【第21話】東の森 外周部の攻略(挿し絵あり)
クリフトさんに相談をして3日後。
今日は初めての水魔法を教わる日だ。
朝の食事の後、いつものように食堂で向かい合って座る。
「さて、まずはよく、魔力操作だけを頑張ることが出来ました。ケイタさん流石でした」
「え? いえ、たまたまです、他にやることもあったので・・・」
急に褒められ、ちょっとだけ挙動不審になってしまった。
今まで一緒に過ごして分かったがクリフトさんはなかなか人をほめない性格だ。
ほめてほしそうに報告に来たシスターさんとか神官さんに対して普通に対応し
フローラさんがたまにはほめてあげてくださいと苦言をていしていた。
「いえいえ、そういうのも才能なんだと思いますよ」
「うす。ありがとうございます。」
「はい。ではまずお教えする水魔法ですが、ウォータークリエイトというものになります。
これは魔力を使って水を生成するものです。まずはやってみますね」
そういうとクリフトさんは手でバスケットボールを持つようなポーズをとった。
「ウォータークリエイト」
少しのタメのあと、魔法名を唱えた。
すると手より外側から水が集まってきて、直径30cmほどの水球が作られる。
「これが水属性魔法のすべての下地になります。ちなみに飲めるので旅で便利ですよ」
「すごいですね、水が空中で、完全な球体で、それで流れもある」
「光にかざすと綺麗ですよ」
そういって天窓の方に水の球体をかざす。
水球の中の流れが光を乱反射させてとても綺麗な模様を作り出した。
水の球体は、音もなく、結構な速さで循環しているように見える。
「この水の塊を形が崩れないようにして、モンスターに投げればウォーターボールです」
「おお」
「打ち出す力とか、球体の耐久性は込めた魔力とイメージ力になります」
もちろん物理の力で投げるのではなく、魔法で打ち出すんだ。
「なるほど」
「今の説明でわかりましたか?」
「はい、正直そういった概念はよく耳にというか、目にする環境にいたので」
ラノベで。
少しその球体を眺めた後、イメージがつかめた気がした。
「やってみます」
「はい」
「・・・ウォータークリエイト」
手に集まっていた魔力に水っぽさが乗ってきて、それは球体を作らずに
「うあ!」
ばっしゃーんとぶちまけられてしまった。
「いきなり水が出ますか。・・・ふふ」
そういいながらクリフトさんは左手を少し球体の下に持って行き、
右手をぶちまけられた水へ向ける。
するとしゅるしゅると水が浮かび上がり、クリフトさんの手元の水球に吸収された。
俺の服も完全に乾いている。
乾いたというよりは、服にしみこんでいた水がクリフトさんの手元に移動したという感じだった。
「実は言い忘れていたのですが、隠れた壁として、自分の魔力に水属性をのせるというものがありました。申し訳ありません。でも普通に出来ていましたね」
「多分水が出るイメージをしたのがよかったのかもしれないですね・・・」
「なるほど。魔法は魔力とイメージが重要ですからね。これなら問題なく水魔法の方も習得していけそうで安心しました。」
「ありがとうございます。ではこれから一週間はこれを練習することにします」
「はい、毎朝出来具合をチェックしていきますので今まで通り朝食後は残っておいて下さいね」
「わかりました」
その後クリフトさんと別れ、今度は濡れても大丈夫な庭で練習を続けた。
しばらく練習したら着替えて少し休憩し、森へ移動する。
「はあ・・・はあ・・・レベルってすごい」
レベルの恩恵だろう。途中で歩くこともなく東の森まで小走りで来れた。
まあまだ、その後はポーションなのだが。
ポーションは町で買うと初級でも3000円はするので躊躇したが、
オモチがポーションだけならまだまだあるから、どんどん使おうと言ってくれたので
最小限節約しつつ、結局どんどん飲ませてもらっている。
今は在庫を減らしてでも、俺のレベルを上げるべきだと言っていた。
「オモチちゃんやい」
「にゃんにゃんでしょう?」
オモチはケットシーの形態で軽く首を傾げた。
首だけでなく、体も少し傾いており、かなりかわいい。
「今日は行きレベル、帰り薬草でいかがでしょうか」
「そうだにゃあ・・・」
昨日は少し森の中心部に向かってみたのだが、ゴブリンエリートが出てきてなかなか手痛い反撃を食らった。
