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異世界転生、裏から見れば  作者: 黒魔
2章 レベル99異世界無双
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ギルドとダンジョン・雄烈栄の視点

 ギーテルたちに同行してボーケンという街に着いた。街並みはヨーロッパ風だが文字は日本語だ。


 まず冒険者ギルドの建物に入った。酒場が併設されているタイプで、いかにも冒険者といった姿の人たちが酒を飲んでいる。異世界ものの漫画でよく見る光景だぜ。ギーテルがカウンターの向こうにいる女性に声をかけた。うん、冒険者ギルドには美人の受付嬢がなぜか欠かせねえよな。


「新入りさんですか? どうぞこちらへ」


「ああ、この街で冒険者をやりてえ。登録を頼む」


「ではこちらの用紙に記入をお願いします。それからレベルや適性の測定を行いますのでこちらに手をかざしてください」


 カウンターに水晶玉が置いてある。手をかざすと徐々に光りだし、不思議な模様が現れた。


「あれ、おかしいですね……」


 受付嬢が水晶玉をいじり始めた。模様が変化していく。


「そんな、レベル99!? こんなはずは……」


 酒を飲んでいる冒険者たちがどよめいた。


「レベル99だと? 嘘だろ」


「そんなレベル聞いたこと無いよ!」


 それを聞いたココロが大声で言った。


「嘘じゃないよ! オレツェーはさっきねー、トレントを二撃で倒してココロを救ってくれたんだよ!」


「二撃だと!?」


「トレントを二撃で倒すような奴がいるのか!」


 ギルド内は騒然とした。レベル99というのはどうやら規格外の存在らしい。トレントも普通は相当苦戦するはずのモンスターなのだろう。


 その間に水晶玉は輝きを増していき、ひびが入り、ついに砕けた!


「いやあっ!」


「すまねえ、水晶玉を壊しちまって」


「いえ、あなたの責任ではありませんのでお気遣いなく。でもレベル99となると、S級冒険者として登録することになりますね。S級となると普通の依頼を受けていただくわけには参りませんので、特別な依頼をすることになりますがよろしいですか」


 冒険者としての経験は全く()えのにいきなりS級かよ。おもしれえ。でもまだ自分の強さもよくわからねえ状況だから、肩慣らしはしておきてえな。


「特別な依頼っての構わねえが、俺はまだ経験不足でな。最初はもっと簡単なものからこなしていきてえ」


 受付嬢は困った顔をした。ギーテルが笑いながら肩を組んできた。


「お前、すごい奴だったんだな。お前と組めば楽に稼げそうだ。依頼をこなすより俺たちとダンジョンを攻略してみないか? ダンジョンの奥にはな、何でも斬れる伝説の剣があるらしいぞ」


「そうだな、まずはダンジョンで冒険に慣れておくのも悪くねえな」


 その後ギーテルたちと一緒に街を巡って装備を整えた。何もわからねえ状況で色々教えてくれる仲間がいるのはとても助かるのだが、この二人が見繕(みつくろ)ってくれる装備は猫耳だったり着ぐるみだったりで正直うっとうしかった。その日は宿屋に泊まった。




 ダンジョンの浅い階層ではモンスターを簡単に倒せたが、階層が増すにつれて歯ごたえのあるモンスターが襲ってきやがるようになった。俺は保有スキルの欄に並んでいる魔法を片っ端から試して、徐々に自分の能力を把握していった。


 俺のジョブ「勇者」は、剣も使えるが攻撃魔法や回復魔法など多彩な魔法も使える。消費MPが大きい魔法ほど効果が大きい。なので、まだ使ったことは無えが最も消費MPが大きい「地獄の業火(ごうか)」が俺の切り(ふだ)ということになるんだろうな。


