62、屋上戦
両者は対峙したまま動かない。
ナイフを構え、間合いを伺っている。
邪魔な取り巻きは遠距離打撃で黙らせた。目の前の男にのみ視線を合わせ場力を高めていく。まだ僅かに空丸の方が勝っている。しかし、それは明後日による追い風があるからだ。素の状態なら互角だろう。
相手が打ち込んでくる。
刃は寸でのところで空を切る。それに合わせて振った空丸の右腕も相手は避ける。観の目が鋭い。身のこなしも互角だ。
一瞬の集中も途切れさせず無呼吸のままナイフを振り続ける。お互いが相手の身体を掠めるが致命打にはならない。集中を途切れさせた方が負ける。
一輪刺しは攻撃の手を止め、そのスキルの発動のために態勢をつくらなければならない。休むことなく振り続けられる攻撃にその隙間はない。
空丸が僅かに変則的な攻撃を入れた。相手が避けたところに入れた左の直突きだった。相手の動きが一瞬止まる。
そこに右腕を振り切ると鮮血が上がる。相手の首を切った。
首を抑えナイフを落とした。止血に意識を集めなければならない。
「ちっ、冒険ごっこのつもりか」
振り向いて立ち去ろうとする空丸に言葉を投げかけるが、空丸は振り向かずそのまま階下へと消えていった。
「俺を残したこと、必ず後悔するぞ」
ルッツは空丸の身体に入れた爆弾を炸裂させないことでチャラにした。
「地面が一番いいな」
空丸はそう言うとため息を吐いた。




