「紅、それは彩る空の色」
少し脱線して脳をフレッシュするために書きました。読んでみてください。
「紅、それは彩る空の色」
空が紅い。
いつも同じような時間帯に同じような現象、それは常識に変わり知識に変わった。
『今日が終わる』
そんな一つの指標として空は存在している。
多少の誤差はあれどいつかは訪れる今日という日の終末。
ある人は『今日も頑張った』と思い、クタクタになりながらも自分の成長を実感して帰っていく。
ある人は『今日が終わった』と思い、体は元気なのに時間という制約に縛られて帰っていく。
平等に訪れる1日の終末、これから始まるのは【いつかやってくる日】が考えさせる日常の…いや一日の尊さ。
さぁ旅をしよう、平等と歌いながら残酷なまでに差が生まれるこの世界を。
ーーー
終わりがあるのなら始まりも必然的に存在する。それは時間という制約上の仕様のため仕方のないことだ。
黎明、太陽が射す美しいほどに光が朝を彩る。
暗闇の中に存在した街灯たちは青空に見守られながら太陽によって着色される。
道路も草原も建物も…そして人間も。
何もかもが着色され昨日見た景色と同じ物を創り上げてくれる。
故に人はその景色に心惹かれる。崇拝する。
いつしかそれは尊い物に変わり価値ある物へ。
だが日々はそこまで優しくない、それこそ地獄のような光景を見せつけてくる…いやようなではなく実際の地獄を見せてくる。
それは【2○○5年 ○月1○日 午前5時4○分】。
同日午前○0時、政○は『東京都○区地○非常○害対○○部』を設置。同日午前1○時、気象庁は当災害を『令和○○年 東京都○区地震』と命名。
一方マスメディア達は多くの名を付けたが、○月○4日の閣議にて口頭了解された名で当災害を統一し報道することになる。
【○関東直○地震】と。
これよりこの日起きた多くの出来事をその場で遭遇した情報提供者より報告する。
【ケース1、宮前 棠三(みや○き と○ぞう)さん】
『震度7だぞ!みんなディスクの下に入れ!!』
それはテレビから流れた不吉で不快な警告音と共に録音されていた宮前さんの悲鳴にも近い声だった。建物は横揺れだけではなく縦揺れも起きて、あらゆる方向から何かが軋むような音がする。さらに女性従業員もいたのか甲高い悲鳴も遠くから聞こえた。
『落ち着け!この建物は転がし免震で出来ている。この状況に陥っても耐えられるように設計されているんだ!!』
宮前さんは他者を落ち着かせようと1つの情報を開示する。その情報は建物の設計に関する情報だった。
後の『災害対象物件調査』と言う検査でも報告されたが免震装置を設置していたのは事実だった。だが一つ問題がここに生じる。
【何故それを安全と言えるのだろうか】という当然の疑問。『物が降ってくるかも知れないから机の中に入れ』や『壁の近くに寄るな』などは理解できる。しかし他人の言葉で証明された建物の安全を本当の極限状態で信じられるのだろうか。
『お、おい!!なにをしている!!?戻れ!』
『ここが危険なのは目に見えてるだろ!!たとえ建物が潰れなくても家具で潰されちゃ意味がない!なら逃げさせてもらうよ!!』
多くの災害ではこのような現象がよく起きる。いわゆる【その場に留まる】か【その場から離れる】か。どちらも正しいが状況に応じてこれらのリスクは目に見えない形で莫大する。
現にこの場に留まった31名の内24名は無傷、残った方々は軽傷のみ。だが建物から出て行った15名は全員死亡。
再度言うがどちらも正しい、しかし今回のリスクでは家具に潰された方がマシだった。なんせ他に複数の人がいることがデカイ。免震のシステムとして大きく横に揺れることがあるがそれに多くの人は恐怖することが多い。が、それはビルそのものが高いから仕方がないことである。
ちなみに外に逃げてしまった者たちは二次災害とされる【津波】によって8名、【火災】によって7名の死亡が確認された。
最後に地上38階から眺めた地表に広がる災害現場への感想がご本人から声に出して言われていたのでこれを記す。
『地面が…いや空が、紅い』
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【ケース2、吉原 つぐめ(よ○は○ つぐ○)さん】
『キャァァア!!』
甲高い声が道に木霊する。その道に歩く人も走る車もない、それら全ては停止している。人はその場にしゃがみ、車は停車する形で。
激しく上下左右に揺れる地面はいつも歩いていた道ではないと吉原さんの口から説明された。現に周囲のカメラから集めた情報では多くのひび割れが発生して地下にあった配水管などが顔を表していたのも判明している。
『ね、ねぇ!!どこに逃げるのが正解なの!?』