アレスさんから貰った剣と盾がなかったら太刀打ちできなかったと思う。
もちろん傷はその場でオモチのポーションで完治している。
ちなみに以前クリフトさんから聞いた東の森のモンスターは、昔治療に来た冒険者から聞いた情報で、確実性はなかったと謝られてしまった。
情報と違いゴブリンの亜種達がいるし、スライムの方はまだ見ていないのだ。
オモチが渋っているな。心配性な猫だ。
「でも昨日の二の舞はまずいから、外周部分にいる普通のゴブリンをやっつけたい」
「ん。それなら問題無いにゃ!」
オモチには俺のリュックを収納してもらう。
今俺は片手剣と、片手盾、先日防具屋で買った軽くて硬い皮でできた鎧を着ている。
俺は体力が少ないので、防御力を重視した金属鎧のヘビーアーマーではなく、
動きやすさを重視した、ライトアーマーを選んだ。
オモチ、お店の人、俺と全員納得のチョイスだった。
オモチに探知を使ってもらい効率よく単体でいるゴブリンを刈っていく。
特に今は早急に力をつけるために最初から探知をお願いしている。
オモチもその方がいいといってくれた。
ゴブリンは少し強く2~3回剣で突いたら倒せる。
なので勢いでどんどん倒していく。
忌避感はもう、ほとんどない。
お昼まで討伐を続け、小川で手を洗ったら、お昼にする。
今日は屋台で買っておいたパンに焼いた肉やレタス、チーズの欠片が挟まったサンドイッチを頂く。
「外周部も移動時間の方が長くなってきたな」
「そうだにゃあ。思ったより早く、効率が悪くなって来たにゃあ」
森の中心部を見る。
あの中には外周部とは比べ物にならない強いモンスターがいる。
ちょっと逃げたくなった。
「攻撃魔法をしっかり覚えるまでは、奥はやめた方がいいのにゃ」
俺の視線を追って中心部を見たオモチがそう言った。
「そうだな、魔法だよな。カギは。」
俺は右手をじっとみた。
俺は魔法使いタイプなのにまだ攻撃魔法が使えない。
でも、これからなんだ。クリフトさんというアテがあるんだ。
まだ焦る時間じゃない。
「・・・よし、じゃあ来た道を戻りながら薬草を採取しながら帰りますか」
「うに、じゃあ案内するにゃ」
ほぼ同じルートで戻っているのでモンスターは殆ど出ない。
行きでスルーしていた薬草の採取ポイントで手早く薬草を採取し続ける。
オモチはその辺を飛んでいるちょうちょうを追いかけることもなくじっとしている。
ついでにいうとこの世界にはモンスターだけではなく、普通の虫や動物もいるようだ。
「ふう」
地面に生えている薬草採取。
最初の頃は楽しかったが、すぐに腰に来ることが分かり絶望した。
「オモチ、薬草を入れるから、リュックを出して」
「はいにゃ」
ちょうど1束になったのでリュックを出してもらう。
その辺の雑草で綺麗に束ねて、切り口を濡らした布で巻く。
そして麻でできた小袋に入れる。
ここの場所で、もう1束作るとオモチに伝え採取に戻る。
時々風が葉を揺らす音と、ハサミでザクザクと薬草の葉を切る音だけが聞こえる。
薬草は規定通り、地面より5cmほど上で刈り取ると、1週間ほどで刈り取る前と同じぐらいまでクキと葉を伸ばす。
毒消し草とスタミナ草は根から刈り取る関係でこうはいかないが、
間引くような感じで採取をしてやると栄養状態がよくなり、1年後には株がちょっと多くなって復活するそうだ。
「よし、移動しよう」
リュックを背負いオモチの頭をなでながらそう伝える。
「うにゃあ、リュックは、いいの?」
「うん、この後採取の度に出し入れしてもらうのもめんどうでしょ」
「わかったにゃ」
その後3か所ほどの採取ポイントを経由して森を出た。
「今は良いけど、そのうちいい移動手段がほしいね」
門近くでオモチに貰ったポーションを飲んだ後に思っていたことを話してみる。
「移動手段にゃ? う~ん」
「この世界の移動手段ってどんななんだ?」
「馬車か、徒歩かにゃあ」
「無属性魔法で、何か瞬間移動みたいなのとか、ないのかな」
「瞬間移動なら空間魔法とかなんじゃないかにゃ」
「それらしいのって思いつかない?」
「瞬間移動は無属性では無理にゃ。無属性魔法っていうのは、属性が乗っていない純粋な魔力というだけにゃ」
「ああ、そうだった。」
