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【第98話】大規模PTローズガーデン(1) 来たる

翌朝メリーさんの家で目を覚ます。

少し寝ぼけたままの2人で朝のハグをかわし、少しもぞもぞとやった後に朝ごはんとする。


今日はメリーさんの家で朝ご飯だ。

オモチが来るまでに洗浄やらで部屋ごと綺麗にした。


そしてメリーさんが窓を空けるとオモチが入ってきた。


「おはよう、オモチちゃん」


「おはようにゃ」


「おはようオモチ」


「おはよにゃ」


3人でオモチが出した料理で食事をしながら今日の話をする。


とりあえず俺はメリーさんの装備を引き取りに行く。

メリーさんは今日から「おみせばんマニュアル」作成に取り掛かる。

監修(かんしゅう)は俺だ。


一応会社ではいくつかの業務のまとめ役をやっていたので、ちょっとしたマニュアル職人でもある。

ちなみにコツは、完璧に作れたと思っても、それで8割完成したと思っておくことだ。

後は誰かが何かに気づいて、そこをなおして完成だ。


そして午後からはメリーさんと街の外に出るという予定だ。

そのせいかメリーさんはちょっと落ち着きがない。何度もトイレに行く。

緊張の仕方がなんかかわいい。まあそこはおいおい慣れてもらうしかないな。



・・・ところで、ちょっと気になる夢を見た。

冒険者になったメリーさんが、俺の知らない女性だけで作られたPTで活動しているのだが、トイレに行かせてもらえず、オモラシしてしまうという夢だ。


起きてから少し考えてみたが、実際鎧を着て冒険中に、トイレに行くのは女性はつらいかもしれない。

俺はオッサンだから森だったら、その辺でしてしまうけど。


昨日の付与がうまく行った事で、実は何でもできるのではと思い始めている。

このトイレ問題も、付与で何とか出来るかもしれない。



◇◆◇◆◇◆



「それじゃ、行ってきますね」


「行ってらっしゃい」


メリーさんと、ぎゅうとハグをする。

俺はこれから予定通り、鎧を引き取りに行く。

また、職人ギルドで小舟の納品がされていないかと、小屋の進捗状況も確認しよう。

そう思案しながら、メリーさんの柔らかい体を堪能する。


「じろー」


「「失礼しました」」


ちょっと長めのハグでオモチを待たせてしまったようだ。

申し訳ない。


冒険者ギルドの通りに近づくと、妙に人が多いことに気づく。

近所のおばちゃんなんかまで外に出て通りを眺めている。


「何か、ありました?」


このまま進むと確実に詰まって動けなくなるので、進むのをあきらめておばちゃんに話しかけた。


有名なパーティが来ているらしい。

女性だけで構成されており、かなり大所帯なのだそうだ。

そして驚く情報を聞かされる。

Sランクが4人もいるらしい。

それ以外にも高ランクが沢山所属していると。


既にパーティはギルドに入ってしまって姿は見えないが、それでも一目見ようと広場は一般人から冒険者まで、沢山の人で埋め尽くされている。


オモチに頭に乗ってもらい、上から偵察をして貰ったが、このまま突っ込んでいくのは当然、行こうとしている奥への細い道まで人が詰まっていて通れないとの事だった。


迂回して、まずは職人ギルドへ行くことにした。

俺とオモチは少し道を戻ってから冒険者ギルドとは逆の南の方へ歩く。


「人込みは苦手だな~」


「ボクも、踏まれたり、けられたりするから嫌いにゃ」


「こんなにかわいい子猫を」


