人質事件発生・寝貝加奈絵の視点
私が寝貝加奈絵と名乗っていたのは昔のことでしてぇ、今は願望を叶える天使カナエルですぅ。魂になって天国にいらした皆様の願いをお聞きしてぇ、その願いを叶えられそうなサービスが提供されている場所に連行……じゃなかったぁ、お連れするのが私のお役目ですぅ。
仕事柄、神様にお会いすることはよくありますぅ。今日は私は休日ですけどぉ、直属の上司の呂里馬場比女命様が私の部屋でお酒を飲んでますぅ。
「異世界転生の世界も順調に発展していってますねぇ。神様としてはぁ、これからどんな世界にしていくおつもりですかぁ?」
「そう言うても、何の計画も無しに始めた世界じゃからのう。なるようにしかならぬわい。面白いことが起きることを祈るばかりじゃ」
「神様が祈ってどうするんですかぁ」
お酒を飲みながらこんな事ばかり言ってぇ、ほんとに頼りない神様ですぅ。
「うーむ、自分で何かするべきかのう。面白い動画を撮るために」
「世界のためじゃなくて動画のためなんですかぁ」
「最近は世界の発展が順調なおかげで、動画が予定調和でつまらぬのじゃ。ハプニングでも起こしてやるかのう。花見のために花が満開になる魔法を使うたら、鼻が満開になるように仕組んでおくのじゃ」
「しょーもないハプニングですねぇ。去年の肝試しのほうがよっぽど面白いハプニングでしたよぉ。地縛霊の配置を心ちゃんに任せたらぁ、地縛霊が次々と自爆していったんですよぉ」
「なんと、わらわの知らぬところでそんな面白い事が起きておったとは。動画配信しておきたかったのじゃ」
「面白いイタズラを仕掛けたいのならぁ、杉輝くんに任せてみてはどうですかぁ?」
「あやつに任せたら女の裸が出てくるに決まっておるのじゃ。そういう男が喜ぶ動画はわらわのチャンネルで配信したくないのじゃ」
だったら男の裸ならいいんでしょうかねぇ。なんかやってみたい気がしてきましたぁ。
「女の視聴者が喜びそうなイタズラでしたらぁ、私がやりましょうかぁ?」
「カナエルがこっちに関わりたいとは珍しいのう。よかろう、たまにはやってみるのじゃ」
次の休日、私は冒険者たちの動向を探ってみましたぁ。そしたらぁ、魔法学院のアクヤさんたちがダンジョンに潜入しているのを見つけましたぁ。心ちゃんは最近どこにいるんでしょうと思っていましたらぁ、ショタン王子として冒険に参加していたんですねぇ。
アクヤさんとプレーヤさんといったらぁ、私と同じビッチの匂いを感じる人たちですぅ。そこにいるのはどちらもA組のアクヤさんとプレーヤさんですねぇ。イケメンのキザーオ王子にエッチなハプニングを起こしたらぁ、この二人も一緒に楽しんでくれそうですぅ。よーし、モンスターに変身してこのパーティーを襲撃しますぅ。
私は自分のキャラクターデザインをオーガに変更してぇ、転移魔法でダンジョンの奥まで行って待ち伏せましたぁ。ちょっと待つとアクヤさんたちのパーティーが現れましたぁ。オーガの目線で見るとぉ、皆さんちっちゃいですねぇ。
キザーオ王子が斬りかかってきましたけどぉ、のろいですぅ。手で簡単に払いのけられますぅ。アクヤさんの炎魔法もぉ、私には大したダメージにはなりませぇん。なにせ私のレベルは3500近くありますぅ。それに対してぇ、この4人パーティーのうちショタン王子以外の3人はぁ、レベルが2000にも届いていないようですぅ。それにこのオーガの体は頑丈でしてぇ、武器や防具を身につけているのと変わらないんですよねぇ。皆さん一生懸命襲い掛かってきても通用してなくてぇ、なんだかかわいいって思っちゃいますぅ。
「このオーガ、レベルがかなり高い!」
「勝つのは難しいですわね。退きますわよ!」
ちょっと遊びすぎましたぁ。逃げられては困りますぅ。私はプレーヤさんの頭を手でつかみましたぁ。するとアクヤさんが私に杖を押し付けてきましたぁ。攻撃魔法を直接撃ち込もうとしているのでしょうけどぉ、遅いですよぉ。私はアクヤさんの腰を手でつかんで持ち上げましたぁ。
「何するんですの! 離しなさい!」
私はプレーヤさんの頭をつかんだままキザーオ王子に突きつけて言いましたぁ。
「刃向かったらダメですぅ」
「ですぅ?」
いけませぇん、私のかわいい語尾のままではダメでしたぁ。オーガらしい話し方に変える必要がありますぅ。
「DEATH、すなわち死なのだ」
「刃向かったら殺すということか!」
「そうなのだ。これでもうお前たちは動けまい」
その直後、私は後頭部に強い衝撃を受けましたぁ。危うく意識が飛びかけましたけどぉ、なんとか2人から手を離さずに体勢を立て直して振り向くとぉ、ショタン王子のキックでしたぁ。子供には人質の意味がわかりづらかったですかねぇ。教えてあげないといけませんねぇ。
「そんな事しちゃいけないのですぅ……のだ。私……ワシは、このお姉さんたちを人質にしているのだ。もしお前たちがワシを攻撃したら、ワシはお姉さんたちを殺すのだ。お姉さんたちを殺されるのは嫌だろう? だからワシを攻撃してはいけないのだ」
「でも今、僕が攻撃しても殺さなかったよねー」
嫌なとこ指摘しますねぇ。私も殺したくはないんですぅ。
「どこまで攻撃しても殺さないか、試していいー?」
するとアクヤさんが叫びましたぁ。
「いいわけありませんわ! わたくしが死ぬまで攻撃を続けるって事ではありませんこと!」
「わかった、やめとくよ」
プレーヤさんが言いましたぁ。
「ねえ、私はもっとひどく扱われても耐えられるんだけど。もう少しだけ攻撃してくれない?」
いったい何を求めてるんですかぁ、この人はぁ。無視して話を進めますぅ。私はキザーオ王子の服を脱がしたいんですぅ。
「人質を返してほしければ、お前の防具と武器を、すべてワシによこすのだ」
「できるわけないだろう!」
キザーオ王子が即答しましたぁ。自分の剣と鎧がよっぽど大事なんですかねぇ。アクヤさんとプレーヤさんがドン引きした顔でキザーオ王子を見てますぅ。
「あ、いや、僕は誇り高き第一王子だ。どんなことがあっても敵の要求には決して屈しない。アクヤ殿、プレーヤ殿、この命に代えてもあなた方を奪還してみせましょう! 断腸の思いでこの場を去りますが、必ず戻ってくると信じていてください!」
助けを呼びに行きますかぁ。なら男をもっと呼んできてほしいですぅ。筋肉が魅力的な男がいいですぅ。
「人質は生かしておいてやるのだ。屈強な男でも連れて戻ってくるがよい。そいつの装備もワシが全部いただくのだ」
キザーオ王子とショタン王子は走り去っていきましたぁ。




