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【第33話】火魔法を学ぶ

グランさんに火魔法を教えてもらう約束を取り付けたあと、

明日も朝から来るよう言われてから本屋を追い出された。


すれ違いに老人が入っていったので友達が来る予定だったのかなと思い

思ったより寂しそうではなくてよかったな~なんて余計なことを考えてしまった。


火魔法の素質を手に入れた後にタダで火魔法を教えて貰える。

ちょっとうまく行きすぎな気もするがここは好意に甘えておこう。


なんてことを考えながら歩いていると到着した。

今俺とオモチはメルスの町役場の前にいる。


何の為にというと、オモチ発案で首都の教会に手紙を出すためだ。

この町役場には配達ギルドなるものがある。

仕組みは日本にあるものとほとんど一緒で、先輩転移者の影を見た気がした。



入り口へ向かいながら建物を見上げる。

全体的に石の堅牢な建物で、有事の際の避難所になっているのも頷けた。


遠めに見て真新しい感じがしていたが、それは洗浄魔法によるものだろう。

近づいたらちょいちょい傷が見られた。



入り口に入って、すぐ目の前の案内板を見る。


---------------------------------

1F 役場

   町会長室

   役場会議室1~3

   配達ギルド

   冒険者ギルド


2F 職人ギルド

   商業ギルド

   集会スペース(貸出スペース)1~3

---------------------------------


外観からして3Fまであるはずだが、そこは一般解放されていないようだ。



この町役場は町の中心にあり、いろんな役割を持っている。

案内板を見るに、各ギルドの受付も入っているし、遠目に討伐依頼などの掲示板もあるのも見えた。


ちなみに冒険者ギルドの掲示板は閑散としていた。

あるのは、薬草採取やゴブリン討伐、時々被害を出す森のイノシシ型モンスターの討伐など、常設のみだ。

常設以外の依頼が、スペースに1枚も張られていない。

平和だ。泉のお蔭だろうか。



「・・・で、色々あって少し滞在してから帰ります。心配おかけしますがよろしくお願いします。」

そう書いてペンを止める。


「オモチも何か書くか?」


そのかわいいお手てで書けるのかな?なんて考えていたら

ずっと手紙の横にエジプト座り(犬でいうおすわり)をしていたオモチがケットシー形態になり俺からペンを取り上げると器用に、俺の書いた文章の上に2重線を引いた。

何か追記するのかと思っていたので、思わずあっけにとられた。


びっくりして固まってしまった俺を、オモチが小声で怒り始めた。


「まじめか! ・・・じゃにゃくて・・・」


オモチが突っ込みから始めてきた。


「こういうのは真面目に書きすぎてはダメにゃ。

 火魔法の事だって、戻ってからびっくりさせればいいのにゃ。

 誰に見られて付け込まれるかわからにゃいから、手紙に情報を書きすぎないのは常識にゃ。

 面白いものを見つけたから少し遊んで帰る、ぐらいにした方がいいのにゃ。

 それでケイタが興味を引く何かをやっているということは伝わるにゃ」


「な、なるほど。でもその文章だとさすがに無責任じゃないか?・・・そんなものなの?」


「ん~ この世界だと、そんなものなのにゃ」


ホントか~?と思ったが従うことにした。

こういうのって自分の意見を押し通しても空気が悪くなるだけだし、

そこまでこだわるポイントじゃないというのもある。


配達ギルドの窓口の男性に封をした手紙を渡しお金を支払い、

今度は隣の冒険者ギルドのエリアへ向かう。


モンスターの大体の分布などが書かれた周辺の地図(2.500円)があったので購入する。

ギルドの受付の人に話を聞くのもお互いに時間を取られるし、色々聞かなくていいからこういう形の方が助かる。

二人で地図を見ながらああでもない、こうでもないと話し合う。


購入した地図は詳細さには欠けるが、一通りの情報が書いてあるガイドブックレベルのものだった。

これなら話をした方がとも思えたけど、どうせ新参者に教えてくれる情報なんて大したことないだろう。この地図に書かれた情報ぐらいが関の山だ。

オモチも多分そうにゃと言っていた。


やることもないし、さっそく森に入ることにした。


地図を見た感じではこの森周辺には危険なモンスターは居なさそうだ。

俺は今日も魔法主体で行くために、腰には短杖 (たんじょう)を下げる。


魔法は素手でも出せるが、杖を使えば疲れづらいというし、長期戦を想定しての装備だ。

あと、火魔法を覚えていったら使うようになるだろうから、その時のための練習でもある。



森の入り口の横、、少し広場になっている邪魔にならない場所でオモチが探知を行う。

ここは初めての森なのでじっくりやっているようだ。


「まったく手付かずになっている薬草採取ポイントがいくつもあるのにゃ」


3分ほど経ってからオモチがそう言った。


「本当か、じゃあ奥側のポイントだけ回らせてもらおうか」


「ふふ。了解にゃ」


比較的町に近い薬草の採取ポイントは手を付けず、どんどん森を進んでいく。


奥の方にある低地にはゴブリンやスライムなどの低級モンスターが溜まっていた。

ちょっとしたガケが登れずに、奥に溜まっているようだ。

容赦なく上からウォーターバレットで倒していく。


あの町は泉だけではなく、地形にも恵まれているようだ。

こんな立地、良く見つけたなと思った。

何か応用できないかなと思い、メモを取る。


すっかり頭は戦闘モードで、考えをうまく文章にできないので、

崖を上がれないモンスターのイラストに、レベリングに使えそうとコメントだけ書く。

挿絵(By みてみん)


