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64、決戦

 空丸に再度、展開中の敵陣を壊滅させ、前線部隊を退けるよう指示が下った。深山は現在帰還中。由瑞は今回も後方支援に当たるということで、またしても空丸が戦地に回された。敵は前回の廃ビルに潜んでいるようだ。空丸は一階から中へ入る。

 閉鎖陣形(ディフレクト)を展開させ、警戒しながら二階へ上がる。元はデパートだったようだ。かなり昔のものに見える。売り場の広い空間の物陰に人の気配がする。空丸はナイフを構えながら近づいていく。すると足元を何かが横切った。

 ネズミだ――。

 薄暗い床の上の隅をネズミが駆けていった。空丸のそばで壁際を行ったり来たりしている。しかしよく見ると普通のネズミではない。

 血を垂らしている。手負いのネズミのようだ。

 切られた跡がある。まさか――。

 その次の瞬間。


 ドンッ


 爆弾が爆発した。

 敵がネズミの体に仕込んだ源力を炸裂させた音だった。


「くっ」


 ガガガ!!


 そのとき物陰から突然現れた敵の兵士が空丸を撃ち抜いた。

 空丸は一瞬途切れさせられた閉鎖陣形(ディフレクト)の上から左の脇腹を撃ち抜かれた。


「ぐっ」


 柱を背にして咄嗟に身を隠した。再び閉鎖陣形(ディフレクト)を展開するが、深手を負ってしまった。出血が止まらない。

 今、あの男に襲われたらまずい。空丸は傷を庇いながら周囲を警戒した。敵兵たちは再び身を隠したようだった。

 服を破り、腹部を縛り付けた。どうやら弾は貫通しているようだが出血がなかなか止まらない。急いで手当をしなければならない。それには戦いを終わらせる必要がある。


「くそ」


 冒険者にとって唯一の致命的な欠点が定型技能に回復スキルが存在しないことだ。万が一、負傷した場合は特殊な自由技能による回復スキル以外では医療処置しか治す方法がない。回復スキルは最もレアなスキルの一つになる。

 そして、自由技能は派生スキルを除けば一人につき一つと決まっている。これは根源的な力の源である源力と自由技能が強く結びついているためであり、源力を分散させるといったことなどはできないためでもある。

 従って、今の空丸には回復手段がない。この手負いの状態で敵のリーダーを倒さなければならない。


「……ここまでだな」


 そう言うと、空丸はポケットの中の携帯端末を手に取った。



「よし、行くぞ」

 二つの人影が立ち上がり、暮れかけた陽光を背にして歩き出した。

「場所はどこですか」

 若い男の方が、もう一人に尋ねる。

「この先の廃墟だ」

 後方で控えていた由瑞が空丸からメッセージを受け取ったようだった。

「敵も源力持ちなんですよね?」

「空丸の話ではそうだな」

 若い男は筧寿郎(かけいとしろう)という。白井の上級冒険者、筧行郎(ゆきろう)の弟だ。回復スキルの使い手でもある。


「ここだな」

「本当にやるんですか?」

 やがて廃ビルの手前まで来た二人は、あるスキルの準備に取り掛かっていた。

「初めてなんですよね、大丈夫なんですか?」

「……」


 由瑞は静かに詠唱の態勢に入った。


 廻天する雪雲、大地を積もらせる――。


 ズズズズズズ


 源力の奔流が大気を揺らし始めた。


「オオオオオオオオ!!」


 ドゴオ


 外壁をそのまま叩きつけた。


「オオオオオオ、ラアッ!!」


 ゴオオ


「オラオラオラオラオラアッ!!」


 ドゴオォォン


「このクソ梅子おおお、人材少なすぎんだよ俺たちはよおお!!」


 外側から廃ビルを破壊し始めた。

 凄まじい地鳴りと共にビルが崩れ始めていく。


「もっと媚びろよおお!! 五藤家とかによおおお、そしたら冒険者増えんだろうがよおおお!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴ


 土煙を上げてビルのあちらこちらが傾き、崩れていく。

 ものすごい勢いでコンクリート片が飛び散り、風景が破壊されていく。


「す、すごい」


「はあ、はあ、だから、俺は嫌だったんだ。こんな役回りやってられるか」


 ゴゴゴゴゴ


 あとはただ惰性でビルは崩壊していった。


 体術奥義【呪棍(ゲルズオーラ)】。

 体術の全てを修めた由瑞が初めて放ったスキルだった。


「早く、空丸さんを助けましょう」

 二人は崩壊したビルの瓦礫の中から空丸を探し出した。


「だ、大丈夫ですか、空丸さん」

 何とか身体強化で耐え凌いだ空丸が満身創痍で空を仰いでいる。


「何て助け方だ、聞いたことがない。荒療治にも程があるだろ」

「お前だけは死なないからな。この方法しか思いつかなかった」


 何とか一命を取りとめた空丸は筧のスキルですぐさま回復した。

「傷は塞がりました。でもしばらくは安静にしていて下さい」

「……」


 こうして三人は無事戦地から帰還した。

 敵の被害は甚大だったが、隊長のルッツは何とか抜け出し、翌日帰還することになる。


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