【第60話】北東の森でトレント狩り!(2) 準備
北東の森。
最終的には根元部分で東の森と続いている森だが、間には広大な平原がある。
北東の森と東の森は、カタカナで表すと、”ク”のような形をしている。
地図で見る限り、距離的には首都からかなり離れている。
偽装の為に東の門から出て、一旦東の森に行ってから北へ、とも思ったが
少し戻る形になるし、周りに冒険者が居なければ下手な小細工をせずに
東の門からまっすぐ向かったほうがよさそうだ。
朝一でダッシュを決めて、昼前ぐらいには森に入れるだろうか。
「日帰りにはちょっと遠い場所だな」
「そうにゃね」
「ここでも移動速度アップが欲しい案件だな」
「そうにゃね」
俺はノートを取り出しチラシの横に並べる。
「う~ん、その辺の防具屋で安い装備買って付与するか?」
「日帰りにこだわるなら、そうなるにゃね」
「むう。まあそうか、まだ泊りには不安は残るけど、やってみてもいいかもな」
「この辺はそんなに強いモンスターは居ないのにゃ。練習にはもってこいだと思うにゃよ」
「そかそか。なるほど。そういえば老人たちでも行けるような場所だったようだしな」
「ケイタなら余裕だと思うにゃ」
「じゃあ、やってみようか、キャンプ」
実は生まれて初めてのキャンプ。
まさかこの年になって体験することになるなんて。
「おや、ケイタさんキャンプですか?」
入り口を見るとクリフトさんとフローラさんが歩いてきていた。
「はい、練習がてらというレベルになりますが」
「へぇ、何泊するの?」とフローラさん。
「あ~。とりあえず1泊ぐらいかな?」
「お任せするにゃ」
オモチを見ながらとりあえず1泊と言ってみたところ、お任せされてしまった。
「専属で、秘密の情報を教えて貰ったんですが、ちょっと遠い感じなんです」
「なるほど、専属ですか。ではあまり詳しくは聞かないほうがいいでしょうね」
クリフトさんはフローラさんを見ながらそう言った。
「そうね、じゃあキャンプの部分だけお話ししましょうか」
口止めもされなかったし、この2人ならいいかなと思ったけど、せっかくの配慮だ。
1日目の朝にポイント付近まで行って、夕方まで狩りを行う。
次の日、お昼まで狩りをして首都に戻る。とりあえずそんな感じの話をした。
「数年放置だったらしいので、かなりの数になっているかもしれませんね
その場合はどうしよう。・・・一回帰って来ようかな」
「状況次第ですが、余裕だったらもう一泊ぐらいするぐらいでもいいのでは?」とクリフトさん。
「そうね、私たちに気を使ってくれるのなら、そこは大丈夫よ?」
「そうですか? では2泊くらいにしておきますかね」
オモチの頭を撫でながらそう言う。
「問題ないにゃ」
「では、さっそく明日の朝から行ってみます」
「分かりました」とクリフトさん
「何かあったらすぐに戻って来てね」とフローラさん
「了解です」
「一応、明日の朝、出発前に教会に寄りますね」
「分かりました、気を付けて」とクリフトさん
「はい、ありがとうございます」
◇◆◇◆◇◆
チリンチリン
「あら、ケイタさんいらっしゃい~」
「おはようございます、メリーさん」
お客さんもいないようなので、さっそく明日から森で2泊してくる事と、
夜テント付近に置いておく魔物除けについて相談する。
「それならこの前買ってくれたあの”魔物除けのお香”ね」
そういって改めて手順を教えてもらった。
①周りの魔物を倒す
②夕方ぐらいからテントを中心に8方向、10m先に魔物除けを焚き始める。
寝るまでの間に様子を見て、効き目が薄いと思ったら追加していく。
③寝る前にテントのすぐ周りにも3つほど焚いておく
※②のタイミングで同時に炊いてはいけない。
時間差を利用して少しでも休める時間を増やしたり、
うっかり寝過ごしたときの為の用心という意味合いもある。
この焚くお香タイプの魔物除けはいい匂いがするが、魔物にとっては嫌な臭いになるそうだ。
朝方まで持つという事で心強い。
あと、鼻がなさそうなトレントにもしっかり効くそうだ。
「通常火を起こす魔道具なんかもみんな持ってるんだけど
ケイタさんは火の魔法も使えるから便利よね」
「はい、便利な男です」
「うふふ、私は風の初級魔法ぐらいしか使えないからなあ」
メリーさんは腰に手を当てて、困ったなあという顔をする。
「え、そうなんですね」
「そうよ、そういえば言ったことなかったわね」
もし風の適性が増えたらメリーさんに教えてもらおう。
・・・ん?
ちら、ちらとメリーさんが伺うように見てくる。
ちょっと上目づかいでかわいい。
「いつか、一緒に冒険しましょうね」
「本当!? うふふ。 やったぜ! ふふふ。」
メリーさんは華奢な体でガッツポーズを取った。
超かわいい。また冒険譚の影響かな?
