―16― 騒動
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経験値を獲得しました。
レベル上昇に伴う経験値を獲得しましたが、〈呪いの腕輪〉の影響で、レベル1に固定されました。
SPを獲得しました。
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というメッセージウィンドウが表示されたのを見て、倒したことを理解する。
「ふぅ」
安堵した俺は息を吐いて、手の甲で汗を拭った。
倒すのに苦労してしまった。
縛りも一つ解除してしまったし、反省点が色々と多い戦いだったな。
ちなみに、いくつのSP手に入れたんだろとか思いながら、ステータスを表示する。
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SP:232
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ふむ、けっこうなポイントを手に入れることができたな。
これなら、色んなスキルを獲得できそうだ。
具体的になんのスキルを手に入れるかは、次の標的を決めてからでも遅くはないか。
「ひとまず大顎ノ恐竜の素材を〈アイテムボックス〉に回収してっと」
と呟きながら、大顎ノ恐竜を〈アイテムボックス〉に入れる。
そしたら、後は帰るだけだ。
「む……」
幼女の姿をした銀妖狐がふて腐れた表情で立っていた。
なんか用でもあるのだろうか?
とはいえ、話しかける義理もないので無視して山を下りる。
ひとまずふもとの村に行って、馬車を見つけて帰るか。
……なんか俺のあとをついてくるな。
後ろを振り向く。
すると、俺の後を確実に追いかけてくるのが見える。
「俺になんか用か?」
「ふぎゃっ!」
なぜか声をかけると驚いたのか奇妙な叫び声をあげた。
「……わらわと契約しろ」
銀妖狐は目をそらしてそう口にする。
やはり、これか。
「いやだ」
契約する気は毛頭ないので、そう口にする。
そして、再び歩き出すも銀妖狐は俺の後をついてきた。
◆
「換金をお願いしたいんですけど」
「あ、はい、大丈夫ですよ」
冒険者ギルドにて、俺は受付嬢に訪ねていた。
「それじゃあ、お願いします」
そう呟いて〈アイテムボックス〉の中から大顎ノ恐竜の死骸をだして地面に置く。
「ちょ、ちょちょちょちょっと、これはどういうことですか!?!?!?」
なぜか受付嬢が発狂していた。
「なんでレベル1のあなたが大顎ノ恐竜の素材を持ってくるんですか!?!?」
またこれかー。
淡々と換金してくれるだけでいいのに。
「別にどうだっていいじゃないですか」
「いやいや、我々冒険者ギルドは冒険者の活動を管理するのも仕事のうちですから」
「おい、なにがあったんだ……」
「ジョナスさん!!」
見ると、1人の冒険者がこっちにやってきた。
なんか見たことある人だな……。
あぁ、以前俺を新人研修に誘った大剣使いだ。
「み、見てください! この人、レベル1なのに、また高レベルのモンスターの素材を持ってきたんですよ!」
「また、お前か……。今度はどんな方法でモンスターを持ってきたんだ」
「……偶然、このモンスターが崖から落ちた瞬間に立ち会ったんですよ」
「そんなことが二連続で起こるか!?」
なんか怒鳴られた。
そういえば以前も同じ言い訳を使ったんだった。
「見てください! ここに切り傷があります! だから、誰かが倒したんですよ!」
大顎ノ恐竜の死骸を見ながら受付嬢がそう叫んでいる。
そこに気がつくとは目ざといやつめ。
「つまり、こいつが倒したってことなのか?」
「それはありえません! この人はレベル1です! 念のため、〈鑑定〉で確認してみます! ほら、やっぱりレベル1ですよ、この人!」
「じゃあ、なんでこいつが素材をギルドに持ってきたんだ?」
「わかんないですけど、他の冒険者が狩った素材をこの人が奪ったとかなら……」
