表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生、裏から見れば  作者: 黒魔
1章 穴あけスキルでダンジョン攻略
6/45

ホールとレイのダンジョン脱出・大塚怜の視点

 それからは敬語を使うのはやめ、ダンジョンの出口に向かって進んだ。なるべく放くんにモンスターを倒させてあげながら、ピンチにならないように援護した。


「あれ? さっきも左折したから逆方向に進んでるよ」


「ここの壁の向こうに行くにはぐるっと大回りしなきゃいけないのよ」


 まさか私が造った迷路を自分で進むことになるとは思わなかった。


「だったら真っすぐ進もうよ」


 放くんが壁に手をつくと、大きな穴があいて壁の向こうまで通れるようになった! 穴あけスキルって敵に使うだけじゃないの!? そんな事されたら頑張って迷路を造った意味無いじゃん!


「ええっ! そんなのあり!?」


 放くんは嬉しそうに穴をくぐった。


「こうやって最短距離で進もうよ。出口はどっちの方角?」


 これだと迷路も仕掛けも全部スルーされちゃう。壁に穴をあけるのをやめさせるべき? いや、これはこれで放くんが楽しんでるから、目的には(かな)ってる気がする。私は出口の方角を指さした。


「あっちよ」


 しばらく進むとアイテム部屋の前にたどりついた。もっと下の層で手に入る鍵を使うと、壁の中からボスキャラが現れて戦闘になる。倒すと魔力・防御力・素早さのネックレスが手に入る。


 放くんが扉に穴をあけようとして弾かれた。もちろん鍵が無いのにネックレスが手に入るのはまずいから、扉は破壊不可能に設定してある。


「あ、この扉には結界が張られているようね。魔法は効かないみたい」


「じゃあ扉じゃなければ効くのかな?」


 放くんは扉の横の壁に手をついた。しまった、扉は破壊できないようにしてあるけど、扉の横の壁は何も対策してないから部屋に入られちゃう。この部屋の中のボスはレベル89。今の放くんだと近づく前に瞬殺されちゃう。私が倒してあげないと。


「ホール、気を付けて。どこにどんなモンスターが潜んでるかわからないからね」


 壁に大きな穴があいた。


「キシャアアア!」


 モンスターの悲鳴だ。壁の中から現れる設定だったから、壁に穴をあけたときに偶然倒しちゃったんだ。


「いくらどこにいるかわからないって言っても、壁の中は予想外すぎるよ!」


 こんな方法でこの部屋を攻略されるなんてのが予想外! でももういいや、放くんが楽しんでるなら。放くんは部屋の中からネックレスを拾ってきた。


「見てよ、すごくわかりやすい名前のアイテムが手に入ったよ」


 悪かったね、そんな単純な名前で。「星々の涙」とかかっこいい名前にしたほうがよかったかな? でもそれだと使い道に気付かないだろうし。でもまあ、魔力のネックレスを装備しておけば私ももう少し本気を出しても不自然じゃないよね。


「わっ、これ欲しい」


 そう言ってネックレスを受け取って首にかけた。ネックレスなんて久しぶりだけど、似合ってるかな? いやいや、そんなことより効能のほうが気になってるように見せかけないと。


「すごい、魔力がすごく上がってる! これならもっと下の階層のモンスターも楽々倒せそう!」


 でも放くんの目に私のネックレスがどう映るか気になる。放くんを見ると、なんか浮かれて走り回っていた。


「レイ、僕を思い切り蹴ってみて」


 え、なんで!? 女の魅力を感じたら蹴られたくなるものなの?


「ごめん、私はそういう趣味無いから」


「僕もそういう趣味無いよ! 防御力を試そうってことだよ!」


 なんだ、自分がかけたネックレスのことしか気にしてないか。私のことなんて見てないよね。私は言われた通り放くんのお(なか)を蹴った。


「うん、平気だ」


 やせ我慢して苦笑いを浮かべている。かわいいやつめ。


 その後は結構楽にモンスターを蹴散らしながらダンジョンを出て、ボーケンの街に着いた。この街は冒険の雰囲気を出すために中世風の街並みにしてあるけど、いるのは開拓者としてこの世界に転生してきた人たちばかりだ。ダンジョンから集めたドロップアイテムを売買することで、この世界をより住みやすく発展させようとしている。日本からの転生者ばかりなので看板とかは日本語だ。私たちはドロップアイテムを売却した後、食事をしてから宿に行った。


「ここがホールの部屋。私は隣の部屋に泊まるからね」


「大塚怜さん」


 えっ!? 私の本名がばれてる!?