過去最高の笑顔も頂きました。
しかしやっぱり冒険行ってみたいんだな~。
そういえば前にも、一緒に行こうって言ってみたら喜んでくれたな。
そこから親しくなったんだっけ。
嬉しいけど、でもなんか負けた気がする・・・
とりあえず、メリーさんは冒険に行きたい、と脳内にメモをした。
「ではまた夜に~」
「はい」
メリーさんとのおしゃべりが終わった後、一旦お店を出る。
「さてオモチ、念のため焼き串の補充をしにいこうか」
「うに・・・了解にゃ」
俺は左腕の中に納まっているオモチに声を掛ける。
眠そうにおもちが答えてきた。
完全に休日モードだな。
まあ今日は壁の外には出る予定はない。
「明日が初の野営になるな」
「そうにゃね」
「夜って敵の数が増えたりするのかな?」
「ん~。そういう話もあるけど、絶対じゃないにゃ」
「種類によるってこと?」
「たまたまでは?とか、実感がない人も多いらしいにゃ」
「肯定派と、否定派がいるのか」
「そういう事にゃ」
「そんなレベルの討論が行われるぐらいなら、ほとんど関係ないって事になるね?」
「そういう事にゃ。夜に沢山襲われるときもあるし、全く無い時もあるって事にゃ」
「それは普通だな。了解」
オモチを撫でながら歩く。
この世界にも学会とかあるのかな?
意義あり!とか、キミを除名処分とする!とか言ったりしているのだろうか。
「さてさてオモチさん、お仕事ですよ」
屋台に着くころにオモチにはまた起きてもらって串焼きを買う。
「まいど~」
「またお願いします」
「あいよ~」
今日も無事2つの露店から美味しそうな焼き串を沢山購入した。
「準備完了~」
「また空いてるお皿がなくなったにゃ」
ブドウジュースを買い、ベンチに座るとオモチがそう申告してきた。
「ごくごく。 お皿の購入も急務かな?」
「ケイタはもう、あの町でしか買わないって決めているのかにゃ?」
「うん、つながりも一応あるし、比べたらこの町の食器は作りが荒い感じがするからね」
やすりが手に刺さらない程度に掛けられているが、あの町で買った食器はツルツルしている。
そこがお気に入りポイントだ。
おじいちゃんが言っていたが、あの町は質のいい木に囲まれているらしい。
しっかりやすりを掛けてやると、それに応えてくれるかのように
ビックリするぐらいツルツルするって言っていた。
「またそろそろ住居スペースが占有され始めているんじゃないかな」
「そうかもにゃ」
「トレント素材で資金貯めて、付与装備の費用に当てたいね」
「沢山いるといいにゃね~」
オモチがフラグめいたことを言う。
これは油断できないな。でもトレントだしな。
「トレントが大量に沸いていたらどうしようか」
「いつも通り、ケイタが射程外から狙撃するにゃ」
「まあそれしかないよね。
魔法が効かないトレント種って居たりするかな」
「それは聞いたことないけど、今回は数年放置されていたって話だから
魔素を沢山吸って上位種になっていたら効きづらいかもしれないにゃ」
「上位種には魔法が効きづらいってやつか。
トレントにはお湯玉も意味なさそうだし、そういうのが居たら連打するしかないかな」
「まあそうにゃね。危なくなったらボクがやるにゃ。
でも経験値が美味しいはずだから、なるべくはケイタがやるといいにゃ」
「わかった、そのつもりでいるよ。レベルも上がるといいな」
最近停滞しているレベルアップもしたい。
作戦会議も無事終了しメリーさんの店に戻ってきた。
「ボクはここで待ってるにゃ」
オモチは入り口の前にある花壇に着地した。
チリンチリン
「あら、ケイタさん」
「また来ました」
「何度でも歓迎するわ」
「明日に備えての準備も終わって暇になったので来ました」
「まあ」
今日はもうどこにも行く気が起きなかったので、そのままおしゃべりすることにした。
「メリーさんは冒険に出るとしたらどういう戦闘スタイルにする予定なんですか?」
メリーさんは優しそうだった顔から、一段階上の笑顔になる。
「そうね~ 一番憧れているのはロングソード、
でも現実的な目で見たらきっとショートソードかな~」
「へぇ、剣なんですね。もう買ってあるんですか?」
「ううん、まだ何も。そういうお店に行くのはちょっと敷居が高くて」
「なるほど、じゃあおすすめの所があるので今度見に行くだけ行ってみましょうか」
この首都の武器屋、防具屋はある程度回ったので知っている。
感じがよく、置いてある商品的にもおすすめのお店があるので今度連れていってあげよう。
フローラさんはスタイルがいいのでドレスアーマータイプがかわいいだろうな。
「ええ!? ど、どうしよう・・・」
メリーさんは途端にあわあわしだした。
「まずはお店に行くだけですよ、戦いに行くわけではないんで・・・大丈夫ですよ?」
「そ、そそそ、そうなんだけど」
メリーさんはあわあわとしながらそう言った。
「メリーさんはビビりだな~。かわいいな~」
「ううう、ひどいです」
「ちゃんとエスコートしますよ」
そういいながら涙目になったメリーさんの頭を撫でる。
「うう~」
最初このお店であった時は大人びている感じがしたけど、
知り合ってみるとこういうかわいいところもある。
大切にしたいと思った。
誤字報告ありがとうございます。
反映させて頂きました!




