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【第76話】付与士御用達の店シルバーゴールド工房(3)

「さてさて・・・」


室内を見回す。

流石、調合室と言うだけあって、器具が揃っている。

でも今日はどれも使わない。


俺はイスに座り、オモチはテーブルの端に陣取る。


「さてさて」


俺は先ほどフトコロさんの所で買ったアクセサリーを机に出していく。


・革製の中級の腕輪で、

 魔石1つ付き×4個、

 魔石3つ付き×3個。


・中級の魔石 ×20個(革の袋に入っている)



「まずはどう使うか、簡単に決めていきたいね」


「うんうん。どうするにゃ?」


「まず魔石3つ付きの腕輪から決めよう。

 1つはMP回復力強化ね」


魔石が3つついている内、3つとも全部にMP回復強化を施す。


「うに」


「もう1つは状況によってMP回復強化の付与を。

 まあこれはどちらにしろもう1つ増やしたいかな」



「そうにゃね」


「最後の1つは、保留にする。

 という事で、この2つを収納お願いします」


魔石3つ付きの革の腕輪を2つ、ススっとオモチの方にスライドさせる。


「了解にゃ」


「あとはこの中級魔石1つの革のアクセサリーはどうしようかな

 実はこれを移動速度アップ用に最初に買ったんだよね」


「そうだったの?」


オモチがくりっと首を傾げた。


「うん。先に全部商品が分かっていればよかったんだけどね~」


やさしく頭を撫でてあげる。

オモチは気持ちよさそうに目をつむって撫でられた。


「・・・へんな販売スタイルのお店だったにゃ」


「そうだね。きっと色々あるんだろうね」


「そうにゃね」


「よし、将来的には色々付与して行きたいんだけど、

 とりあえず保留だね、全部収納をお願いします」


「かしこまりました。ふふ」


魔石1つ付き腕輪×4が収納された。

今机に残っているのは魔石3つ付きの革の腕輪と、中級の魔石20個(革の袋入り)だ。


「まずはMP回復強化の付与をやろう」


「了解にゃ」


ノートを取り出し、イメージをまとめる

現在俺はMP回復強化(Lv4)で、3秒にMPが1回復する。

この元々あるMP回復強化を邪魔しないように、効果を高めるイメージだ。

色々考えが巡って時間を消費したけど、最終的に綺麗にまとまった。


”MP回復強化でMPが回復するとき、+1回復量が増える”

 名付けてMP回復強化補助!


これでどうだ!


意識を集中する。


コスト:消費MP500 中級の魔石9つ


「いけたいけた」


「何とかなりそうにゃ?」


「うん、いけそう。これは前からイメージが出来ていたからね。

 だけど、消費MPが500だからまた頭痛くなるな」


最大MPをギリギリまで使った時や、一気に大量のMPを消費すると頭痛がするのだが、これがかなりつらい。


「MPポーション出して置くにゃ」


「ありがとう、まだ在庫には余裕あるかな?」


「かなり」


じゅるり


「じゃあ言葉に甘えるよ、今は使うべき時という事で」


苦しいのとか痛いのは嫌というのもある。


「どうぞにゃ」


MPポーションが3つテーブルに出現した。

これ1つで200程回復する。


「ありがとう、あと中級の魔石9つ・・・あ、×3で27個か、あるよね?」


「どうぞ~」


テーブルにコロコロと27個、魔石が出現した。

分かりやすいように9個づつ、少し間隔を開けて出してくれている。

気配りのできる子猫だな!



「ありがとう。さてさて、じゃあやりますか」


「がんばるにゃ」


ノートに書いた設定を頭に入れる。

・・・よし!


「腕輪自体に浄化、魔石部分に魔石浄化、ええと、MP回復強化補助、付与!」



バシュウと音がして手のひらの魔石が溶け魔力となって、腕輪の一番左の魔石に流れ込んでいく。

しばらくして付与は無事終了した。


「・・・よし、MPポーション頂きます」


俺はずんずんと襲い始めてきた頭痛から逃れるため、MP回復ポーションをすぐに飲んだ。


「ぐうう・・よし、痛みが引いたぞ」


このやり方は脳に悪そうだけど、この頭痛は、MPが少なくなったという警告の為の痛みらしいので、脳に負担があるとかではなく問題はないそうだ。

安心安全オモチがそう言ってた。


続けて残りの2つの魔石部分にも同じ付与を行う。


そして完成品がこちら!

