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8. 元執事、遭遇する

「フェール様、いらっしゃいませ」


 ギルドに行くと昨日と同じように閑散としていた。お昼を回ったところだから、冒険者は既に出払っているようだ。


 フィルナのところに行くと笑顔で迎えられる。良かった、リリアナが何かしているということはないようだ。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「コアの換金を頼みたい」

「かしこまりました。こちらに出していただけますか?」

「あぁ」


 集めたコアをごそっと出す。小さな金色のコアが受付のデスクに転がった。


「こ、これは、今迷宮(ダンジョン)で獲ってきたものですか?」

「そうだが」

「この量……もしかして一階層を攻略されましたか?」

「ああ、転移陣で戻ってきたな」

「迷宮に潜ったのは……」

「今朝だな」


 俺の答えにフィルナが額に手を当てて天井を仰ぐ。


「すごい人って昨日で十分知ったと思ったけど、本格的にやばい人が来た気がするわ……」

「聞こえてるが?」

「す、すみません! すぐに換金してきます! 少々お待ちください」


 ドタバタと奥に消えていく。フィルナがいなくなると俺はため息をついた。


「やばい人って……小鬼しかいない階層なんてすぐに攻略できるだろ……」

「あの迷宮って一回層罠が大量にあるのよね」

「そうなのか」

「そうなのかって潜ってきたんじゃないの? てかなんで私に話しかけられて驚かないの?」

「気づいていたから」


 俺の独り言に答えたリリアナがため息をつく。ギルドに入った段階でいることには気づいていたが、まさか話しかけて来るとは。


「これでも気配を消すのは得意なのだけど」

「俺は気配を感知するのが得意なんだ」

「得意ってレベルで感知されたらたまったものじゃないのだけど」

「じゃー他にどう言えと」

「『俺、天才なんです』?」

「ただの痛いやつじゃねーか」


 こいつはなぜこうも絡んで来るんだろうか。正直めんどくさい。


「で、潜ってきたんじゃないの?」

「潜ってきたが?」

「罠大量にあったでしょ?」

「浮遊を使って最初以外全部回避したから知らない」

「あなたって人は……」


 なぜかこいつまで天井を仰ぐ。俺は最善な策をとった、ただそれだけのはずなんだが。


 俺の表情から言いたいことを読み取ったのか、リリアナがため息をつく。


「浮遊なんて魔力大量に使うでしょ。それを罠を回避するためだけに使うなんて……」

「命の方が大切だからな」

「そもそも一階層攻略できるほど魔力が持つ方がおかしいのだけど」

「さぁ」


 こいつと話していると疲れる。

 会話を切り上げようとしたところでフィルナが戻ってきた。


「お待たせしま……リリアナ様、またフェール様を勧誘しにきたのですか?」

「そんなジト目を向けないでよ。勧誘じゃなくて観察しにきたのよ」


 フィルナがため息をつく。てか聞き捨てならないことを今言ったよなこいつ。


「おい、観察ってなんだ観察って」

「言葉通りの意味だけど?」


 正直俺よりこいつの方がばくないか?


「付き纏って来るなよ?」

「気づかないでくれるとありがたいわ」

「付き纏って来る気満々じゃねーか!」


 断言しよう、こいつの方がやばい。

 ため息しか出ない。あぁ、俺の幸せが逃げていく……


「とりあえずリリアナ様は落ち着いてください」

「私は別に落ち着いてるわよ?」

「じゃー正気に戻ってください」

「ひどい言い草」


 リリアナが楽しげに笑う。フィルナは諦めたように首を振ってこちらに向き直った。


「フェール様、こちらコアの代金になります。ご確認ください」」

「あぁ、問題ない。ありがとう」


 コアの代金は予想通り銅貨十枚だった。無造作にアイテムボックスに突っ込む。


「じゃー俺はこれで……」

「ねぇ、今から一緒にご飯食べに行かない?」

「嫌だ」


 俺がさっさとギルドから出ようとするとリリアナが誘って来る。なんでこんなめんどいやつとご飯なんか……


「美味しいお店を紹介するわ。予約制でなかなか入れない名店よ」

「……行く」


 不本意だが惹かれてしまった。しょーがない、我慢するか。

 俺の様子にリリアナがまた楽しげに笑う。


 ……なんか腹たつ。



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