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【第67話】北東の森でトレント狩り!(9) 納品2

「ではまずは納品を」


量が量との事で、地下の倉庫エリアへ移動することになった。

ここは職人さんエリアの1つで、普通はお店の人もなかなか来ないらしい。

勿論、一般人は立ち入り禁止だ。


とても広い、何も置かれていない、いや、カラの棚だらけの倉庫へ通された。


「地下にこれだけの空間を作るなんてすごいですね」


「いえ、この規模なら、この王都にもいくつかあるはずですよ」


「そうなんですね」


「はい。それではここで出して頂いていいでしょうか」


店主は倉庫の一番奥の広いスペースがある場所でそう言った。


「魔石と枝はどちらからがいいでしょう」


「両方行けませんか?」


「行けるかな」


俺はオモチを見る。


「行けるかにゃあ、ケイタ、やってみたらいいにゃ」


「分かった」


店員さん達に後ろに下がって貰ってから、両手を突き出した。

勿論これはポーズ。

後はオモチが適当にやってくれる。


数十秒かけて、うまい具合に積み上げてくれた。

俺はオモチの頭を撫でる。

オモチは嬉しそうに目をつむった。

サスモチサスモチ。


「こうして見ると木の枝もすごいが、魔石もすごい」


「これは腕が鳴るな」


振り向くと職人さん達も集まっていた。


「ありがとな、黒髪の冒険者よ」


「いえいえ、お互い様ですから」


「この前、枝や巨大魔石を納品して頂いたケイタさんですよ」


「おお、あの時のか」


「今回もだが、あの時は本当に助かったぞ」


「役に立ててよかったです」


「今回も巨大魔石2個、納品して頂けました」


「おお、でかした!」


がたいの良い初老職人が店主の背中をたたいて咳き込ませる。


しばらく楽しそうな雰囲気で素材を囲んでいたが、今は職人を含め、

数人の人間が早速鑑定具を使いながら査定を始めた。

しばらくその光景を見た後に店主に連れられ最初に部屋に戻った。


倉庫を後にするまでにも相当な数が鑑定を終えていたが、まじりっけなしだったのが分かったようで、かなりいい印象を与えた感触があった。


「ケイタさん、ご苦労様でした。

 しっかりした査定金額は後日、出る事となりますが、

 枝だけでも確実に6千万円はありますから、今回はお支払いも並行して行いますね」


当たり前だけど、支払は普通なら査定が全部終わってからだ。


「は、はい、お願いします」


そして俺は思わず声が震えた。

枝だけでこれなら全部鑑定したら、1億円超えるじゃん。



「まことに心苦しいですが、まずは現金300万円をお支払いいたします」


そういってススッと300万円が乗ったトレイを押してきた。


「はい、ありがとうございます」


300万円でも大金なのに、これっぽっち感が否めない。

既に金銭感覚がおかしくなっているな。


「すみません、前回の買い取りが50万円ほどのお支払いだったので、これだけしか用意しておりませんでした。」


「まあそうなりますよね」


話ながらさらさらと、300万円受領のサインを書く。


「それで現物支給との事ですが、何をご用意しましょうか」


「私自身のスペックは前回お話したときと、それほど変わりはありません」


「はい」


「なので、収納の指輪を20個と、この前買った杖と同じモノを4本下さい」


「ほう、指輪は分かりますが、同じ杖を4本ですか?」


「はい、試したいことがありまして。

 もしかしたら私の殲滅力が上がる可能性もありまして」


「・・・分かりました、どちらにしても問題はありません。

 では収納の指輪を20個と、

 ダブルマジックアイアンロッド、これを4本ですね」


「はい」


「わかりました、少々お待ちください」


店主は一人の青年と一緒に商品を持ってくると言って部屋を出ていった。

俺はテーブルに出された甘くておいしい飲み物を飲む。


「杖を沢山買ってどうするのにゃ?」


オモチが聞いてきた。


「ん・・・ゴクリ。

 砲台を増やす、と言えばわかりやすいかな」


「砲台・・・」


「一回当たりの、杖1本から出せる弾の数は決まっているでしょ?

 何かコツがあったりするかもしれないけど、俺は知らない。

 普通にウォーターバレットでトレントを倒していた時、結構もどかしくって、

 とりあえず両手で持って見ようかと」


「にゃるほど・・・でもなんで4本?」


「遠い未来だけど、片手に2本づつ杖をもって全部違う属性!

 とか、ウォーターバレットを同時に4つの杖から撃つ!

