14、生命の樹
八落を抑え込んで段落を破り老狼を倒した。
義一と深山はそれぞれの支部で報酬を受け取った。
慶一は自ら同伴を願い出、指定項目の一つを遂行妨害したということで協会から除名宣告を言い渡されてしまった。
深山がそうした方がいいと言ったからだった。
「お前はおもしろいやつだな」
吹き飛ばされた老狼の前で深山が言った。
三人は狼の亡骸の前で説明の言葉を聞いていた。
『あちら側は何と呼んだらいいでしょうか』
どうやらこの世界とは別の場所に万魔殿のスキルたちは人として存在しており、そこの名前が伝えられないらしい。
「お前はそっちの人間なのだろう?」
義一が尋ねた。
『はい。ですがあそこの名はここに持って来れないのです』
「何故だ?」
『その前に世界樹についてお話しします。二つの世界で唯一共有できるのが、今からお話する世界樹になります。あちらの世界はとりあえず「月面」と名づけておきますね』
そうして説明が続けられた。
世界樹。
はるか昔、誰かの手によって植えられた一本の樹があった。
それは長い時間をかけ、次第に成長し、やがて実をつけた。
人々が一生懸命に育て上げた甲斐もあってやがて種が落ち、そこからまた新しい木々が育ち、そうしてたくさん実をつけて人々は豊かに暮らせるようになった。
しかし、最初の世界樹がある日突然枯れ始めた。
人々は何者かが世界樹にかけられた守りを破って入ったことを知った。
人々は世界樹を守ろうとして戦ったが何者かにさらに内側から防壁を展開されてしまう。
そのせいで外側からは助けられなくなった。何とか防壁の内側で世界樹は自らの中心部分を守り、そして攻撃にも転じた。
しかし、次第に押され始め、ついには守る力を失った。
世界樹は枯れた。
しかし中心部分は守られた。根が生きていたからだ。
その根こそが説明であり、中心部分が定型技能たちである。
『世界樹において攻撃を担っていた万魔殿が敗れるとその力は敵の手に渡ります。
しかし、ある日、万魔殿が敵に倒されても力を奪われない、ということが起きました。
そう、それがスキルの連携です。
自分以外のスキルと手を結べば力を奪われない。
それがわかった後、さらに彼らは大地を伝い、外の木々たちとも手を繋ぐことができたのです。
もし内側でやられても外から助けが来る。
その外の木こそが自由技能の木たちです。
そうして、内と外。両側から世界樹を守るための戦いが始まったのです。
次は、それぞれの連携時の制限や条件、そしてスキルの生死についてお話ししますね。
それから、あなたがたった今発動させた二つの世界が繋がったときに起きる超過現象についても』
暗くなり始めた山の岩肌を説明の明かりとあの球体がたき火のように照らしつけていた。