19、地VS空(1)
炎を纏い身を屈めた。
両手でボールのようなものをつくりそれを抱えた。
「明後日」。
源力には外界発動と内界発動の二つの使い方があり、ディスオーダーにはその両方を使用可能としているものがある。
明後日の内界発動は源力による身体強度の超過だ。
そして外界発動がこの派生「炎天下」になる。源力の砲弾をつくり相手に向かい降らせる。
ジロウは十メートルほど離れた場所に立ち、静かに構えたまま動かない。
空丸は砲弾を宙に放った。
小さな太陽が浮かぶ。
ジロウは正面の空丸だけを視界に捉えたまま動かず、構えを深くし始めた。
「惨殺」。
射程一メートルの右打ち殴打。衝撃の際に状態を変える黒炎を浴びせる。
ジロウはただ、その範囲内だけを奪われることなく支配していた。
魔軍の射程は二段構えだ。
ユノカの「蜂ノ巣」が周囲を守り、ジロウがそれを超えてきたものを確実に潰す。
筧のカラスは蜂の巣に殺されたようだった。
ユノカのスキルは深山の対応に回されてしまったようだ。
ジロウはただ、相手が踏み込むのを待っていた。
空丸も相手のスキルの傾向を掴んだらしく、上空の源力の支えを解いた。
火の砲弾が落ちる。
ゴオァッ!!
真上からそれを浴び、辺りが火に包まれた。
暗い森の至るところに火が上がった。
やがてその中心が払われ、深く沈むように構えたジロウの姿だけが浮かび上がった。衣服だけが燃えている。
どうやらいくら落としても無駄なようだ。
空丸は源力の消耗を避けるために内界発動へと力を切り替えた。
打ち損じればやられるだろう。
「相性悪いな、こっちが深山だ」
目だけがただ、こちらを向いていた。
殺意も怒りも感じない。
空丸は景色を静めた。火が消える。
動きを止めた空間で火も光も闇へと還った。
明後日。
その日、東の山で打ち上げられた、それが最後の火の玉の姿だった。