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【第16話】初クエストの為の準備

「それでは」

そう言って、待ち合い席へと続く扉を開く。


扉を開くと同時に喧騒が戻ってくる。

ただし先ほどまでとは違い、冒険者の数は半分くらいになっていた。


「クエストを受けるのか」


「はい、レベルを上げるのと、薬草採取的なことをやろうと思っています」


「薬草か。聞いた話によるとこの辺は取りつくされて、森の方までいかないとないらしいぞ」


「そうなんですね」


やはり昔はこの辺で取れていたのか。まあ今は森で、という最新情報を冒険者からゲットできたのでよしとしよう。


「確か東側の森にはいくつか、採取ポイントがあるって話だったかな。行くだけで1時間ほどかかるが」


「ではレベル上げがてら行ってみますね」


「ああ、あそこはダンジョンもないし、誰も近づかない。ゆっくり自分のペースで頑張ってな」


「はい、ありがとうございます」


待ち合い席で別れ、とりあえずクエストボードを見に行く。

このギルド内だけでもいろんな種族がいるが、オモチは今、猫形態で歩いているためみんながびっくりしていた。

なんでこんなところに猫が、とか、かわいいとか、おいでおいでと呼ぶものなどいろんな反応が見られた。

オモチは相手を確認するものの、ふんと顔を背け俺についてきた。


ボードは色分けがされ、左がFランク、右に行くにつれ高ランクになっていくようだ。

薬草採取の常設クエストはFランクにあった。


「ん、種類があるな」


「ケイタ、だっこ」

オモチが猫形態のまま立ち上がって両手をあげこちらを見ている。


抱っこのポーズをしているオモチがかわいくて、もうしばらく見ていたかったが、ぐっと我慢し抱っこをして立ち上がり二人でクエストボードを見る。


「薬草と、毒消し草、スタミナ草の3つを対象に、10本を1束とし、1束毎に報酬を支払う、と書いてあるにゃ」

いや、文字は読めてますよ、オモチさんや


「この書いてある言語って、何語って呼ばれてるの?」


「ん~。何語っていうのは、しらないにゃ」


「そうか、前居た日本って世界でも同じ文字が使われていたんだ」


「そうなのにゃ?」


「まあ答えは出ないから、とりあえずは葉っぱの形をメモしますか」


「そうするにゃ」


リュックからA5ノートを取り出し、Fランクのボードの下部に貼ってある手書きの薬草の絵をスケッチする。

また、ボードの絵の特徴と、注意点も書く。

長くても、書いてしまえばあとで何度でも読み返せる。

サポートでお客さんのPCをリモートで見た時に、エラーメッセージを中途半端にしかメモしなくてよく痛い目にあっていたのを思い出す。

30秒や1分を節約しても意味なんかあまりない。それよりは正確に処理できるように多少誰かを待たせてでもメモすべきだ。


「薬草は15cm以上まで伸びたものを選び、地面から5cm上で刈り取る。葉の部分を納品する。」


「毒消し草は10cm以上まで伸びたものを選び、根っこごと掘り起こす。根から葉まですべて納品する。」


「スタミナ草は10cm以上まで伸びたものを選び、球根から上5cmほどで切り落とす、根っこ部分を納品する。」


書き終わったら間違えていないか見直しをしてから掲示板から横にずれる。

幸いだれも待っていなかった。


「いや、これは一回では絶対覚えられないな」


「ケイタは賢いにゃ。そのノートがあれば忘れてしまっても平気なのにゃ」


「ああ。これは俺の外部記憶媒体だからな」


どや顔でオモチに説明する。


「がい・・・なんなんにゃ?」


オモチがかわいく首を傾げた。


「ん~・・・自分が覚えておきたいことを、このノート君に覚えておいてもらって、その知識が必要になった時にノート君を見て思い出せるようにしてるってところかな?」


「ノート君?それは紙にゃ、文字を書くものにゃよ?」

説明をまずったようだ。擬人化の概念がオモチには難しそうなので、思いついたら説明するよと言っておいた。



「ケイタは、絵が上手にゃあ」


「ありがとう、スケッチはちょっとした趣味なんだ。この世界にも水彩絵の具はあるかな?」


「わからないにゃ。誰かに聞いてみるのにゃ」


「そうだな、帰ったら聞いてみるか」


まだ日は高い位置にあったので、東の森へ下見に行くことにする。

また、冒険者ギルドから東門へは雑貨屋が通り道なので採取セットを見に行くことにする。


「そうだ、借りてた5万円を返そうか」


「言うと思ったにゃ。でもそれは必要ないのにゃ。


 その10万円は取っておいて、まずは支援金から使っていくのにゃ」


「いくらあるかもわからないのに、難しい話だね」


「そのたびにオモチに相談するのにゃ」


「なるほど、わかったよ」


左腕に収まっているオモチの頭をなでる。


「頼りにしてるぜ」


「にゃあん」


勢いでおでこにちゅうをしたらオモチが変な声で鳴いた。




チリンチリン。


「あら、いらっしゃい、何かあったかしら」

雑貨屋の店員さんが立ち上がり不安そうな顔で聞いてきた。


「いえ、ちゃんと魔力ペンはかけてますよ。今回は採取セットというのがどんなものなのか知りたくて来ました」


「なあんだそっか。うちが置いている採取セットはこれよ、中身がね~」


そういって売り場から1つ採取セットを持ってきて中を見せてくれる。

喋りが最初よりフレンドリーになっている。3万円のペンやら沢山買ったから顧客と認定されたのかもしれない。


「剪定ばさみ、ナイフ、この2つが入るホルダーでしょ、それから採取したものを入れる袋が3つ、湿らせて切った部分をはさんで、薬草とかを長持ちさせる布が3つ入っていて、この小さな水筒に湿らせる用の水をいれるのよ。これで3500円ね」

店員さんは中身を説明してくれた後、ふと俺の体にまかれているベルトを見る。


「あら、いいベルトと剣を手に入れたのね。このホルダーを、そのベルトに通すと便利よ」


「本当だ、拡張性あるなぁ」


「ふふ、他にも別売りのポケットを付けたりも出来るわよ、基本的にこのベルト通しの穴があるものは付けられるわね」


「ガチャガチャつけたら重そうですけど、この程度ならよさそうですね」


「冒険者はすぐにレベルが上がっていくから、重さは問題ないんじゃない?」


「ああ、たしかに。ではこれ買います」


「は~い」


そういって採取セットをお店の紙袋に入れてくれる。

どうせすぐに出すのだが、なんとなく袋が欲しかったので黙って見ていた。


「それじゃあまたよろしくね」


「こちらこそです。それでは」


一度教会に戻る。

クリフトさんには部屋で少し準備したら東の森へ行くことを伝えた。


「東の森ですか。あそこにはゴブリンやスライムといったランクの低いモンスターがいるだけですが、休憩が出来る安全地帯などはないそうですよ。

ダンジョンもないのでそう問題にはならないでしょうが十分気を付けて下さいね。

あと、回復薬はもっていますか?」


「もっているのにゃ」


あれ、そうなんだ。


「そうですか。では夕飯までには戻ってくださいね。くれぐれも、気を付けて。」


「はい、では行ってきます」

誤字報告ありがとうございます。

反映させて頂きました!

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