―29― 二分の一
そんな調子で、俺はひたすら最下層へと進んでいった。
そして気がつけば10階層。
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〈人狼〉
LV:59
鋭い牙をもった二足歩行の狼型モンスター。狼に比べて、巨大な肉体を持つ。
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「今までと比べたら、少しは強そうだ」
とはいえ、以前倒した鋼鱗竜のレベルが532だったことを考えると、どうしても目の前の敵が貧弱に思えてしまう。
まぁ、あのときに比べると、すでに何十体ものモンスターと戦っているため、体力は限界に近い。
そのことを考えたら、余計な体力を使わないように素早く倒すことを心がけよう。
なので、手を抜かない。
「閃光筒」
雷光石と固い実に対し〈加工〉を使うことで作ることができる武器。
その効果は投げた瞬間、目映い光が放たれ見た者の目を眩ませることができる。
「ウガァアアアアッッ!!」
なにも見えなくなった人狼は雄叫びをあげて、混乱していた。
それでも、身を守ろうとあらぬ方向に爪を振り回す。
「手投げ爆弾」
それに対し、俺は惜しみなく手投げ爆弾を放り投げる。
そして、仕上げに毒属性を付与したナイフで何度も切り裂く。
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レベル上昇に伴う経験値を獲得しましたが、〈呪いの腕輪〉の影響で、レベル1に固定されました。
SPを獲得しました。
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倒れた人狼を見て、思ったことを口にしてしまう。
「ヌルゲーだな」
ひどく退屈だ。
もっと強いモンスターを倒したい。
さらに奥に進めば、出会えるのだろうか。
そう思って、さらに進んでいく。
それから、何体かの人狼を倒した先、見慣れない物を見つけた。
「出口かな?」
目の前にあるのはどう見ても出入り口だ。
ワームホールのような仕組みなんだろう。出入り口の奥を見ることはできない。
もしかしたら、このゲートをくぐった先にはボスモンスターがいるのかもしれない。
「もちろん、行かないなんて選択肢はねぇよなぁ」
そう言って、俺は飛び込んだ。
「あるじぃいい! 会いたかったぞぉおおおお!」
ゲートをくぐった先、ドサッと抱きつかれる感触を味わう。
「なんだ、フィーニャか」
「なんだとはなんじゃ! 感動の再会なんだから、もっとそれらしく振る舞え」
「いや、意味わかんねぇよ」
「おぬしはわらわと再会できて嬉しくないのかぁ?」
どことなくしょんぼりした表情でフィーニャがそう言う。
「俺も嬉しいぞー」
なんか棒読みになってしまったな。
「なんか、わらわへの扱いが投げやりな気がするぞ」
フィーニャと会話するのを切り上げつつ、俺は周囲の観察を行なった。
ドーム状の密閉された部屋の中にいるらしく、通路のような仕切りもなければモンスターがいる様子もない。
まだダンジョンの中にいるらしいことはわかるが、果たしてここはどこなんだろうな。
「合流地点だと言ってたのう」
「合流地点?」
そう言って、周りを観察すると、一人の冒険者が佇んでいることに気がつく。
「まさか驚きだな。レベル1のお前が、ここまで踏破してくるとは」
そう言って、佇んでいた冒険者が近づいてくる。
「まぁ、大したことがないモンスターばかりだったし」
「レベル100の冒険者がそう言うのは理解できるが、レベル1の冒険者が言っても説得力がないな」
その冒険者は苦笑してた。
「それで、ここはどこなんだ?」
「あぁ、どうやらこのダンジョンは強制的にソロでの攻略を強いられるダンジョンらしいが、最終的にはどの冒険者もここに来るようになっているみたいだ。だから、合流地点と呼んでいる」
「なるほどな。だが、他の冒険者はいないようだが」
「あぁ、それはだな」
そう言って、冒険者は後ろを指さす。
そこには二つのゲートが並んでいた。
「他の冒険者たちは二組にわかれて、それぞれゲートをくぐっていった。恐らく、一つは外につながっていて、もう一つはボスエリアに繋がっていると俺たちは考えている」
なるほど、どうやら俺よりも早くここにたどり着いた冒険者たちは先に進んだというわけか。
「じゃあ、ここにたどり着いたのは俺が最後なのか?」
「いや、他にも来てない冒険者はいるな。そうだ、坊主、ここに来るまで、階層は何層まであった?」
なんでそんなことを聞くんだろ、と思いながら、俺は質問に答える。
「10層まであったが」
「10層か。やはり、冒険者ごとにここにたどり着くまでの階層が違うようだな」
「そうなのか」
「わらわは三層だけでここに来られたぞ」
と、フィーニャが口を挟む。
なるほど、冒険者ごとに階層が異なるのか。
「10層は多い方なのか?」
「あぁ、俺は6層までしかなかったし、多い方だと思うな」
なるほどな。俺がここまで来るのに遅かったのは、そもそも階層が多かったせいか。
「それにしてもお前が生きてここまで来られるとは本当に思わなかったな」
「……そうか?」
「そりゃ、レベル1だしよ。他の冒険者たちが続々とたどり着いてもお前の姿は見当たらなかったからな。みんな、てっきりお前は死んだもんだと思っていたよ」
まぁ、確かに、そういうことなら死んだと思われても仕方がないかもしれない。
「あのお嬢ちゃんだけはお前が生きていることを疑ってなかったがな」
「わらわの主がこの程度の難所で命を落とすなんてあり得ないからなぁ」
なぜか、フィーニャが誇らしげに語っている。
「それで、お前らはこれからどうする?」
ふと、冒険者にそう問われる。
「どうって、あんたはここでなにをしているんだ?」
「俺は、他の冒険者がここに来るのを待っているのと、すでにあのゲートをくぐった冒険者たちが再びここに来るのを待っている」
「なるほど」
外に出られるゲートをくぐった冒険者なら、再びここに来るのも苦労しないだろうし、一度外に帰還した冒険者が再びここに来てくれれば、どちらが外に出られるゲートなのか判明する。
「おすすめは俺と一緒にここに残ることだな。なに、こういう事態に備えて食料は持参している」
安全を考えるなら、それがいいだろう。
「悪いが俺は先に進むぞ」
「いいのか? 最悪、ボスのいる部屋に行ってしまうかもしれないんだぞ」
「だから、行くんだろ」
そう言って、俺は笑みをこぼす。
ダンジョンのボスか。さぞ強いに違いない。次の標的としては申し分ないな。
「わらわもついて行くぞ」
そう言って、ぴょこぴょことフィーニャがついてくる。
「まぁ、俺がとめる権利はないが好きにしたらいい。あぁ、回復薬をいくつかいただけないか? ここに負傷者がやってきたときに使いたい」
「まぁ、そのぐらいなら」
そう言って、俺はアイテムボックスからいくつかの回復薬を取り出し受け渡す。
「助かる。くれぐれも死なないようにな」
「元より、そのつもりだ」
そう言って、俺は右のゲートをくぐった。
外に出るのか? ボスエリアに出るのか? 確率は二分の一。
俺が望むのは、当然ボスエリアだ。
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