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43、漆黒の風

 源力は消耗なしでここまで来ることができた。

 移動のために明後日(アサッテ)を使ったとしても大分余力を残してたどり着くことができそうだ。


 空丸は前方の暗い空を見ながら、力を加速させ始めた。

 炎を上げながら街路を物凄い速度で駆け抜ける。


 明後日(アサッテ)を移動手段として使う場合は、地上走行にしろ空中移動にしろ障害物に気をつけなければならない。

 ゴーストタウンと化した口女だがもしかしたらどこかに人がいるかもしれない。


 念のため周囲にも気をつけながら走る。

 すると、突然背後から風に煽られるような感じがした。


 まさかと思い、振り向いてみるとそこには何か人影のようなものが物凄い勢いで迫ってくる姿が見えた。


 雪と泥を跳ね上げながらそれは一直線に街路をこちら目指して突っ込んできた。


 止まる気配はない。空丸は思わず左に伸びていた横道へと回避した。


 ゴオオオオ


 空丸がいた場所を通り過ぎた辺りで人影は動力を停止させたようで、ブレーキの代わりに激しく転がることで止まった。


 ゴロゴロガコ、ガガガ――


 どうやら人影の正体はあの検問所にいた義骸のようだった。


 【強化人間(ベータ)】。

 作場庭二郎の体術ディスオーダー。

 体温が三十七度を超えることで発動する。

 それ以降は体温が上がるごとに威力を増す。


 大体四十度で奥義と同じくらいになると言われている、口女街、市長が持つディスオーダーだ。


 義骸は能力を引き継ぐ場合がある。

 しかし、空丸は庭二郎のスキルの能力までは知らない。



「やっぱりくるのか。面倒だな」


 ゴロゴロゴロゴッ


 人形はおかしな動きをしながら空丸に照準を合わせたようだ。


「仕方ない」


 その動きは破壊行動を想起させるような荒い動きだった。

 どうやら敵のようだ。


 空丸も迎え撃つ態勢をとる。



 布陣スキル、三番【悪夢(ライター)】。


 火事場で力を発揮する攻撃型布陣スキル。

 気温が九十度を超えたとき発動可能になる。

 五番以降の近接物理攻撃スキルが全て解脱(ヒット)可能になる。


 空丸は両手で炎天下(リボルブ)を作り出し、両側の木造の小屋に向けて放った。


 小屋が破壊され、勢いよく燃え上がる。

 これなら外門スキルの影響も気にせず戦うことができそうだ。周囲の気温が一気に上がる。


 空丸はポケットから折り畳まれたナイフを取り出した。

 刃こぼれしている大分使い込んだナイフだ。これが空丸の源力を用いない最も効果的な戦闘スタイルになる。


 右手で逆手に持った小刀を顔の辺りの高さにまで上げて構える。


 五番短剣技【貧乏鴉(スティンガー)】。

 一日に一度だけ放つことができる、使いきりのスキルだ。

 しかしそれは覚醒(クラッシュ)している場合であって、解脱(ヒット)の場合はその限りではない。


 貧乏鴉(スティンガー)は、その刺突に必ず衝撃が付与される。

 衝撃とは全身を使った全力攻撃(クリティカルヒット)のことで、普通は案山子(かかし)を相手に最高のコンディションで後先考えずに放った最高の一撃がそれになる。

 あくまでもスキルによる付加効果のため、短剣での攻撃自体が衝撃(クリティカル)の場合、二重で叩き込めることになる。


 空丸はこれを連続ヒットさせて相手を圧倒するというのが源力を使わない場合での主な戦闘スタイルになる。



 戦いが始まる――。


 この黒木による義骸は、普通の死兵とは違い無様(ザカリテ)による直参だ。

 しかし、空丸は当然そのようなことは知らない。


 義骸が地を蹴り跳躍する。守りを無視した突進攻撃のようだ。


 空丸はそれを見て左へと回避した。相手は構えから右利きであることがわかる。利き腕に関しては生前の人間ではなく操作する人間のものが反映される。

 空丸は死兵を相手にしたことは一度もない。

 攻撃の重さや身のこなしがどれほどなのか、まず知る必要がある。


 義骸は何もない場所に着地すると、その体勢のまま今度は左へ跳ねてきた。

 跳躍に関してもそうだが、動きが滅茶苦茶だ。まるで予測がつかない。

 空丸は避ける間をとれず、受けとめる姿勢をとった。

 あの体勢からなら大した攻撃には移れない。


 しかし、それを嘲笑うかのように義骸は空中で躯を回転させ正面に向き直ってきた。遠心力がつけられた右打ちがそのまま空丸に叩き込まれる。


 グン――、

       ドゴオ


 一撃で吹き飛ばされ、遥か後方の家屋の壁に叩きつけられた。


 威力が想像よりも高い。

 咄嗟に源力を纏ったが、それでもかなりのダメージを入れられた。衝撃を表面で殺しきれない。


 義骸は両手を広げ、また同じように躯を回転させ始めた。

 雪や泥を巻き上げながら凄まじい勢いで回り、周囲の炎を瞬く間に消してしまった。


 空丸も今の攻撃でナイフをどこかに落としてしまったようだ。

 もう悪夢(ライター)は使えない。


 どうやら、この義骸には何かわけがありそうだ。

 空丸は意識を内界に向けた。


 出し惜しみはできない――。


 全力の火の玉が、雪の降る街で激しく燃え上がった。

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