・MP回復強化補助の腕輪。

 MP回復強化でMPが回復するとき、一回当たり3、回復量が増える。


いやいや、これは、なかなかの物が出来上がったぞ。

しかもこれは腕輪のデザイン的にも普段使いできそうだ。


「ではさっそく」


自分の左腕に出来立ての「MP回復強化補助の腕輪」を装着する。


「おお、ちゃんとMPが回復していくぞ・・・すごいな」


今までの4倍だ。


3秒で1回復していたのが、3秒で4回復になった。

つまり30秒で10だったのが、40になった訳だ。

1分で言えば、20回復だったのが、80回復に。

これはもう手放せないぞ!



「おお~。すごいにゃ」


オモチにそのことを説明すると、目を見開いてほめてくれた。

かわいい手でポフポフと拍手をしている。


俺はそのかわいいお手ての間に自分の右手を差し込んでみる。

ポフポフと両側から数回手がたたかれたあと、ぴたりと止まった。

顔を見るとオモチは「?」という顔をして、首を傾げ固まっていた。


「ふむふむ、なるほど。

 こんな感じでどんどん補強されていけば、

 他の戦闘職の転移者さんとかに近づけるんだな」


「・・・そうにゃ」


アキラさんとダンジョンアタックという密かな夢も叶いそうな勢いだ。

そうしたら、オモチの実の兄弟のハムちゃんとも会えて、オモチも喜ぶ。

モフモフなふれあいを見られてこちらも喜ぶ。WIN-WINだ。


最後の部分だけ省いてからそう説明すると、オモチはにっこり笑った。



次はMPタンクの付与×20だ。

オモチに付与対象の魔石を取り出してもらう。


魔石を1つ手に持ち必要コストを算出する。


必要MP500。

付与結果:MP+50


「魔石の消費はないのにゃ?」


「うん、俺のイメージの影響かな?

 魔石内部の構造が変わるイメージをしているんだ。

 具体的に言えばひょうたんを加工して水筒にしたようなイメージだよ。

 特殊なことは何も考えていないから魔石が不要な・・・気がする。

 俺のこのイメージでもコストが出ているから、ちゃんと効果がある付与が出来るはずだよ」


「へぇお得にゃ」


「うむ。イメージ大事だな」


「そうにゃね」


ここにきて日本に居た頃の恩恵が。

こういうのって何ていうんだっけ。


空想チート? 違う。

妄想チート? もっと違う。


なんだかカッコ悪いから考えるのは止めよう。



「よし、どんどんいこう」


俺はキリっとした顔で左手をかるく握りしめ、右手を突き上げる直前の位置に持ち上げる。

オモチはハッとしてケットシー形態に変化する。


「どんどんいくぞー! 「「おー!」」


大した掛け声では無かったけど、オモチは嬉しそうに乗ってくれた。


俺は時々オモチから提供されるMP回復ポーションを飲みつつ、

オモチからの声援を受けつつ、MP酷使の頭痛に耐えつつ、

頑張って中級の魔石にMPタンクの付与をしていった。



◇◆◇◆◇◆



・中級の魔石×20

 MPタンクの付与済。1つにつき、MP+50


「できた~」


「おつさまにゃ~」


机に突っ伏していると、オモチが頭をよしよししてくれた。

これは癒される。


「ありがと~、オモチ」


「どういたしましてにゃ」


ちょっと元気になった。

中級の魔石×20を小袋に入れてオモチに収納をお願いする。


「いや~集中したね」


「そうにゃね」


「ここ、たまに使おうかな。静かだし良い感じ」


よくよく観察してみると色んな器具が置いてあり、

アルケミストの部屋って感じでワクワクする。

気が引き締まる思いだ。


「良いと思うにゃ」


「うん」



タイマーを見る。


カウント:03回

残り時間:42分


ふと思いついて、師匠の付与の本を取り出す。


「1時間まで時間があるから、ちょっと読んでいこうかな」


「じゃあ何かあったら起こしてにゃ~」


オモチは小さな口を大きく開けて、あくびをした。

俺はすかさず指を口に入れようとして・・・やめた。


俺とオモチのレベル差では事故につながりかねない。

俺は自業自得だけど、オモチがトラウマになってしまう。

せめて俺が自分でくっ付けられるか、生やせる手段を手に入れてからだ。


「了解。起こす時さ、寝ぼけて俺の腕を切り飛ばさないでね」


「・・・大丈夫にゃ」


オモチがしかめっ面で見てきた。

面白い顔だ。

まあ、今までそんな事一度もなかったんだけどね。

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