「もしそれが本当なら犯罪だが、他の冒険者からこれだけの素材を奪うのは簡単ではないし、素材を奪われたなんて被害は今んとこ耳にしていないし」
「でも、それ以外考えられないですよ!」
なんか俺が犯罪者か否かみたいな議論が繰り広げられている。そもそもそういう話は俺の聞こえないところでやれよ、とか思わないでもない。
「大顎ノ恐竜を倒したのはこやつじゃよ。わらわはそれをしかとこの目で見たぞ」
そう言ったのは、幼女に化けた銀妖狐だった。
獣耳は見られたくないのか、しっかりとフードをかぶって隠してある。
「そ、そうなんですか……」
唐突な幼女の証言に、受付嬢は困った表情していた。
この幼女の証言を信じていいのかどうか、そもそも真とするならば、この幼女がモンスターがでる危険な区域にいたわけで、それはありえないだろう。けれど、幼女が嘘をつく理由も特に思いつかないし、とか色々と考えているに違いない。
「なにか騒ぎでもありましたか……?」
ふと、この輪に第三者の声が入ってきた。
「ギルドマスター!?」
受付嬢がそう呼んだ男性は高齢の白髪を生やした爺さんだった。
「えっと、そのですね……」
かくかくしかじかと受付嬢がこれまで経緯をギルドマスターに説明をする。
「ふむ、なるほど……」と説明を聞き終えたギルドマスターはなにかを考えるように黙りこくったかと思うと、俺に対し問いかけてきた。
「このモンスターをユレン殿が倒したというのは間違いないのか?」
「ええ、そうです」
本当のことを言うか悩んだが、嘘ついてもいずれ限界がくるだろうと思い肯定することにした。
俺が頷くと、ギルドマスターは「信じられんなぁ」と呟く。
「やっぱり他の冒険者から手柄を奪ったんじゃ……」
「証拠もないのにそういうことを言うではない!」
「す、すみません……」
受付嬢に対しギルドマスターが叱責する。
「気を悪くしないでくださいユレン殿」
「いえ、別に気にしてないですし……。それに、信じられないのは当然の反応だと思いますので」
「ふむ、そう言っていただけるとこちらとしても助かる。そうだ、ユレン殿、ぜひともどうやってこのモンスターを倒したか、我々に説明していただけぬか」
うーん、説明しろと言われてもな……。
そもそも説明したとこで、理解してもらえるとは思えん。
いや、待てよ。
もっといい方法があるじゃないか。
「ふへへっ」
いい方法とやらを思いついて、思わず笑みがこぼれる。
「口で説明するより、俺の実力を直接、皆さんにお見せしたほうが納得していただけるんじゃないですか?」
「確かに、百聞は一見にしかずとは言うが」
「ええ、そうでしょう。ですから、今から、この俺と決闘してくださいよ。そうですね、決闘する相手はジョナスさん、あなたなんかがいいんじゃないですか?」
以前、ジョナスさん本人からレベル200を超えていると聞いた。
それだけ強い冒険者と戦えるなんて、絶対楽しいに決まっている。
『ゲーム』でもなんどか対人戦をやったことがあるが、対人戦はモンスターを狩るのと違った奥深さがある。
対人戦なんて、よほどの理由がない限り、やることはない。
だから、せっかくの機会を使わせてもらおう。
「確かに、ユレン殿の実力を確認するなら、そのほうがよいかもしれぬな。ジョナス殿も引き受けていただけるか?」
「戦うのはかまわないが、俺のレベルは200越えなのは知っているだろ。実力差がありすぎで、ユレンの実力を測るのに俺は向いていないんじゃないか」
余計なことを考えやがって。
俺はただ強い冒険者と戦いたいだけなのに。
「いえいえ、ジョナスさんが一番適しているんですよ。俺は自分の実力に見合わないモンスターを倒した。であれば、今回も自分よりいかに強い冒険者を相手にどれだけ俺が戦えるかを皆さんにお見せする必要があると思うんですよ」
「た、確かにそうかもしれんな……」
ジョナスが頷いてくれた。
よしっ、これで強い冒険者と戦える。
「それじゃあ、ユレン殿とジョナス殿の決闘の準備にかかろうか」
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