48、静寂の礎
慶一たちが牙途へ入る前日の夜。順一は何も言わずこの世を去った。
御力を打ち消す力として長い間、隠されてきたものがある。それは言葉では表せないし、伝えることも継ぐこともできない。
この世界の力を全て植物だとするならば、御力は一番背の高い植物になる。全ての植物は上に向けて競い合うように伸びるから御力が一番強い力になる。しかし、御力の勢いを殺すような植物がただ一つだけ存在した。
それは自ら枯れる植物である。
御力によって自分を養えない植物が恨み言を残していく中で、自ら何も言わず枯れる植物がいる。
彼らが何を考えているかは御力でもわからない。何も言わずに死んでいく、その姿は御力でもわからない、遥か遠くの風景を既に知っているかのように見えた。誰も知らない真実を知っている。
世界を安定させる役割を持つ御力。しかし自ら枯れるそんな彼らの姿は風景には役割など何もないことを教えてくれているかのようだった。
御力はこのような類いの人間を恐れている。
あの夜、順一の姿に人形は一瞬御力を失った。遠くからの力が途切れ、人形はバラバラになった。
部屋の灯油は空になっていた。火を起こす手段は残っておらず、順一はその場で息を引き取った。
最後まで場力で抗っていたが、押し戻すことはできず、空丸が打ち消しているその下で静かにこの世を去った。
朝になると空には外壁が一面を覆っていた。
昨晩の出来事とスキルの内実を想像した。
どうやら人を何人も傷つけたようだ。
静かに眠る亡骸を見下ろした後、空丸は無意識に歩きだした。