「瞬間移動ではないけど、無属性には任意で発動するタイプの身体強化もあって、そっちは一時的に速く走れるようになるにゃ。普通に走るよりは何倍も速いにゃ」
「なるほどね」
それも悪くないなといいながら二人で門をくぐる。
急ぐわけじゃないもんね。
「薬草9束で9000円か」
「どうしたにゃ?」
「いや、効率がいいのか悪いのか、何かもっとパッとした何かがないかなと思って」
「ケイタは魔法を覚えたら本領発揮にゃ。それまではこんな感じでいくのがいいのにゃ」
「ああ・・・そうだな。そういえばオモチはウォーターバレットって見たことある?」
「里でみたことがあるにゃ。水を圧縮して小さいとがった石のようにして打ち出す魔法にゃ」
「弾丸だね。でもこの世界に銃はないんだよね?」
「この前ケイタが教えてくれたやつなら聞いたことも見たこともないのにゃ」
「なるほどねえ、弾だけねぇ」
弾だけが高速で飛んでいく、そういう概念だけがこの世界には存在するらしい。
これは考えても仕方ないやつかな。
教会に戻りみんなでご飯を食べる。
今日もパンとスープ。
とはいっても、パンは毎回混ぜてあるものが違うようで、硬さや香りがちょいちょい違う。
朝はりんごの風味があるパンが多い。スープも日によって全然違って飽きはまだ来ていない。
ご飯が終わると雑談タイムになる。
俺は今日1日の事を話す。
「今日も東の森には人が全然いませんでした」
「なんでだろうね~」
「薬草も手付かずなんだもんね」
「ギルドで東の森に薬草の採取ポイントがあることは情報としてあるようでしたね」
「ん~安心感かなあ?」
前の席に座るシスターさんが上を見ながら安心感と言った。
皆の視線が集まったことに気づいたシスターさんがびくりとしたあとに、説明をしてくれた。
「ほ、ほら、上級者はうまみが無いから行かないだけだろうけど、
実力のない冒険者だと近くに助けを呼べる誰かが居たほうが心強いとか考えるんじゃないかな、後はダンジョンだと、入り口まで行けば回復屋さんが居てケガも安心だし」
「森だとどちらもないわね。ポーションもあんな小さい小瓶1本で3000円でしょ?」
「そうね。きっとそういうことよ、それにダンジョンだとモンスターも常に湧くから相手には困らないでしょう? 最悪ダンジョンから出てしまえばそれ以上は追ってこないんだし、浅い階層では新人を守るために有志による巡回もあるみたいだからね」
「へえ、ダンジョンって広いんですか? そんなに沢山の人が入っていたらぎゅうぎゅうにならないんでしょうかね」
「ふふ、まあそういう話は聞かないから、なっていないんでしょうね~」
「そのダンジョンはもうゴールに誰かたどり着いているんですか?」
「まだらしいわよ。たしか・・・」
「56階でしょ? 去年AランクとSランクがいるパーティが合同で最下層を目指したんだけど、56階を確認して戻ってきたのよね」
「100階もあるのにこれじゃあ攻略はまだ先ね」
「一番下まで行っていないのに階層は分かっているんですか?」
「本当に何もわからないのね~ 不思議なことに、入り口に書かれているらしいわよ」
「まじですか」
「不思議よね、どこのダンジョンでもそうらしいわよ」
ダンジョンの不思議について話をしたところで、就寝時間になりみんな自分の部屋に戻り始めた。
俺もフローラさんに洗浄を掛けてもらってから戻ろうとして。
そういえば今日はフローラさん疲れていたのか、あまり雑談に加わってこなかったな。
「もしかして、洗浄のために待っていてくれたんですか?」
「え? ああ、そうね。なんかこれも、ここまで来たら私の使命のようなものね。
むしろこれをやらなかったら気持ち悪くて寝れないと思うわ」
フローラさんは珍しく苦笑いをした。
「ありがとうございます。とても助かります。フローラさん・・・・上手だから。」
少しでも喜ばせたくて謎のほめ方をしてしまった。
「うふふ。うれしいわ。・・・じゃあまた明日ね。うふふ。」
フローラさんは俺の手をぎゅっと握ってから、天使のウィンクをして自分の部屋に帰っていった。
なんにせよ、早く回復魔法を覚えて楽をさせてあげたいなと思いながら、オモチと共にベッドに入った。
お昼に食べたサンドイッチのイメージ♪
誤字報告ありがとうございます。
反映させて頂きました!




