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70、明かされる謎

 白井へ向かう道中、慶一は再びマニギスと会話をしていた。マニギスからの声はどうやら携帯端末から聞こえてくるもののようだった。慶一を取り巻く状況の実態もマニギスからの言葉で段々と明らかにされつつあった。


「もう一度確認したいが、あんたは何者なんだ?」


『私は名を飾真尼子(かざりまにこ)といいます。今は蒼い庭園というところに身を置いています』


「蒼い庭園?」


『髄家所縁(ゆかり)の地です。かつてこの里には髄家の血を引くものが数多く住んでいました。それが飾蒲生の台頭により命を狙われた髄家の娘たちが隠れるように内地へと逃れました。髄家ではどういうわけか女子が多く生まれ、男子は直系の者を除けば数名しかいませんでした。あなたの母親、そしてあなたがよく知る、狩野朱里の母親も髄家の血筋の者です』


「……朱里は無事なのか」


『あなたのおかげで外壁は焼き払われましたが、後遺症が残ったようです。容体については詳しくはわかりかねます』


 実は慶一はもう一体の外壁を焼き払っていた。神楽の雲の館で過ごした晩に朱里に連絡を入れ、その場で朱里に取りついていた外壁を御力の力で焼き払った。慶一には朱里の照明魔法(ライト)の同位改変スキルである足跡(トレール)がぴったりと付いており、朱里にだけは慶一が今どこにいるかがわかる。すぐに手を伸ばし、慶一は朱里のスキルを掴んだ。朱里もそれに応えた。

 しかし、長い間外壁に苛まれていた朱里の体には後遺症が残った。朱里のその後の声からもそれは感じられた。完治させる方法は未だにわからない。慶一にはそれがずっと気がかりだった。


「他にも何か知っていることがあれば教えてほしい」


『わかりました。ではまずあなたも持つ御力について。御力とは、そもそも髄家の祖たる異界の民がこの地にもたらした力だといわれています。外地の遥か彼方より来たという異界の民は、私たちの祖先にこの力を託しました。御力を中心に世界を安定させようと考えたようです。そのとき、異界の民たちに御力を監視させようとして生まれたのが飾家だとも言われています。御力には全てのスキルを強化させる力が存在します。定型技能(プラクティス)はそれにより内容の異なる同位改変と呼ばれるスキルに変えることができます。もちろん自由技能(ディスオーダー)もそのまま内容を変えずに強化させることが可能です。異界の民が持つ御力には遥か遠い宇宙の力と連携を取ることも可能だったみたいです。そして、現在、この世界でただ一人、あなたにも実はその力が備わっています。あなたの御力は髄家の直系をも凌ぐ強さに今はなりつつあります。それはあなたが力を抑え続けたせいだといわれています』


「……」


『以上が私が知っている御力についてです。次はスキルの連携について詳しく教えましょう。あなたもすでに何人かと連携を取っているようですので』


「何人かと?」


『はい。携帯端末を通じて、おそらく取っています』


 慶一は不審に思い、携帯端末の履歴を調べてみた。すると、一件だけ見たこともないところからの着信履歴があった。日付は十一月十七日、時刻は日暮れ時だった。

 直感で駆の顔が思い浮かんだ。おそらく洞窟内で黒い影を葬ったときだ。誰かの追い風を感じたからだった。駆はおそらく自分の身を案じ、携帯端末を調べたのだろう。


「そうか。確かにあんたの言う通りだ」


『もうご存じかと思われますが、スキルの連携には心情的な作用が必要になります。助けを求めるものに手を差し伸べるとき。心で繋がる深い関係のある者同士など。状態を肩代わりしたり、スキルの威力を高めたりと言った作用があります。そしてその条件として異なるスキル同士であることが挙げられます。定型技能。自由技能。そして同位改変などです。また、以前にも話したように連携中は飾蒲生に力を奪われることはありません。蒼い庭園で髄家と所縁のある者たちがもつ源力は源力(ロドーラ)と私たちは呼んでおり、御力の影響を受けている源力(ロドーラ)はその成り立ちが少し違います。御力や源力(ロドーラ)は飾蒲生に殺されると奪われますが、スキルにより誰かの助けが入ると防ぐことができます。孤立していると狙われやすいのです』


「そうか、わかった。覚えておく」


 慶一は気づかないまま、これまで窮地に追いやられていた御力使いを何人か助けていたようだった。


「いや、まて。確かあんたと最初に繋がった月乃の山は電波が圏外だったはずだ。何故携帯で連絡が取れた?」


『私も一応、他とは少し違った外門スキルを扱うことができます。空間に干渉してあの山周辺の電波の到達領域を少しだけ伸ばさせてもらいました。ですから、私とは内地にいる限りは圏外を気にせず連絡を取ることができます』


「そうか、わかった。ありがとう」


『私は今、この場所を離れられません。何かあったらまた連絡します。ご武運をお祈りしていますよ』


 そう言って連絡は途絶えた。

 飾蒲生。

 確か冬士郎と会ったときにも出てきた名前だ。

 いつの間にか得体の知れない大掛かりな争いに身を投じようとしているようだった。

 思えば最初はただの好奇心だった。

 あの本に書いてあることの後を追って朱里と洞窟に行った。

 そして深山と出会い、外の世界に惹かれるようにして出た。


 朱里とももうずいぶん長いこと会っていない。

 無事でいるだろうか。

 しかし、今はまだ帰るわけにいかない。まだ、このときは終戦を迎えていることは知らされていなかった。

 戦乱のただ中だという白井への道を急ぐのだった。

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