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94、VS釈迦(6)

 日が沈んでいく。

 樹一は少し強めの照明魔法(ライト)を灯した。

 暗闇で戦いづらくなるのはおそらく相手も同じはずだ。


 地面が抉られ、真ん中に押し潰された釈迦がいる。

 ゆっくりと起き上がった。

 敵にはおそらくダメージという概念がない。どれだけ痛めつけても操作する本人は無傷のはずだ。

 悪さができないようにするには破壊するしかない。


「頑丈だな」


 それを見て空丸は構えた。

 内界発動で畳み掛ける。それしかない。

 しかし、それを拒むかのように釈迦はその場で両手を合わせ、外門スキルを発動させた。


「またそれか」


 重しがのし掛かる。重圧の中で身動きが取れるのは、炎属性の内界発動をさせている空丸と慶一。いつの間にか炎属性の九番、陽炎(エンチャント)を自身に施し、源力で抗う由瑞の三名だけだ。

 樹一は先ほども御力を展開し疲弊している。御力では場の外門スキル自体を打ち消せるが、源力だと免れるのは個人のみになる。樹一は何とか僅かな源力で対抗し、照明役に徹するようだ。他の面子はそれ以上に負傷、あるいは消耗している。


 釈迦が後ずさる。

 両手を合わせた状態から、左手で拝む姿勢を維持し、右手を掲げた。エネルギーボールが虚空から呼び出された。敵にとって一番の有効打だ。防御する手段はないと悟ったのだろう。

 空丸めがけて放たれた。着弾点はどこでもいい。爆発させれば周囲に同ダメージを与えられる。


「俺の炎天下(リボルブ)の比じゃないな」


「任せろ」


 由瑞が空丸の前に出た。

 エネルギーボールに対抗するには攻撃スキルで破壊するか防御スキルで耐え凌ぐしかない。破壊する場合、こちらがダメージを受けないためには打属性と炎属性が必要になる。

 由瑞は攻撃に合わせ、陽炎(エンチャント)をLキャストで上書きした。


「はあああ、梅子おおお」


 内功到達点を引き上げるにはきっかけがいる。

 由瑞の場合、最適なのはまたしても梅子への鬱憤晴らしだった。


「安アパートでいい、青葉の端っこでもいい」


「加奈がいてもいい、いなくてもいい」


「俺は穏やかに、ひっそりと暮らしたい」


「タヌキのように冬ごもりしたい」


「これが終われば叶えさせてもらうぞ梅子おおお、お前のお守りはもう沢山だ」


「ドオオオオオラアアアアアアア!!」


 由瑞はささやかながら自炊して暮らすのが好きだった。

 何もないところでぼーっとしながら、粗食で過ごすのが喜びだった。

 一生分働いただろう、あとは好きにさせてくれ。

 言いたいことはそれだけだった。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ


 物凄い勢いでエネルギーボールに殴打を浴びせ、削っていく。


 熱も打も関係ない。

 あるものは全て使っていく。

 脇目も振らずただ一本の道を進んだ。

 呪棍(ゲルズオーラ)

 あるのは破壊衝動だけだった。


 終始、釈迦の力量を出力で上回り、ダメージは受けなかった。

 エネルギーボールが満タンでないことも幸いだった。


 ゴン


 最後の黒い塊が地面に落ち、割れた。

 完全に封殺した。


「何て馬鹿力だ……」


 周りは呆然とそれを見ていた。


「慶一。出番だぞ」


 空丸が言う。


 拝んだ姿勢のままの釈迦の元へとゆっくり歩いていく。

 赤い炎陣が黒く染まっていく。

 御力炎陣(タキオンエンジン)だ。


「壱」


 少し離れたところで樹一が言った。


「あんたには後で聞きたいことがたくさんある」


 樹一は静かに頷いた。


「オオオオオ、にいいいいい!!」


 天に向けて拝んでいる釈迦の胴体に炎陣を叩き込んだ。

 五体がバラバラになり吹き飛んでいった。

 最後に残骸となった頭が慶一を見上げて言った。


「神ヲモ、恐レヌヤツメ……」


「神はいない。世界中の悲劇がそう言っている」


 釈迦を破壊した。

 長い戦いだった。これでこの先、脅かされることももうない。

 全員が安堵した。

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