「あのさ……怜って、実は本当の姿を隠してるんじゃない?」


 私が演技してることがバレバレだった? どうしよ、恥ずかしい! ごまかしたい!


「……やだ、何のこと?」


 恥ずかしくて放くんの顔を見ることができないのに、放くんは顔を近づけてくる。


「ごまかさなくていいんだよ」


 すごくドキドキしてる。多分私の顔は真っ赤だろう。私は後ろを向いた。


「私、隠し事なんてしないよ。ありのままの自分を見せてるよ」


「僕は、怜と……例え怜が普通の冒険者じゃなくても……普通の人間じゃなかったとしても、また明日一緒に冒険したいと思った」


 私はこの世界の運営の一員。私のステータスも自由にいじれるから無敵だし魔法も使い放題。だから一緒に冒険を楽しめないし、サービスを提供する側だから楽しんじゃいけないと思ってた。


 でも放くんは最初の冒険者。放くんにとって心を開ける仲間は私だけなんだよね。そうだよね、自分だけ楽しんでても面白くないよね。たとえ運営者だとわかっていても、一緒に楽しむ人がいたほうがいいよね。


「どうすれば信じてもらえる? パンツを見せればいいの?」


 放くんは自分のズボンに手をかけた。どうしてそういう発想になるかな! 私は放くんの手をつかんで止めた。


「ちょっ、パンツなんて見せなくていいから! ……気づいてたんだ、私の正体」


 放くんは真顔で言った。


「うん。本当は角としっぽがあるんでしょ。魔族なんでしょ」


 魔族? 何で? そういえばこの世界の設定を話し合ってたときに、人間と魔族が争っている世界ってことになったな。魔族には角としっぽがあるけど変身魔法で隠してるって設定になってた。それをカナちゃんが放くんに教えたってのは十分考えられる。


 ってことは何、私のこと運営者じゃなくて魔族だって思ってたわけ? でも私、「気づいてたんだ、私の正体」って言っちゃったよ! ここで運営者ってばらしたら台無しだから、もう私は魔族ってことで押し通すしかないよ!


「わかった、本当の姿を見せてあげる。恥ずかしいからちょっと待ってて」


 私は自分の部屋に行ってウィンドウを開いた。私のキャラクター設定画面を開き、魔族っぽい角としっぽを選択して私の設定に加えた。


 あれ、しっぽがスカートから飛び出てる。どうなってるんだろう。画面上で私のキャラを回転させて後ろから見ると、スカートに穴があいていてしっぽが貫通していた。何で? 設定からしっぽを外してみても穴はあいたまま。手でお尻を触ってみると確かにスカートに穴があいている。かばんから鏡を取り出して確認すると、スカートの穴がはっきりわかった。


「え――――っ!!」


 しっぽを付ける前から穴があいていた!? 私は放くんの部屋に駆け込んだ。


「なんで私のスカートに穴があいてんの!?」


 放くんは驚きながらうろたえた。


「さあ……。出会ったときからあいてたよ」


「ということは今日ずっとお尻が見えてた!? 街の中でも!?」


「もし助け起こしたときにうっかり穴をあけてしまったとしたら、ごめん」


 その可能性はある。そしたらお尻を見せたまま歩いたり戦ったりお店に入ったりしてたって事じゃない! 恥ずかしすぎる!


 私は慌てて自分の部屋に戻った。ウィンドウを開いて私のスカートの編集画面を開き、穴を埋めるように形を修正すると、私のはいているスカートの穴もふさがった。


 それから転移魔法で杉輝の家を訪ねた。


「おっ、悪魔っ()姿かよ。それもかわいくてありだな。どうした」


「なんか私が魔族だと勘違いされて、成り行きでこうなっちゃった」


 これまでの事情を説明した。


「そういうわけで私は魔族って設定だから、杉輝は『魔族だけど私の敵』って設定で登場してくれないかな」


「なるほど、わかった。俺は変態キングとしてお前の服を脱がしにかかればいいんだな」


「どうして私の話にかすりもしない結論になるかな」


「じゃあ心がお前と脱がし合えばいいのか」


「あーもう、ふざけないで! あなたは人間の街を征服しようとしている過激派魔族のギーテル。私はそれに反発して人間と仲良くしようとしている魔族の新人冒険者レイ。それでいいでしょ」


 私たちがダンジョン内で出会ったときのセリフを打ち合わせて、その後宿に戻って眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