表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生、裏から見れば  作者: 黒魔
1章 穴あけスキルでダンジョン攻略
7/39

2階層目の武闘家ココロ・大塚怜の視点

 翌朝、放くんを呼びに行こうとして、ふと思った。昨夜は私のことで気が動転しちゃったから、放くんのことをほったらかしたままになっちゃったよね。怒ってるかな。今日も一緒に冒険してくれるか聞いてみよう。


 放くんの部屋に入って呼びかけた。


「昨日は取り乱してごめん。私、今日もホールと一緒に冒険したい」


「僕もだよ」


 放くんは笑顔で答えてくれた。


 それからダンジョンに行った。昨日はずいぶんレベルアップしたから、もうボスも倒せるだろう。1階層目のボスとして巨大なウサギを配置してある。どんな戦闘になるのか楽しみだ。


「私たち強くなったし、今日は下の階層に行けるかな。多分フロアボスも倒せると思うんだ」


「フロアボス? 倒さなくてもいいんじゃない?」


 放くんは床に穴をあけて飛び降りた。穴の向こうは心ちゃんが造った2階層目。


「大丈夫だよ。レイも来なよ」


 えー、1階層目はこれで終わり!? せっかく用意したボスもスルー?


「え……。これっていいのかな」


 仕方なく2階層目に飛び降りた。少し進むと、心ちゃんがいつも一緒に遊んでる丸い羊たちが飛び跳ねてきた。この子たちって敵というよりペットだよね。人懐(ひとなつ)っこくてすり寄ってくるだけで、攻撃なんてしてこないよね。


 私はこっそりウィンドウを開いてダンジョンの設定を確認した。やっぱりこの子たちの行動に攻撃は設定されていなくて、このフロアはこんなのしか出てこない。敵が出てこないとまずい……いや、敵だと勘違いしてもらえれば大丈夫。


「気を付けて。この子たちは単独だと弱いけど、群れると一斉にのしかかってきて動けなくしてくるそうよ」


「広い場所だと個別撃破しにくいな」


 放くんは壁に穴をあけた。穴の向こうは真っ暗。まずい、この向こうはダンジョンのマップ外で何も設定されてない空間だ! そんな所に入られたら何が起きるかわからない。私は放くんの腕を引っ張った。


「危ないっ! その向こうに行っちゃだめよ。見てて」


 羊たちをやっつけてから、光の魔法を穴の中に放って見せた。


「これは虚空の深淵って言って、落ちたら絶対に戻って来られないと言われてるの。ダンジョンの外には虚空の深淵が広がっているらしいよ」


「確かに危なかった。ありがとう、気を付ける」


 とっさに思いついた名前でごまかしたけど、何、この中二病っぽい名前。あとから恥ずかしさがこみ上げてくる。


 ダンジョンを進みながら分かれ道の先を見ると、遠くが真っ暗になっているのに気付いた。ダンジョンが途中で途切れてるよ! この辺りって全然未完成じゃん! 2階層目は心ちゃんの担当といってもあくまで手伝いなんだから、杉輝の責任なのに何やってんのまったく! とりあえず心ちゃんに会って応急処置をしてもらわないと。なんか動物たちが近づいて来てるから、それを口実に別行動しよう。


「今のうちに個別撃破するよ。私はこっちの道のをやっつけるから、ホールはそっちの道のをお願い」


「わかった」


 私は放くんから見えない位置に隠れてから、転移魔法の扉を開いて心ちゃんの所に行った。心ちゃんがいたのはこのダンジョン内のスタッフルーム。ダンジョンを造る作業中に動作確認したり物を一時的に置いたりするスペースで、どこにも出入口が無いので転移魔法じゃないと入れない。心ちゃんはたくさんの動物たちと(たわむ)れていた。


「心ちゃん、私たちもう2階層目の攻略を始めてるよ。2階層目はまだ出来てない所があるじゃん」


「えー、もうなのー? わかった、造りかけの所はふさいでおくね」


 心ちゃんは壁に寄り掛かって座ってウィンドウを開き、ダンジョンの修正作業を始めた。私も一息つくことにしよう。この部屋は丸い動物たちで埋め尽くされていて、かわいさが半端ないから見ているだけで癒される。


 突然、壁に穴があいた! 放くんだ。穴あけスキルがあればスタッフルームにも入って来れるんだ、油断した!