 不意にココロが声をかけた。


「何だろー、お地蔵さんかなー」


 通路の両側に10メートルくらいある石像が並んでる。こんな地蔵があるかよ。こりゃあゲームでよくある、近づくと動き出して襲ってくるやつだろ。


「危険だ、お前らは下がってろ」


「頭に何かかぶせてあげるのー?」


笠地蔵(かさじぞう)じゃねーよ! 多分モンスターだっつーてんだ」


 俺は通路を進んで石像の間に立った。すると石像の目が一斉に光った。俺に向かって歩き出し、そして武器を振りかぶった。俺は魔法を唱えた。


「石よ、数多(あまた)(くい)となりて敵を貫け。石の剣山!」


 床から無数の石の杭が生えてきて石像に突き刺さった。石像も石だから貫くことはできずに杭が砕けていくが、そのたびに石像の足も砕け、ついに石像は身動きがとれなくなった。


「もういいぜ」


 こうなれば楽勝だ。3人で全部の石像を破壊してドロップ品を手に入れた。


「石像が護ってたって事はよ、この先に大事なもんがあるみてーだな」


「お友達からもらった誕生日プレゼントかなー」


「護るべき大事なものって言ったらキンのタマだろ」


「それってクリスマスツリーの飾りかなー?」


 ココロとギーテルは道中ずっとこんなしょうもないボケを言い合いやがって、うざくて仕方ねえ。ボケとツッコミだったら盛り上がったかもしれねえけどよ、ボケとボケだから話が脈絡(みゃくらく)の無え方向に転がり続けやがる。誰かツッコミがパーティーに加入してくれ! ジョブは何でもいいから!


 石像の通路の先の部屋に入ると、そこには青白いドラゴンがいた。ドラゴンは氷のブレスをこっちに……いや違う! 他の冒険者2人に向かって吐いた! 女冒険者がブレスを盾で防ぎ、その間に男冒険者が(ほこ)をドラゴンの足に突き刺した。ドラゴンは2人をしっぽで払い飛ばした。一進一退の戦いのようだ。


「俺たちも戦おうぜ!」


「どっちと戦うのかなー?」


「ドラゴンに決まってるでしょ!」


 女冒険者がツッコんでくれた! これだよ、俺たちのパーティーに必要なのは!


「お前、ツッコミか! 頼む、俺たちとパーティーを組んでくれ!」


「はあ? 魔法使いのスキルよりもツッコミを重視して勧誘するなんて、どんだけ深刻なツッコミ不足が発生してるのよ、あなたたちのパーティーは!」


「素晴らしいぜ! 俺はそのツッコミを渇望(かつぼう)していたんだ!」


 ドラゴンが俺を踏みつぶそうとしてきたので剣で防いだ。いかん、ツッコミに会えた嬉しさでドラゴンへの注意がそがれていた。先にこのドラゴンをやっつけてしまうか。


「石の剣山」


 無数の石の杭が足元からドラゴンに襲い掛かった……が、硬い(うろこ)に完全に弾かれちまった!


「こいつには僕の矛しか刺さらない!」


 男冒険者が叫んだ。あの矛には何か特殊効果が付与されているのだろうか。でもなかなか近づけずに苦戦しているようだ。


 よし、切り札を使おうじゃねえか。地獄の業火。スキルの説明には、「燃え(さか)れ」の後に名前を加えて「地獄の業火」と唱える、とある。俺はドラゴンの頭上にジャンプして唱えた。


「燃え盛れオレツェー! 地獄の業火!」


 その瞬間、俺の体から周囲に向かって激しい炎が噴き出した! 全身が熱い! 目の前が真っ白になる中、ドラゴンがもだえ苦しんでいるのがぼんやりとわかる。そして俺のHPも一気に減った。この魔法はMPだけでなくHPも消費する自傷スキルだったのか。ドラゴンは黒焦げになり、煙となって消えた。


「ちょっと、大丈夫!?」


 女冒険者が駆け寄ってきた。俺は自分に治癒魔法をかけた。


「ああ、このくらい問題ねーよ。俺の名はオレツェー、ジョブは勇者だ」


「私は魔法使いのレイ。あっちは戦士のホール。ドラゴンを倒してくれてありがとう」

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