44、源力戦
風が止まった。
全力の明後日が夜の街に灯る。
辺りでは所々で街灯がすぐ下の雪道を照らし始めていた。
電力をどこかから賄っているのだろう。
炎めがけて人形が突っ込んでくる。
走り方は人間そのものだ。それに時折、型を無視した体術が加わる。
空丸は正面からそれを迎える。
人形は走りながら右腕を振りかぶってきた。大げさな右突きが繰り出される。
守りは全く考えられていない。
空丸はそれを擦って避け、交差するように外側から左腕を大きく振った。
「オオオ、ラアッ!!」
ドゴオッ
縦拳を思い切り顔面に打ち、義骸の右顔面を大きく破壊した。
そしてそのまま体勢を崩したところに叩きつけるように右拳を打ち込んだ。
ゴンッ
義骸は仰け反りながら泥の上に倒れた。
御力で守られているであろう黒檀が激しく損傷した。
しかし、どこかにいる操縦者は無傷のはずだ。
空丸は姿勢を戻して人形を見下ろした。
明後日の方が出力では勝っている。
しかし、全開の状態では長くはもたない。
早く終わらせなければならない。
人形はへし曲がった顔面から布札をはがし、胴部に貼り直した。
名前が薄く書いてあるのが見える。
口女街、市長の名前だ。
人形は上を向いたままゆっくりとした動きで立ち上がった。
その後、空を仰いだまま両手を大きく広げた。
鷹揚な仕草だ。まるで街の支配者にでもなったかのような姿だ。
どうやら何かのスキルが発動したようだ。
踏み込む隙がなくなった。
戦闘能力が明らかに上がったのがわかる。
空丸が慎重に構え直すと、人形はついにその最後の動作を取り始めた。
ボウ・アンド・スクレープ――。
ドゴオッ
気がつくと体が宙に浮いていた。
霞む視界に人形が見下ろせる。
背を向けて去っていく姿だった。
何が起きたのかわからない。
体はそのまま後方の地面に落下した。
急転した状況に意識がまだ追い付かない。
体の痛みからどうやら攻撃を入れられたらしいことだけはわかった。
三ヶ所だ。
顔面、腹部。体が浮いたところをまた顔面。
源力を纏っていなければ殺されていたであろうほどの撃力だ。
「……」
空丸は泥の雪道を這い、何とか目の前の民家にたどり着こうとした。しかし体が思うように動かない。
外門スキルに逆らえない。
このままではまずい。
圧倒的な力の差に、残りの源力の捻出も上手く行うことができなかった。
夜の街灯の明かりだけが、打ちのめされた空丸を後押しするように静かに灯って見えた。
人形の姿はどこかへと消えていた。