「にうう・・・」


かわいい子猫と意気投合したので抱き上げて、職人ギルドまで撫でながら歩くことにした。



◇◆◇◆◇◆



「おはようございます、ケイタさん」


職人ギルドに入ると、いつものように入り口に待機して居た男性職員のキースさんが声を掛けてくれた。

この人いつも居る。純粋に、凄いなという意味で。


「おはようございます、ギルド長は空いてますか?」


「そのはずですよ、こちらへどうぞ」


キースさんに連れられてカウンターへ向かう。

ギルド長はちょうど受付嬢さんから呼ばれて衝立(ついたて)から顔を出したところだった。


「おはようございます、ケイタさん」


「おはようございます」


「では早速ですが、こちらへどうぞ」


ギルド長はカウンターから出てきて、そのままカウンター横の通路へ歩き始めた。

応接室や調合室を通り過ぎ、裏手のドアから外の倉庫が並んでいる場所へ出た。


「こちらです」


ギルド長がある倉庫の扉の前で足を止める。

そして扉についている、金属の板に手をかざすと、扉に一瞬だけ回路図のような文様が浮き出て、ガチャン! と鍵が開く音がした。


中に案内されると、なかなか立派な小舟が3(そう)並べられていた。

デザインや雰囲気がアンティークな感じだけど、新品だからピカピカだ。


「うわ、これは胸が高鳴るな」


「いいですよね、(うらや)ましいです」


「スケールさんは買わないんですか?」


「これを使うイメージが湧きませんからね」


「まあこの辺には乗るような場所はないですものね」


「ええ。 ではこれが書類です。 こちらはギルドカードお支払いで?」


書類を確認する。

小型ボート 小型魔力エンジン付き 29万8千円 数量:3

送料、お急ぎ便:無料(ギルドにて負担)

合計89万4千円、と書かれている。


「はい」


ギルド長は壁側に置いてある小さなテーブルを持ってきて、そこに会計端末を出した。


「送料と、お急ぎ便は無料なんですね」


「ええ、それはうちのギルド持ちにしました」


「そうなんですか」


「ええ、今後とも、よろしくお願いします、という事で」


「分かりました、こちらこそ、よろしくお願いしますね」



ギルドカードで決済をしてから、俺の動きに合わせてオモチが小舟を収納していく。


「お見事です、まだ小屋は入りますよね?」


「ええ多分。 ダメだったらそこでまた相談します」


「分かりました、小屋に関しては、もう少し時間が掛かると思いますのでお待ちください」


「はい」


今もこの倉庫街のどこかの倉庫で建築作業が行われているのだろう。


「では戻りましょうか」


「はい」




◇◆◇◆◇◆



建物に入ると、応接室の前でギルド嬢さんが待っていた。


「ありがとう」


「いえ、では紅茶をお持ちしますね」


「ああ、茶菓子もお願いするよ」


「はい」



ギルド長に促されて応接室のソファーに座る。

オモチも隣に座った。


「ふう、今朝、混んでいたでしょ」


「冒険者ギルド付近がやばかったですね」


「実は、冒険者パーティを誘致(ゆうち)したんですよ」


「なんだ、自分から来たわけではなかったんですね」


「あはは、それだけのうまみがあったら、とっくにみんな来てますよ」


「確かに」


「ダンジョンって、浅い階層じゃ全くうまみがなくって、実力があればあるほど深い階層まで潜るんですけど、それだとそれ相応の準備が必要になり、そうなると、普通はその地域に腰を据える事になりますよね」


