No.2登校
第2話です。描写ばかりですみません。
小1時間ほど過ぎ、ゲーセンを出て行く。道中、何かあるわけなく、俺は学校に着く。目の前に見えるのは2年前に出来た講義館。その1階に昇降口がある。そこから靴を履き替え、校舎に繋がる廊下を歩く。その廊下の掲示板には部活動勧誘の紙が貼ってある。その横を通って階段を上る。移動教室だったのか、他の生徒とすれ違い、異端の目を向けられる。
別に慣れればどうってことはない。みんなジャガイモだと思えば平気だ。1年生の教室は3階にある。そこまで耐えればあとはこっちのもの。
そんな安定しない心で教室のドアに手を掛け、開ける。
一瞬こっちを見て驚いた者、友達とのおしゃべりに夢中で気付かない者、俺を見ながらこそこそしゃべっている者。あぁ、これだ。俺はいつもこれで現実に帰る。全く持って不条理、理不尽、残酷な現実社会。そして1番前の1番窓側の席に座って、ひと言。
「転生したい……」
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昼休みになった。食べる場所はここ、自分の席。それ以外にどこがある。食べる友達はいない。それも当たり前。弁当は姉が作る。おにぎりに少し大きめの弁当箱に色とりどりのおかずがある。
「いただきます」
美味しい。家事全般を任せてる姉に日々感謝するのはこの時間だけ。
両親はいない。親父が他県の仕事で居ない事が多い。だから俺が小学校5年生の時までは母親が俺たちを育てていた。しかし、愛想を尽かしたのか、また育児で疲れたのか、姉が高校2年生になる頃に別の男と蒸発した。
それについては大人の事情という奴で、理由は知らないし、何も聞かされていない。当時は母親の恋しさでよく泣いていた。その度に姉が慰めてくれていた。今となってはいい思い出だ。
少しセンチメンタルな気分になりながら食事を終える。あとは机に肘をついて伏せて寝るだけ。授業の予鈴が鳴れば起きる。計画は完璧だ。そんな脆弱な計画を立てて浅い睡眠を取る……
はずだった。
何が起きたかはわからん。いや、わかったが反応ができなかった。小柄な女子が俺に話しかけてきた。
「さっきの保健のノート」
凛とした声。っていうのを聞いた事がない。だが、今こいつに聞かされた。黒髪ロング、低身長、小顔で整った顔のパーツ。少し不機嫌そうな顔で、そいつはノートを差し出してきた。
「私勉強したいから今日中に返してね」
少し早口でそいつが言った。
「お、おう。わかった」
と、俺がぎこちない返事。びっくりした……
ノートには‘白浪ちさと’、と書いてあった。それが彼女との出会い。
読んでくださり、ありがとうございます。次回は会話や心情を多く書いていこうと思うのでよかったら読んでください。