 ってのを試したい。 残りの1本は予備だよ。」


「想像は付いたけど・・・MP足りないにゃよ?」


「まあ、その辺は付与に頑張ってもらうよ」


「付与に頑張ってもらうって、まるで他人ごとにゃ」


「まあ結局は全部俺がやるんだけど、それを意識すると心がきゅうっとなるからね。

 付与はその時の付与士ケイタさんにやっておいて貰えばいいって、思っておけば

 それだけでストレスフリーになったりするもんだよ」


会社でもお客さんに納品する月一の資料作るときとかに、とりあえず集計までやっておいて、形整えたり、見直し(チェック)は明日のケイタさんにお任せしようって考えながら仕事をしていたら心の負担が軽減されてた。


俺はオモチをナデナデしたり、いじいじしながら待つ。


「ぷにい」


オモチは時々変な声を出す以外、何も言わずに受け入れてくれた。


コンコン。ガチャリ。


「お待たせしました」


二人は10分ほどで戻ってきた。


「収納の指輪20個と、ダブルマジックアイアンロッド4本です」


「おお」


「指輪20個はすべて個人認証を行っても?」


「はい、お願いします」


前にやって貰ったように指輪に認証をして行く。

20個もあるとなかなか時間が掛かった。


「では次にこれ、「ダブルマジックアイアンロッド」4本です」


「おお、やはりいいですね」


新品ピカピカの杖が出てきた。

4本並べられると圧巻だ。これ1本50万円だからな。

まあ俺が使っているのも時々魔法で洗浄してピカピカではあるんだけど、ちょっと傷がついている。



「ダブルマジックアイアンロッド」

魔石が2つついた、いぶし銀の100cmほどの杖だ。

持ち手には滑り止めと冷たくないように何かの皮が巻かれている。


100cmなので短杖(たんじょう)というくくりになるのかな?


魔石が縦に2つ並んでおり、まず手元側の1つ目の魔石で込めた魔力を増幅し

杖の先についている2つ目の魔石で安定化させる。

この2つ目の安定化の作用で効果が高まり魔法が強化され飛距離も伸びる。


例えばバレット系の魔法だと、2つ目の魔石で魔力が強く編み込まれ

杖から射出された後もほどけずに遠くまで飛んだり、

着弾時に魔力の密度が高まって硬くなっているので貫通力も上がる。

俺の強みが補強される内容となっていた。


もっと短い、海外の魔法使いが使っていそうなステッキ型もあるようだけど俺には似合わなそうだからやめておく。落としそうだし。



「では確かに」


俺はさっそく指にはめた2つ目の指輪に杖をシュルリと収納していく。

後で何をどの指輪に入れるか考えないと。


「今回の相殺額はいくらですか?」


「はい、まず指輪はサービスさせて頂きます」


「いいんですか? 20個ですよ」


「ええ、そこは曲げずに行きます。杖が1本50万円で、4本なので200万円です」


200万円を現物で支払った、受け取ったことを証明する紙にさらさらと受領のサインを書く。


「もう、これでトレント素材の不足は解消しましたか?」


「はい、これでもう当分は大丈夫ですね。

 職人たちも何もしない日があってかわいそうな思いをさせて来ましたが、これで張り切って仕事をしてくれると思いますよ。

 ケイタさん、この度は誠にありがとうございました。」


そういって店主と青年が深々と頭を下げてきた。


「いえいえ・・そうだ、この後少し話してもいいですか?」


「ええ、構いませんが、何かありましたか?」


店主さんの顔が少し不安そうになった。

吹っ掛けたりはしませんよ。


「ええ、今回教えてもらったトレントの狩場なんですが」


「はい?」


「全然秘密の場所ではなかったですね」


「え!?」


店主と青年が驚く。


「あの場所は兵士さん・・というよりは国か。

 今この国が一番、あ、いや一番とまで言っていないか。 ええと、とにかく」


「は、はい」


「あの場所はトレント大量発生でとても問題視されている場所だと、現場で兵士さんたちに教えて貰いました」


「えええ! な、なんと、そうでしたか・・・」


「とはいえ、あの情報や依頼が無ければ私が行くことはなかったと思うので、情報に価値はあったと思いますけど」


「そうですね、今回納品頂いた分だけでも、すさまじい利益が出ます」


店主さんと青年は同時に、思わずといった感じで嬉しそうに笑った。


「ちなみに、あれだけ倒して、まだトレントは沢山居る様でした」


「なんと・・・」


「トレント自体の脅威もさることながら、トレント素材がこんなに近くに山のようにあったのは皮肉ですね」


「そうですね・・・」


「一応、兵士さんからもお願いされてて、これからもちょくちょく減らしに行く予定です」


「そうなんですか」


「ええ、なので、このお店から、素材を他に卸して頂いても問題ないですよ。

 さすがにここの職人さんだけでは使い切れないと思いますし」


遠慮するかもと思い、転売OKの許可を出しておく。


「そ、そうですか?

 ちなみに素材は継続してこのお店に卸して頂けるのでしょうか」


「はい、そのつもりです」


そういうと店主の顔が明るくなる。


「分かりました、トレント素材が足りないのはほかでも同じですから、みんな助かると思います」


王都には他の装備も作ってはいるが、杖を作る工房がいくつもあるとの事。

まずはこのお店である程度利益を出した後にそういう所に声を掛けてみるとの事だった。

正直すぎて思わず笑ってしまった。


まあその権利はあるかな?


「それでは査定が終わりましたら、また使いのものを向かわせます」


「わかりました」



店主さんと店員さんは、入り口まで見送りしてくれた。


「それではこれからも、よろしくお願いします」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」





少し歩いて振り向くと、店主が掲示板の紙をはがしているのが見えた。

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