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93、VS釈迦(5)

 間もなく日が落ちる。

 冬士郎が釈迦を抑え込んでから三日が経とうとしていた。


 回復度合いは半分くらいだ。勝ち目は薄いがやるしかない。

 駆は戦闘現場へと急いだ。


 外地の森林地帯の少し開けた場所にある。どうにか一時間ほどでたどり着いた。


「冬士郎さん!!」


 冬士郎は倒れ込んでいた。しかしスキルで掴んだままだ。釈迦は動けずにいる。


「クソ野郎が!!」


 そばにあった岩を掴んで放り投げた。


「オオオオオオ!!」


 隕石(アンガーボム)


 あるだけの源力を注ぎ込んだ。

 これで押し潰せば勝ちだ。

 しかし、そのとき――。


 ビシッ


 真上からのプレッシャーを感じ取った釈迦が初めてスキルに抗った。


 ビリビリビリビリ


 土塁土(ドルイド)を破ろうとしている。


「まずいな」


 追いついた樹一たちが空を見上げる。

 隕石(アンガーボム)が少しずつ釈迦に迫っていた。


「ヴェリス」


「はい」


 樹一に促され、冬士郎の元へ駆け寄る。治癒の魔法を施し始めた。


「……酒だ。酒持ってこい」


 幻覚が見え始めていた。このままでは釈迦のスキル破りに競り負ける。


「おい、スキルを消せ!!」


 浦須が叫ぶ。しかし、もう遅い。


 バリィイイン


 土塁土(ドルイド)が破られた。


「ちくしょう!!」


 ギュン


 両手を掲げもう僅かで追突するところだった隕石(アンガーボム)をブラックホールの中へ取り込んだ。


「何、あれ」


「もう少しだったのに……!」


 零と蓮が後方で見守る。

 より強くなった釈迦にエネルギーボールまで作らせてしまった。

 駆は源力を失い、樹一は半分ほどしか回復していない。

 力を使い果たした獲物を見渡し、首を傾げた。

 まるでどう料理するかを思案するような仕草だ。


「私がやる」


 樹一が前に出た。


「お前たちは逃げろ」


「嫌です!」


 零が叫んだ。

 どちらにしろここで釈迦を倒せなければいつか何処かで殺される。

 弱肉強食だ。強い方にだけ権利がある。この先を生きる権利だ。

 総力をぶつけ合い、負けた。


 死を受け入れるしかない。


 日が暮れかけている。

 無残はまだ使えない。

 使えても半分の力では勝てないだろう。


 釈迦が両手を合わせた。

 外門スキルだ――。


 樹一が咄嗟に御力で受け止めた。

 しかし、万全ではないため、相殺できない。

 さらに、釈迦は手を合わせたまま歩き始めた。外門スキルを使いながら移動ができる。進化しているようだった。


 場の全員が外門スキルに捉えられた。

 受け止めている樹一は行動できない。

 嫌な予感がした。


 予感通り釈迦は零の前に来て立ち止まった。

 端から消していくようだ。膝をついている零の前から数歩後ろに下がり、十メートルほど距離をとったところで身を深く沈めた。不気味な構えだ。右拳に黒いボールが点火された。小さなエネルギーボールのようだ。誰から見ても明らかだった。これを叩き込む気か――。


「零!!」


 エネルギーが凝縮されている。

 釈迦が地を蹴った。


「くそおおおおお!」


 不気味な光景だった。異様な姿のまま走り込んでくる。陰鬱な走り姿に誰もが死を予想した。

 誰かが死ぬ。そんな気配が放たれていた。


 零は膝をつき、とうとう手もついてしまった。こんな弱い状態であの攻撃を食らったら何の原形も残さないだろう。


 何て残酷な男だ――。


 誰もが己の無力を嘆いた。

 あるものは目を伏せた。


「零ーーーー!!」



 ゴウンゴウンゴウンゴウン


 そのとき物凄い勢いで空から何かが降ってきた。


 黒い影だ。

 空から黒い太陽さながらで迫ってくる。


 このプレッシャーは――。



 ドゴォォ


 釈迦の真上に弾着した。

 爆発音が凄まじい。被弾した人影がクレーターで潰されていた。

 たったの一撃で釈迦の場力を破壊し周囲を自分のものにした。


 爆心地でゆっくりと起き上がり、一言つぶやいた。


「白井なしで、いじらしい。なんちゃって」


 空丸の全力の明後日(アサッテ)が炸裂したようだ。


「な、誰だ」


 場がどよめいた。


「白井の火の玉貴族、空丸です」


 一行は驚きのあまり他に声がなかった。


「駆ッ!!」


「慶一……。来てくれたのか」


 どうやら慶一たちが遥々救援に来たようだった。


「はあ、はあ。マラソンで……、死ぬ」


「走るの苦手なわりによくやった」


「苦手じゃない……! お前たちが化け物なんだ」


 深山と由瑞もいるようだ。


 揃ったようだな――。


 樹一は心の中でそう思った。

 時間稼ぎが功を奏した。


 被害無しでなんとかなりそうだ。

 空の太陽は暮れ始めていた。

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