「任せろ!」


 放くんは床に大穴を開け、動物たちは一斉に穴に飲み込まれていった。そんな、心ちゃんがかわいがっている動物たちを、心ちゃんの目の前で!


「虚空の深淵だ。もう大丈夫」


 その名前を言わないで、恥ずかしい。って、それより心ちゃんをフォローしないと! 心ちゃんは泣き出した。まずい、放くんがいる場所ではうかつなことを言えない。どこかに行ってもらわないと。


「私はこの人が落ち着くまで護ってるから、ホールは向こうの敵をやっつけてきて」


「ああ、任せた」


 放くんは床の穴をふさいでから部屋を出て行った。私は心ちゃんを抱きしめた。


「心ちゃんごめんね、びっくりしたよね。でもあの子たちは大丈夫だよ。もう1回配置したら、穴に落ちたことなんて気にしないで寄り添ってくれるよ」


「ほんと? ほんとに大丈夫?」


「うん」


「うっ……うわあああ……うわああああん」


 心ちゃんはしばらく泣いてから落ち着いた。これから一緒に冒険してくれるよう頼んだら了承してくれた。


「それでね、ここではあの動物たちと戦わなくちゃならないのよ」


「えー、かわいそうだよー」


「大丈夫、あの子たちはやっつけられたら消えるけど、死んだりしないですぐに別の場所に現れるから平気なんだよ。だから心ちゃんも戦うふりはしてほしいな」


「うん、わかった」


 放くんが戻って来て部屋に入るなり固まった。心ちゃんのおっぱいがあまりに大きいので見とれているのだろう。


「はじょろーん。武闘家のココロだよー。助けてくれてありがとー」


 初めましてよろしく、を略しすぎ。


「僕はホール。無事でよかった」


「あんな穴をあける魔法なんて初めて見たんだよー。すごかったからねー、もっと見せてほしいなー。ココロも一緒に行っていいかなー?」


「もちろん、いいよ」


「私もいいけど」


 放くんはすごく嬉しそうな顔をしている。顔が赤いぞ。あのおっぱいが気になって仕方ないのか。


「ねえホール、私とパーティー組んだ時と比べてずいぶん乗り気じゃない?」


 私のおっぱいだって重いのに、あんなに大きいと重すぎるんじゃないかと思うけど、心ちゃんは気に入っていてキャラクターデザインを変えようとしない。


「そんなにおっぱいが大きいほうがいいの? 私も結構大きいほうだと思うんだけどな」


 放くんは顔をさらに赤くしてうつむいた。


「ココロのおっきなおっぱいを見たり触ったりした男の人は虫になっちゃうんだよー。気を付けてねー」


 心ちゃんがそう言ったとたんに放くんは落胆(らくたん)し、悔しがり、開き直った顔をした。全部顔に出てる。わかりやすくて面白い。


 3人で2階層目のボス部屋に向かった。途中で丸い動物たちが寄ってくると、心ちゃんは捕まえてぎゅっと抱きしめた。最終的に消えるので、こういう技に見えなくもないから良しとしよう。


 ボス部屋に入ると、そこにいたのは巨大なウサギ。これって私が用意した1階層目のボスじゃん! ボスの使いまわしは手抜きすぎるよ! まあ1階層目のボスとは戦わなかったから結果として問題ないけど!


「ココロに任せて!」


 心ちゃんがウサギの顔面に無数のパンチやキックを浴びせて倒した。私が造ったモンスターならそんなに容赦(ようしゃ)なく攻撃できるんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