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3. 元執事、誘われる

 本日四話目!

「あなた、私とパーティーを組まない?」

「「「「「はっ!?!?!?!?」」」」」


 思いもよらぬ言葉に俺は叫んでしまった。周りで聞き耳を立てていた人間も驚愕の表情を浮かべている。


「ちょっ、リリアナ様、正気ですか!? いくらフェール様がジークさんを倒したからって……」


 今の今まで黙っていたフィルナが声を焦ったようにストップをかける。が……


「いいの。この男は絶対普通じゃない。私は興味持ったものは興味が失せるまで徹底的に調べないと気が済まないタチなの。知ってるでしょ?」

「リリアナ様の悪い癖が……」


 フィルナが天井を仰ぐ。

 彼女——リリアナはフィルナに話している時も俺から一切目を離さない。その様子は、捕えた獲物は決して逃がさない魔物のよう。


 な、なんか怖いんだが!?


 背筋が凍るとはこういうことを言うのだろうか。あまり恐怖心を抱かない俺が怖いと思うだなんて、絶対こいつ只者じゃない!


 そんな俺の思考を察知したのか、リリアナはさらに笑みを深める。


「で、私とパーティーを組まない?」

「お断りします」


「「「「「へっ!?」」」」」


 俺の即答に俺以外が皆素っ頓狂な声をあげる。


「え、こ、断るの!?」

「えぇ。俺に利はないですし」

「私はこう見えてSランクなのよ!?」

「それが何か?」


 俺の返しにリリアナの目が点になる。


「そ、それが何かって……」

「確かにSランクは強いのでしょう。いや、ランクに限らずあなたが強いことは見ればわかります。ですが、俺は自由気ままに迷宮攻略がしたいだけで仲間という存在に縛られることは望んでいないのです。なので仲間探しなら他を当たってください」


 笑みを浮かべて丁寧に言う。

 さっき丁寧な口調の時の俺は怒っていると言ったが補足しよう。


 丁寧な口調で、しかも笑みを浮かべている時はもっと怒っている時だ。


 周りがざわめく。


「登録したばかりの初心者がリリアナさんに大口叩きやがって……」

「ああいう慢心しているタイプがすぐ死ぬのよね」

「すっごい奴が来たなぁ……」


 聞いている限り俺に対して肯定的なやつはいないようだ。


 まあ当たり前だろうな。リリアナは常時《《魅了魔法》》を使っているみたいだし。五感に作用する系統の魔法は魔法式が見えないのがよくない。

 強い効果ではないが、ここにいるやつらは基本的にリリアナの味方だと考えた方がいいだろうな。


 俺がそれに気づいたのは恐怖を感じたからだ。初めて会った相手に好意を持つ、しかも好意を持つ状況ですらないのに。それは意識をそいつに支配されているのと変わらない。

 普段あまり恐怖を感じない俺が恐怖を感じたのは、支配されることを嫌う俺の体質が拒絶反応を起こしたからだった。


 弱い魔法は意識さえすれば弾ける、もう俺がリリアナの魅了魔法にかかることはないだろう。


 リリアナは俺に魔法が効かないことに驚いているようだ。


「あなた、本当に何者……?」

「ただの駆け出しの冒険者ですよ。それではそろそろ失礼します」

「ちょ、ちょっと! 初心者のあなたが組めるなんて幸運なことのはずなのに……!」


 出て行こうとするとリリアナはなおも食い下がる。俺はめんどくさくなって彼女に一瞬で近づくと、耳元に囁く。


「魔法で信頼は得られませんよ?」

「っ!?」


 固まった彼女からすっと離れると、俺はやっとギルドから出れたのだった。




 ***




「今日は色々あるなー、王宮から逃走して、ギルド登録いったら酔っ払いに絡まれて魅了魔法かけられそうになって。色々ありすぎだろ。今日は本当は休日のはずだったのに……」


 ぼやきながら街を歩く。大都市なだけあって街はたくさんの人で賑わっていた。


「久々に来たな」


 思わず笑みが浮かぶ。

 以前ここに来た時は緊急の手紙を届けろと言われて魔法をフル活用して王都から三日三晩走ったのだった。正直もうしたくない経験だ。


「そういえば、迷宮攻略に必要なものが書かれているパンフレットもらってたな」


 フィルナから受け取ったパンフレットを確認する。


「保存食、水、テント、ロープ……保存食はあるし、水もテントもロープも魔法で代用できるな……あーでも魔力切れを気にしたほうがいいのか……?」


 自分のアイテムボックスに入ってるものを思い出しながら確認する。


 アイテムボックスとは収納魔法の一種で、開くと中が異空間になっていて物を収納できる魔法だ。収納できる量は魔力量に比例するらしいが、俺はとりあえず限界を迎えたことはないから気にしていない。


「魔力回復薬を買っておくか……」


 基本的に薬系統を使うことがないから持っていない。

 とりあえず買いに行こうと俺は職人街の方に足を向けた。






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