その後もオモチに索敵をお願いして効率よくモンスターを倒していく。

気付くと途中から杖を出すのを忘れて素手で魔法を使っていた。


「オモチはやりやすい方でいいと思うから言わなかったにゃ」


「そうか。まあ東の森では杖使わなかったからな」


オモチの頭を撫でながら休憩がてらの雑談を楽しむ。

首都で買ってみた初心者用の、ちょっとデザインが気に入っている

短杖 (たんじょう)を見ながら考える。


杖は少し遠くを狙うときとかにもいいらしいのだがそれを実感したことはない。

安いからか?


「まあいいか、ゆっくりやろう」


「にゃにゃ」


その日はギルドへの薬草の納品や魔石の換金はせず、日が落ちる前に宿屋へ戻った。




◇◆◇◆◇◆


翌日、本屋へ行くと、「CLOSE」の札が掛かっていた。


ドアの左半分は空いている。


「おはようございます」


昨日言われていた通りに中に入り、本の整理をしていたグランさんに声を掛ける。


「うむ、おはよう」


老店主グランさんは手を止め、裏庭へ案内してくれる。


これからしばらくの間、午前中だけ魔法を教えてもらうことになった。

午後は森でモンスターを倒してレベルを上げたり、薬草を採取する。


聞いてみるとグランさんも午後には顔見知りが来るので本屋を開けたいらしい。

初日の話(老人のさみしい余生・・・)を思い出し、午前中の練習後は少し雑談をしてから本屋を後にしよとオモチと決めていた。



そして火魔法の練習が始まった!


結果から言うと1日に1つ覚えることができ、、3日で予定のものが全部使えるようになってしまった。


初級魔法は、どの属性でも大体同じような感じになるらしい。

例えばウォーターバレット、ファイヤーバレットなんかは分かりやすい。


中級からばらけてきて、上級からはその属性の特性が大いに反映された独特の、全く違うものになる。


今回覚えたのは火魔法が

・ファイヤークリエイトの応用技いろいろ

・ファイヤーボール

・ファイヤーバレット


そしてすんなり全部覚えてしまった為、4日目からは新兵にも教えていたという無属性スキルを教えてもらった。


グランさんは教える時、いかにも教官って感じに変貌を遂げた。

意識してキャラを変えて楽しんでいるようだ。

俺で新兵の教育の時の楽しさを思い出したのか、生き生きしているようだった。


覚えた無属性スキルは実践的なもので

・クイックアクション ステータスの速さと移動速度が2倍になる、消費MPは10秒に1


・パワーアップ    ステータスの力と物理攻撃力が2倍になる、消費MPは10秒に1


・クイック・パワー  上記2つが同時に発動される。消費MPは10秒に2

           これを使うと、いわゆる、ミナギッテキタゼーになる。

           魔力が全身を包み、筋肉に浸透して無理やり活性化していく。

           筋肉に魔力のエネルギーが満たされ疲労がなくなる。

           この際に自分のオーラを見ることが出来る。

           上記2つを覚えていないと使えない。


王城の守りが強固なのは、訓練以外に兵士全員がこのスキルを使うからだそうだ。

ただしクイック・パワーは二つの魔法をバランスよく両立させる所に壁があり、城でも10人ほどしか使えた人間は居なかったそうだ。


グランさんは、剣や槍の才能がなかったため、これに心血を注ぎ5年ぐらいでできるようになって、体力が衰え始めた頃に教官役を拝命したらしい。


また、強力すぎるスキルだったので城では一応秘匿扱いだったが、元が外から取り入れたものなので、教官同士では意味ない決まりだなと笑い合ったそうだ。冒険者でもこれを使う人はいるらしい。


時々グランさんは俺の髪を眺めながらぼーっとすることがある。

なんとなく兵士時代に黒髪の人と交流があったのかなと思った。


無属性スキルも1日に1つ覚えることが出来た。


全部1日で覚えてしまったので、明日は教える予定ではなかった望遠というスキルを教えてくれるとの事。

これで全部だと少し寂しそうにいうグランさんは、教官をやっているときに比べ一回り小さく見えた。



今一番役に立っていると感じるのは森の中を駆け抜ける時に使っているクイックアクション(ステータスの速さと移動速度が2倍)だ。


昔は森は歩いて移動を徹底していたが、今はヒーリングがあるし、レベルが上がって身体能力や、反射神経が上がっており、何かあっても大事になる事はないとの事で、逆に走るよう言われている。


それにより更に反射神経や、瞬時にどう木を避けるか考えられるようになって、鍛えどころが山ほど、そして至る所にあることに遠い目になってしまった。

誤字報告ありがとうございます。

反映させて頂きました!

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