「そうですね」


「ケイタさんなら身をもって知っているとは思いますが、冒険者って、やっぱり危険な職業なので、ある程度算段が立っていないと冒険には出ませんよね」


「そうですね」


「そういう訳で、ある程度の強さになったり、その場所でうまく行くようになったら、

 ルーティンを壊したくないというのか、自分の拠点からはほぼ動かなくなります」


「やっとうまく行くようになったなら、そうなりますね」


「ええ。 もちろんこの首都にもそういったパーティは何組かいます。

 でも数が全然少なくて、この前言ったスタンピにつながる訳なんですけどね?」


「足りないから補充ってことですか」


「ええ、彼女たちは1か月の期間限定なんですけどね。

 最深部を目指すとかではなく、スタンピが回避できるぐらいの狩りを、そこそこの階層でやって貰えるよう依頼してあります」


「へぇ・・・」


コンコン。

ギルド嬢さんが紅茶セットと、茶菓子をカートに乗せて持ってきてくれたので一時話を中断する。

真ん中に茶菓子が乗ったお皿を置き、それぞれのカップに紅茶を淹れてから綺麗なお辞儀をして出ていった。


「今回来てくれたパーティは、強いうえに、フットワークが軽い」


「場所にこだわらない、どこでも通用する強さって事ですね。 Sランクが4人もいるとか」


「ええ、Sランクが4人、Aランクも4人、Bランクも4人、後はそれ以下の子たちですね

 合計で50人ほど、全員女性で、ローズガーデンです」


ローズガーデンというパーティ名らしい。

薔薇園(ばらえん)とは大きく出たな。

そして強い・・・。


「人数多いですね」


「まあ半分は非戦闘員みたいですよ」


「雑用なんですか?」


「雑用・・・まあそうなりますね。 戦闘部隊が狩りに専念できるように、という事だと思います」


「なるほど・・・」


「ここに来る条件に、50人全員でってのがあったんですけど

 でもさすがに50人は多いって、宿はどうやって確保するんだってなりましたね」


スケールさんがギルド長の集まりでの出来事を赤裸々(せきらら)に教えてくれた。

依頼料の割合が、あまり稼げていない冒険者ギルドが5割で、それ以外が残りの5割を出す。

みんな首都が潰れてしまったら困るからお金は出す。

職人ギルドはそこそこ稼いでいるので1割ほどになったそうだ。


「50人じゃあすごい数ですもんね」


「ええ、結局宿ギルドからの要請で、宿同士で協力してもらって、お客さんの移動とか調整をしましたね」


「へぇ・・」


「ケイタさんは知ってました?」


「ローズガーデンをですか?」


「ええ」


「いえ、そういうのには(うと)いですね、正直」


この世界に来て、冒険者を初めてまだ半年ぐらいだからな。


「ああ、冒険者ギルドにはあまり行かないって言われてましたもんね」


「ええ、そんな感じです」


「まあ、誘致(ゆうち)しておいてこんなことを言うのは、本当はギルド長としてもダメなんでしょうけど・・・」


「ええ」


「良くない噂もあるんですよね」


「なんですか、すごい嫌な予感がしたんですけど」


「立ち寄った先々で、見目のいい女の子を勧誘(かんゆう)しまくるとか、

 あとはまあ、よくある事なんですけど、パーティ内での階級制度ですね」


「なんですかそのパーティ」


どうせしばらくは道が混雑していそうだし、喋りたそうなギルド長の話に乗ることにした。

俺もこういう話は、割と好きだ。


「最初は4人だったらしいです。 貴族の三女とか四女の仲良し4人組。

 貴族の娘なだけはあって、しっかりとした教育を受けており、

 そして自分たちの力ともしっかり向き合って、研究したりしたんでしょうね、

 普通の冒険者じゃあり得ないほどの功績を上げ続けて、一気に高ランクへ駆け上がって行ったそうです」


「へぇ」


「沢山の悪い組織などを解体して、今やSランクです」


「おお、すごいですね」


「4人でもすごい。でも今は50人いるでしょ、なぜかわかりますか?」


「効率を求めて、人を集めたんですかね?」


「いえ、結果的にそういう動きをするようにはなっていますが、

 実際は助けた女の子たちを保護していくうちに、一部の子が役に立ちたい、

 恩返しをしたいという思いから、支援をするようになったのが始まりらしいです」


「へぇ?」


「おかしいですよね」


「おかしいですね、ええと、まず助けられた女の子だけで支援していたのが、

 今や町に寄る度に、積極的に勧誘活動をするようになって、

 なぜかそこには階級制度があると」


「人が多く居る場所では、結局そうなってしまうんでしょうかね」


話がそこまで来ると興味が薄れてしまった。

この話は切り上げよう。


「まあ、色々あったんでしょうね」


「まあ、そう言ってしまったら、そこまでなんですけどね」


「ですね」


「ごめんなさい、長々と。 何が言いたかったかと言うと、メリーさんの事ですよ」


俺のあからさまな興味見失った空気を読んでギルド長が苦笑しながらそういった。


「あ!」


「メリーさんが、そんな簡単について行ったりなんかしないとは思いますけど、一応気にしておいてあげた方がいいかもしれません」


「そうですね、これから1か月も滞在するんだったら、確実に目に留まるでしょうね」


「ええ」


「ありがとうございます、この後話す機会があるので話をしておきたいと思います」


「それがいいと思います。 あ、それともう1つだけ」


「はい」


「確実にポーションの需要が増えますよ」


「ああ、そうですね・・・ 了解です、今度まとめて持ってきます」


「はい。 あとは来週くらいからフトコロさんからの納品が始まる予定です」


もう2つ目が来た。


「わかりました、実はまた1週間ほど遠征して来ようと思っているので、戻ったらまた来ますね」


「わかりました、用意しておきますから、無事に戻ってきてくださいね」


「はい、この街には大切な人が沢山います、戻ってきますよ」


「はは。私もです」


俺とギルド長は硬い握手をした。


「・・・あと、魔石の収集をお願いします。全然集まりません」


「ははは、了解です」


もう3つ目が来たので了解をしてから職人ギルドを後にした。

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