30、遭遇(1)
「伏せろ!」
由瑞の咄嗟の叫びに思わず二人が身を落とす。
ギュ…………ギィィイイイイン
山頂付近から何かが投げ込まれた。それはまるで意思を持ったかのように軌道を立て直しながらこちらへ突っ込んできた。
二人はそれを視線で追うのをあきらめ、その場に伏した。
由瑞だけが辛うじてそれを目視していた。
ズゴン……
対象を見失い、後方の大木の幹に深くめり込んでそれは止まった。正体は石のようだった。
辺りに木片が散っている。
よく見ると他の木にもいくつか同じような跡が付いているようだ。削り口はまだ新しい。
どうやら先に誰かがここでその攻撃を受けた跡みたいだった。
ドゴォ……ン、ミシッ
突然、遥か上方から激しい衝撃音が聞こえてきた。
少しだけ進んで目を凝らすと暗闇に躍る人影が見えた。その動きは大振りで人のものとはやや異なるようにも見える。
どうやら戦闘が行われている。相手は魔軍、戦っているのはこちら側の誰かのようだ。暗がりにぼんやりと見える源力の発光がそれを教えてくれている。
その人影の動きをできるだけ冷静に目で追った。光の感じはあの鷲を蘇生させたものと似ているようだった。
筧行郎――。
ディスオーダー、闇属性【界雷】。
筧の闇属性、操作型のスキルだ。
通常は獣や鳥類などがその対象として選ばれることが多いが、同時に一体に限り、完全操作の使い魔をつくり出すことができる。
しかし、それにはいくつかの条件がある。
激しくぶつかり合う音が聞こえる山頂付近で、躍動する人影が後方に弾き飛ばされた。
人影は空中で身を反転させ、木に着地した。
そのまま木を蹴り、背面の体勢から勢いをつけて敵を蹴り落した――サマーソルトだ。
敵は攻撃を受け止め、そのまま何かの態勢に再び入ろうとしている。
少しずつ斜面を上がり、視界が開けてくると三人の元にその人影の姿がはっきりと映し出されてきた。
目元に晒が巻かれている。
白の外衣を着ている。ボロボロに破けた白衣だ。
体中に包帯が巻かれている。
よく見ると体は肌の色をしていない。
これはどうやら人形のようだ。
冒険者協会が捕えた魔兵を極秘にこうして転用している。
筧の一夜界雷が送り込まれていたようだ。




