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33、前触れ

 体術一番【(ゼイ)】。

 二番から九番までを使用可能としたときに獲得できる体術における皆伝。世の危険項目は簡単だ。正面を誰かに見せてはならない。

 全ての攻撃が、溜めのいらない「黒蟻」と同等になる。

 しかし発動から解除まで正面を見せてはいけない。つまり目の前の敵は確実に葬る必要がある。



 世の発動音でもある小さな爆発音が鳴る。


 グン――――  ゴォ


 世の発動と同時に、慶一に向かって放たれた石弾が全て失速して地面に落ちた。

 ジュウヤがまた力を正面へと戻した結果だ。


 ジュウヤの気配が変わる。



 世に課された制限は、相手の殺害だ。ジュウヤもそれを気配で汲み取ったようだ。



「貴様、何か考えてたな」


「……」


 永崎の呼びかけに意識を戻し、二番から一番へと発動スキルを移した由瑞は正面にジュウヤを捉えたまま、静かに構えを深くした。


 形勢が逆転した――。


 慶一はまるで自分の姿を鏡で見るように由瑞の姿を目に映していた。

 スキルの傾向がそれだけ似ていたからだ。

 あのときの練習場の光景が一瞬だけ目に浮かんだ。はるか昔のことのように思えた。


 ジュウヤは害田の発動を止め、迎え撃つ態勢に入る。

 由瑞は無言で源力を高めた。


 静から動へと転じる動作音。その直後――――。




「全壊破拳――」


 ドゴオオオォォ――


 真上から爆撃のように人影が割って入った。

 二人の間の地面に惨殺(グレイル)が炸裂した。


 ゴオオオ……


 地面が揺れる。威力がケタ違いだ。



「よお、鈍間(のろま)。まだこんなところか」


 吹き飛ばされた由瑞とジュウヤは黒い炎に包まれている。


 笑いかけるジロウ。

 慶一は最初から敵対していたこの男たちに何故、今まで殺意がなかったかを理解した。

 記憶がちらつく――。何かが切り替わろうとしている。


「あんたも、倒さなきゃダメなのか」


「そんなセリフだから勝てねえって言ってんだよ」


 惨殺(グレイル)――。

 右打ち殴打のみ。黒炎は攻撃でダメージを与えた者を行動不能にする。


 非常にシンプルなそのスキルの様相に、黒い炎が蘇り始めた。

 もう、抑える必要はないのだろうか。

 行動不能――、全員が待っているようにも見えた。


 上空で誰かの気配がする。




 吾妻慶一――。


 炎陣が黒い炎に変わってゆく。


 齢十八。準備はいいだろうか。


 携帯の電源は、このとき、切られていた。




 間もなくだ――。


 世界が忌み嫌う、悪魔が大地をよごそうとしていた。

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