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20、地VS空(2)

 中腹からやや外れた三合目付近。遠くで爆発の音が聞こえた。

 女が暗い森の中で何かを伺っている。


「かくれんぼやりたくないけど」


 女は洋傘を振り回しながらそう言った。

 ゴシック調の黒いスカートが風に揺れる。長い巻き髪も揺れた。

 傘を人差し指だけで添えて持つと先端が振動し始めた。


 ブブブ――。


 スキルが人の気配を察知している。

 照準はあくまで自分で合わせなければならない。

 拡散にすると威力が落ちる。


 「蜂ノ巣(エレバリア)」。

 銃技ディスオーダー。

 先の尖ったものに意識を集めることで源力の弾丸を発散する。

 銃身を弾丸が通り抜けるわけではないので、弾道に制限はない。

 先端と対象を一点で繋げば、派生「薔薇ノ棘(レーザービーム)」が単発で撃てる。


 ボボボボボ――。


 溢れ出るほどの源力を傘の先に乗せた。

 ズズズ――、と周囲の景色に穴が開く。大木の幹にも源力がめり込む。

 ユノカは敵をあぶり出すかのように発動を続けた。


 ボボ……ボ……。


 連撃が上手くいかない、様子がおかしい。

 そのまま傘を目線まで上げた。何かが入り込んだような気がしたからだ。


 ……。


 今度は発動が止められた。

 どうやら敵のスキルに捕まっているようだ。



 ――無駄撃ちし過ぎたみたい。


 黒い洋傘が仇になった。



 「黒鞭(ワルゼロ)」。

 闇属性、剣技ディスオーダー。

 相手のスキル発動を阻害する妨害系の防御スキル。

 ディスオーダーの発動には高い集中力と源力の捻出が必ずどこかにあり、そのタイミングに合わせて発動を抑える。

 捕まると武器、あるいは手足がその瞬間、黒く染められる。



 どこかにいる――。


 ユノカは傘を捨てた。


 傘に何らかの能力が入り込み、使用不能になったと判断した。

 しかしこちらの発動原理は理解していないはず。傘自体がスキル能力だと相手は思っている可能性が高い。


 ユノカは暗い森を探るように歩いた。

 周囲には樹齢百年を超える木々が並ぶ。


 後方で一瞬、枯れ葉を踏む音が上がった。

 その直後、喉元に刃が当てられた。


 背後を取られた。


 ユノカは、真上を指差した。



 ズッ



 ――薔薇ノ棘(レーザービーム)


 空から鷲が降ってきた。

 獪転した巨大な鷲だ。片翼を失い、隕石のようにユノカに狙いを定めて落ちてくる。


 上を見上げるユノカ。



「あんたら、飛ぶの好きね」


 羽交い締めにしている深山に向かって言った。



 動くことができなかった。

 襟腰を鷲掴みにされている。

 すぐ後ろにもう片方の手で意識の途絶えた空丸を引き摺るジロウの姿があった。


「荒らすな」


 深山ではなく、ユノカに向けられた言葉だった。


「だってこそこそと面倒だったもん」


「退くぞ」


「はあい」


 その日、白井支部上級冒険者二名の消息不明(ロスト)が本部に伝えられた。


 義一の元にその知らせが届いたのはそのさらに一週間後のことだった。

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