52、人形の街
無様は誰かに負ける、あるいは完全に破壊されるまでその能力を使うことができる。
最初は自滅、そして二体目で慶一に焼き払われた。
蓮真の【失格木偶】は定型スキル【木偶】の同位改変だ。直参と自動操縦の人形を大量に作れる。自由技能の無様を挟むと知覚にフィードバックが生じる。女たちが人形操作の際の受けるダメージを肩代わりしていた。衝撃を受け止める他に【火嵐】で体温40度を無理矢理作らされた。全開の空丸を最初に圧倒したときだ。
「茜、これ持っててくれるか」
「うん」
そう言って深山は手に持っていた鍋を茜に渡した。
「お前、【火気】は使えるか?」
「使えるよ、それだけ使える」
「じゃあ火の方は頼む。燃えカスになったら言ってくれ」
「わかった」
舗装された道を警戒しながら歩く。病んでいる空気と空の顔面は相変わらずだった。
雪を漏らしている。太陽は見えないが傾きかかっているはずだ。
「どこに向かってるの?」
茜が後ろをついて歩きながら尋ねる。
「街の中心だ。市長の館があるのだろう?」
「うん。何しに行くの?」
「こんな状態になった原因があるはずだ」
口女市は主要産業である木偶人形とそれを使った人形劇で栄えた街だ。闇属性魔法四番、木偶を覚えた団員たちによる過激なバトルアクションが見物の人形劇だ。
それ以外にも危険な場所に赴いたり人命救助など色々な場面で木偶人形は使われている。
人形の量産を指示している市長と、財政悪化のためそれを止めるよう訴えていたこの街の冒険者集団である牙能徒との間で対立が起きていた。
市長が病に倒れたことを機に反乱が起きたようだった。
「深山……、火消える」
鍋の中が空になりそうになったところで茜が言った。
「そうか、補給しよう」
そういうと二人はそばにあった民家に向かって歩いて行った。
ほとんどの家は玄関のドアに施錠がされていない。慌てて避難したためだろう。茜は両親を待っていたため開けておいたとのことだった。
「くつ、脱ごうよ」
また土足で上がろうとする勢いの深山を慌てて止めた。泥棒みたいで嫌なのだという。
「わかったわかった」
そう言うと台所を目指した。
台所に着くとコンロの隣のすぐ目に付くところで菜種油を見つけた。適当な衣類も手に入れた。今度は入りきらなかった油のボトルも持っていくことにした。
「色々持たせて悪いな」
「いいよ」
すぐに火をつける。
火が消えたときは外門から守るように源力で場力を高め、茜をかくまうようにした。
「なあ、お前部屋で寝てるとき苦しくなかったか?」
火もないところでこの空気の中でどう過ごしていたのか疑問になって尋ねた。
「辛かったよ。でもお腹に力入れたら大分楽になった」
どうやら自分で場力を高めて耐えていたらしい。しかし長時間は持たないだろう。誰にでもできることでもない。深山は通りかかってよかったと思った。
「両親はどこにいるんだ?」
「この先の食品工場でお父さん働いてる。お母さんはそこで事務をやってる」
「寄ってみるか?」
「うん」
そう言うとまずは中央街にあるという食品工場へ向かうことになった。




