【第55話】東の森の薬草採取ポイント全滅事件(2)
いつもの時間に森を出れるように調整して入り口へ向かうと
複数の人間が待ち構えていた。
引き返すわけにもいかないのでそのまま進む。
「お前がケイタ、だな?」
(うわー)
やはり話しかけられてしまった。
そこから少し長かった。
取り留めのない話だったのでまとめると、以下4つだった。
・薬草を独り占めして儲けるな!
・薬草はギルドに納品してみんなの役に立とう!
・こちらにはギルドがついている。こちらが正義だ!
・よくわからないけど、ザマアみろ!
会話をしているうちに、本人たちも良く分かっていないのでは、と思った。
とりあえず昨日、今日とギルドに居たら呼びかけがあって、出張ってきたらしい。
「それってピンクの髪の毛の若い職員さんですか?」
「そうだよ」
普通に犯人が判明。新人受付嬢さん暗躍しているな~。
もしギルドの方針だったら直接俺に来るよな。
裏には他にも関わっている人物がいるだろうな。
これは面倒だなあ。
「薬草ポイントの独占は、手付かずの状態だったから何度も巡っていた。
気が付いたら、独占、そんな感じになっていたかもしれない。
ごめんなさい」
俺は棒読みになりそうなのを気を付けながらなんとか言葉を発した。
薬草は、見つけた人が採取ポイントを秘匿して採取し続け生計を立てる場合もあると聞いている。
こいつらは本当はこれがルール違反では無いことは分かっているようだが
ギルドからの要請だったため、頭から抜けているようだな。
「これからは、もっとみんなが取れるように、
俺はかなり奥の方でだけ薬草を採取しますから、許してください」
頭は1ミリも下げなかった。
でもそういうと、大半の人が納得したようで許すよ、頑張れよと言い出し、
解決したなーっと笑みを浮かべ始めた。
こいつら!
俺とオモチは彼らを冷めた目で見てしまう。
手前側の薬草採取ポイントは、あなたたちが全部潰してしまったのでもう取れないのだけど。
それにも気づいていないのか。
そもそもなんの措置なのか、なんの罰だったのか結局謎だ。
気にくわないだけかもしれないけど。
彼らは今回末端として動いただけなので、ただ協力をしただけのつもり。
新人にルールを教えてあげたような感覚だ。
単純すぎる。悪意がない分良いのか、逆に危ういのか。
何か大きなものが裏で動いているのだけはわかった。
◇◆◇◆◇◆
「冒険者ギルドが使えなくなった時のマイナスってなんだろうか」
オモチに聞いてみる。
「その話は夕食の後に、みんなと考えるといいと思うにゃ」
冷たい返しだなとも思ったが、声色が真剣だったのでオモチを見る。
「・・・まずは無事に町に入る事。道にはまだ数人の人間が居て、
その半分は隠れるようにしているにゃ」
「まじか。そこまでなの?」
「さっきの人たちと同じギルド嬢の扇動でやってきた人たちなら、手は出さないと思うけど・・・」
「容疑は薬草の独占だもんな。せいぜい睨んだりするぐらいだよな」
「でも殺気のようなものを感じるにゃ」
「気性の荒い人が混じっていて、ちょっとは痛い目に遭ってもらおうと
考えている人間がいてもおかしくはないかもね、なんだよ冒険者ギルドって」
「悪いのは、あの新人受付嬢さんだけかもしれないけどにゃあ」
「いやいや、操られ過ぎでしょ」
とりあえず気を付けながら進むことにした。
なんせほぼ直線の一本道だ。道を外れていくほうが怪しいし、疲れそう。
隠れている人は、オモチが場所を教えてくれるので、
あえてジロジロと隠れている茂みなんかを見ながら通り過ぎたりして、かなりの人とすれ違った。
目が怖かった。
さっき森の入り口で声を掛けてきた人が言っていたけど、
この国は薬草不足、なのにその貴重な薬草を独占して、
ギルドに卸さない人間がいる、それがお前だと。
皆が国の為に頑張っている、そんな中、そんなことをやっているお前は目立っていると。
その場では反論しそうになる気持ちを抑えて頑張ってこらえたけど、
今思い出して笑ってしまった。
愛国心なんかないくせに。
ただ成功者の足を引っ張りたいだけのくせに。
大した成功でもないのが困ったものだけど。
一人で考えても答えは出ないし、町に入った足で、
久しぶりに冒険者ギルドへ行ってみた。
なんというか、普通だった。
ピンク頭の新人受付嬢とトレーナーさんは居なかった。
空いているカウンターで自分の名前を名乗ってから今日の事を話した。
