15、壱と弐
地球における源力持ちを「壱」とする。
万魔殿持ちを「弐」とする。
発動条件はこのように別種のスキル同士で声を合わせるだけだ。
壱、弐、と声を出すことで合わせ発動となる。
慶一はまだそれを知らないので、説明の気配に合わせて拍子をとったように炎陣を叩き込んだだけだった。
対岸勢力の梵天は奪われてしまった世界樹の木の実によって力をつける。死んでしまったスキルたちだ。
月面において源力持ちが梵天の勢力に敗れると源力を奪われる。
しかし、力をスキルとして地球側に繋いでいた場合は奪われない。
スキル継承の条件は声を聞くことだ。
お互いがそのどちらかの声を聞き、それに応えることでスキルは繋がれる。
壱と弐の合わせ発動が起こると、超過現象が起きる。
梵天そのものも破壊が可能なほどの力であることが知られているが、同時発動には息を合わせる必要がある。
実質、自由に扱えるのは今のところコンタクトが可能な慶一と説明のみになる。
弥勒は、慶一ではなく何者かが破壊した。
あのとき、遥か遠い記憶の中で自分を知る者の声が聞こえた。
その声は慶一の力に応えた。
この事は説明本人も詳しくは知らない。
遠くで風が吹いたことだけはわかった。
どこかから声が割り込んだのだ。
説明にもわからない連携が、慶一の元にはあるようだった。