかしい目に遭いそうだぜ。服が破けるとか」


「だよな。じゃあもう少し様子を見てみないか?」


 そう言われると慎重(しんちょう)にならざるを得ない。


「ちなみにねー、ココロのおっきなおっぱいを見たり触ったりした男の人は虫になっちゃうんだよー」


 その瞬間、俺は空高くジャンプしてトレントに上から斬りかかった! 幹の上部が割け、蔓がばらばらになってココロが解放された。俺は着地してすぐに根元に一撃! トレントは切り倒されて消えていった。俺はココロに駆け寄った。


「大丈夫か?」


「仲間になってくれてありがとー!」


「また順番間違えてるぜ。俺はまだ仲間になってねえ」


「そうだった。次はえっとー……」


 何なんだこいつは、モンスターに捕まっているところを別の冒険者に助けられたときのセリフをあらかじめ考えてあるのかよ。


「ごめんねー、ココロは好きな人がいるんだー」


「告白もしてねーよ! なんで俺がお前に告白して振られる前提で準備してんだよ!」


 俺とココロの間にギーテルが入ってきて言った。


「助かった。なんかココロが先走ってすまないが、俺たちは新たな冒険者パーティーメンバーを探してるんだ。どうだ、俺たちの仲間にならないか?」


 何もわからねえ今の状況でその提案は助かるぜ。ココロとうまくやっていける自信は()えがな。


「そうだな、俺はこの辺りに来たのは初めてで、色々教えてくれると助かる。俺のことはオレツェーと呼んでくれ」


「よーし、オレツェーは今から俺たちのパーティーメンバーだ! レッツ・パーティー!」


 ギーテルのカバンからバーベキューコンロが出てきた。一緒にバーベキューパーティーをする仲間を探してたのかよ!


「すまん、そういうパーティーなら俺は参加しねえ」


 俺が背を向けると、ギーテルは慌ててコンロをしまいながら俺を引き留めた。


「冗談だ。一緒に冒険する仲間って意味のパーティーだって」


「わかった。じゃあ街に案内してくれねえか?」


「よし、行こう」


「えー、お肉食べないの、お肉ー」


 こんなふざけた奴らを信用していいものかわからねえが、とりあえず一緒に街に行った。

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