森の外側の薬草採取ポイントがすべて根から持って行かれており、ポイントが全滅している。
しかし反応が薄い。それで? といった感じだ。
これは薬草不足のこの国にとっては大きな出来事なんだと思ったが。
まあ、手付かずで放置されていたし、輸入が順調なようだしと思い頭を切り替える。
「では、薬草を植え替えるような計画があるとか、知りませんか?」
「知りません」
受付嬢さんは俺の後ろを何度も覗き込むような仕草をしている。
俺の後ろに人がいるのは分かっていたんだけど。
もう何も言えなくなってカウンターから離れた。
ここの受付嬢さんは、トレーナーさん以外にはいい印象がないな。
俺は一切の気力を失い、教会へ歩いて帰った。
「何があってもオモチはケイタの味方にゃ」
「そうだな、最悪、冒険者ギルドは、いいよ」
そう発言した後、自分で今ネガティブだなと思った。
ネガティブモードになってしまうと、その間に考える事、出す答え、
全部がネガティブなものになってしまう。
なので自分がネガティブだと思ったら、全部を前向きに考え直さないといけない。
最終的に損するから。
そういう話を、日本にいる頃何かの本で読んだのを思い出す。
「職人ギルドの方は結構まともだよね」
「そうだにゃあ」
・・・ダメだ、全然前向きな発言じゃなかった。
◇◆◇◆◇◆
夕食後、頭が回らず何も切り出さない俺の代わりにオモチが切り出した。
「ケイタ、冒険者ギルドをやめた時の影響をみんなに聞いてみるのにゃ」
オモチのその一言がきっかけで、今日の事を話す羽目になった。
独占状態になってしまっていたのをみんなに話すのが恥ずかしかったので
ちょっと切り出しずらかったが、正直に話した。
俺がたどたどしく、オモチが補足を入れつつ今日の出来事を説明すると
皆は俺の味方をしてくれた。
「薬草採取ポイントの独占とは、最初からケイタさんを攻撃する前提での言葉選びですね」
「薬草採取ポイントもそうだけど、同じようにダンジョン内のモンスターの沸きポイントを
パーティー内などで秘匿するなど、冒険者なら当たり前のはずです」
「ということは、やはりケイタさんが狙われてしまっているんですね・・・」
「冒険者ギルドは何も学んでいない」
「冒険者への治癒行為やめたろか」
いつもは何組かに分かれて雑談をするのだが、今日はみんなが俺の事を考え、
心配してくれているのが分かって涙が出た。
「では、就寝時間になる前に、冒険者ギルドをやめた場合の
デメリットを考えてみましょうか」
日ごろの事もあり、冒険者への文句が途切れないためクリフトさんがそう言った。
「買取かな?」と赤毛のシスターさん。
「ここは王都なので、探せばある程度さばけるでしょうが、
すべてとはいかないでしょうね」
「今の収入は、職人ギルドへの初級ポーションの納品なのでお金は困ってないです
素材は収納しておけるし」と俺。
「職人と言えば、町に入るときに冒険者は専用の列ですんなり入れるけど、
職人さんは長い列に並ぶんじゃなかったかしら?」
「ああ、それがありましたね・・・」
冒険者以外は同じ列に並ぶので毎回待たされる。
そして、それ以上に問題なのが、なぜか東門は冒険者しか出入りが出来ないという仕組み。
東門の先には森しかないので商人が来ることがないからだろうか。
「みなさんすいません、俺の為に。もう就寝時間を10分も過ぎてしまいましたのでお開きでお願いします」
俺の言葉でみんな渋々席を立つ。
そしてそれぞれ部屋を出る時に俺を励ます言葉をくれた。
俺はお礼を言い皆を見送った。
最後に部屋に残ったのはクリフトさん、フローラさん、俺とオモチ。
「頼りないと、思うかもしれませんけど」
「え?」
「もう既に話をしてしまいましたし、経過をまた報告してくださいね」
とクリフトさん。その笑顔は慈愛に満ちていた。
「ありがとうございます。」
「ありがとうございますにゃ」
「いえいえ。それではまた明日。」
「はい、おやすみなさい」
「オモチさん、行きましょうか」
今日はクリフトさんと一緒に寝ることになっているオモチは一緒に部屋を出ていった。
クリフトさんとオモチはいつもどんな話をしているんだろう。
明日聞いてみようかな・・・
「じゃあケイタさん行きましょうか」
「あ、はい、フローラさん」
誤字報告ありがとうございます。
修正させて頂きました。




