28、欠損
山の麓から道のない場所を進んでいく。
木々の間を湿った倒木や枯れ葉などを掻き分けて歩いていくと、前方の地面に止め釘が刺さっているのを見つけた。
深山が残した合図だ。ここでどうやら戦闘に入ったようだ。
永崎は、その印を見てしばらく立ち止まっていた。何かを待っているようだった。
「引き抜け」
由瑞が言った。
永崎は、何も言わずにそれを抜いた。
そのまま歩いてゆく由瑞の後を二人は追いかけた。
やがて辺りに弾痕のようなものが付いた樹々が見え始めてきた。
さらに進むと地面に血塗れの大鷲が横たわっているのが見えた。筧の源力が絶えず躍動している。敵のスキル効力を打ち消そうとしているようだった。
二人は鷲の回復をそこで待った。慶一もそれに従った。
手が下されていないことから敵はこの辺りにはいないようだ。
深山は戦闘が終わったら必ずその跡を自分で片付ける。
止め釘を刺すのは単独で戦うときの合図だ。何かあったときにはそれが印になる。まるでそのときを待っているかのようだと、由瑞は彼の前で言ったことがあるが、深山はただ笑うだけだった。
深山は以前はサイズカッターと呼ばれる特殊な武器を使う短剣使いだった。
暴れ狛犬を義一から教わり、時折、規定を破り単独でそれを使用していた。
そばに人がいると苦しくなる。人混みの中には居られない。誰かと一緒に何かをすることもできない。
深山は「等欠損」と呼ばれる障害を持っていた。
どうしようもないそんな苦しみから、うさを晴らすように単独で暴れ狛犬を放っていた。
彼は複数で任務に当たれない。下位スキルだけを登録していた。
あるとき、作戦中に退避命令が出されたが、無視して単独で応戦した結果、翌朝負傷した状態で発見されるという出来事が起きた。
右腕が砕かれ、そばに短剣が刺さっていた。
その戦い以来、彼は戦闘の際に印を残したり、複数人での任務にも参加するようになった。
サイズカッターは戦闘用ではなく、主に狩りなどで獲物をさばく際に使われることが多い。
俺は欠陥品だ――。
人は人でしか生きていくことができない。
俺は滑稽な犬だ。