カメラで撮影していた友人にそう話しかけるも彼は、【堂山玄馬(ど○○まげ○ま)さん】はうんともすんとも言わない。吉原さん本人曰く、堂山さんは夢がカメラマンだったことでこの状況を撮りたいと思ってしまったので黙ったと話してくれた。
だが現実として死んでしまった人の考えたことはもうわからないが、推測し我々はそれを尊重しなければならない。
また別れる際にこのカメラは堂山さんが吉原さんへ渡したそうだ。ここで撮りたい物を撮ったが他のも撮りたい…だからこれはお前が持てとのことだった。
鉄筋コンクリート造のマンションに逃げ込んだ吉原さんはただ無言でそれを回したそうだ。
【津波】で流されていってしまう多くの建物や【火災】によって燃え上がる建物を。
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【ケース3、堂山 玄馬(ど○○ま げ○ま)さん】
これは災害が起きた一年後に復興庁データ処理課及び災害対策本部に【呈山】という名で届けられた。
それは濡れていて字が擦れたと考える人もいれば呈山さんと言う人物が送ってきたと考える人がいる。多くの人は『前者が正しい、後者は何を考えているだ』思うだろうが私は後者を推す。
なぜなら動画に映し出された惨状を現在も身元確認が出来ていない彼が生き残って我々に送って来れた方が信じられないからだ。
iPhoneで撮っていたからかその動画はスピーディーだった。冒頭はブレが凄く映像を解読するのは出来なかったがその後ろに流れる音は【津波】だというのはわかった。
『現在移動中のため…はぁはぁ…撮影できていないがここは○○区の○○○にある土手沿い…逆流してくる波を撮影したので近くに立っているマンションへ向かっている…』
所々緑色や舗装された道が映ることがある。しかしこの状況でどのレベルの被害が出ているのか分からない。ましてやこの状態では撮影時刻が不明のため土手が決壊する前としかわからない。
『友達の報告によればすでに東京湾付近一帯は浸水。大田区、港区、江東区、江戸川区に1から3メートルくらいの津波が到達。交通網の殆どは麻痺しそれらを乗り捨て近くにある建物へ避難されてるとのこと』
それは地震が発生してから1分後の被害と似ており情報に正確性があると確認。後に会話に出てきた友達(匿名希望のため以後の表記を統一する)は情報提供者として対策本部に尽力してくれた。
さて、おおよそだが今現在彼よりも詳しく被害を網羅している人物が東京都内にいないことを証明したわけなのだがそんな最前線で情報収集していたら当然の如く、しっぺ返しを喰らう。
『はぁはぁ…よし、情報はあらかた集まったし近くのマンションにでも逃g…』
それは運命という『何か』が悪戯で行ったのか。
それは震災という『何か』が追い詰めてきたのか。
徐々に遅くなり画面のブレが無くなっていく。そして遂に停止してしまう。そこから画面は正面に向けられ…
『計算だとまだなはずだろ!!なんでd…』
映っていたのは少し高い位置に存在する土手を孤立させるべく津波が流れ込んでいくところだった。黒く濁ったそれは凄まじい音と共に市街地へと流れ込んでいく。ここら辺…というよりも東京都の大半はゼロメートル地帯であり、一度流れ込んでしまえば引くことはない池に変わる。
その濁流の突破直後、左右に揺られるカメラを解析した結果、決壊も波が乗り越えたということはなかった。ただ…ただ、工事されてたと思われる箇所からジワジワと水が街へ入っていくのが映った。
ここで多くの人はなぜそこまで絶望しているのかわからないだろうが基本的に【津波】と言うものは1メートルの物で100パーセント死因に繋がり、70センチで70パーセント近くになっていることから体の半分までの水があったらそれは死と同義であることを再認識してもらいたい。故に1メートルを優に超え今もなお流れ込む濁流は死そのものだ。
『クソ…なら橋渡って近くにある高速に!!』
ここで映像は止まってしまった。この後の事は誰も知らず身元は確認できていない。
だからこそ推測するが、これも悪くない判断だった。一か八かで建物へ向かうために濁流の中を渡るよりも近くにある橋を渡りその先の高速まで行った方が確実に助かる。だがそれは情報不足による誤判断と呼べる。
1から3メートルくらいの【津波】がやってきているのに悠長に橋を渡れるのだろうか?【津波】というのは3メートル縦に伸びた状態で立方形のままやってくることを指し、波とは対象にぶつかり上方に伸びそれが落ちてくることを指す。
実際問題として【東日本大震災】通称【3.11】の際には道路という交通網として考えた際に4000近くの箇所が損壊していたと報告されている。そして動画を見るに初撃となる波で大破したところに押し寄せてきた【津波】によって被害は増大したと思われる。
それらを踏まえると海辺に近い位置にいた堂山さんは橋を渡り高速の入り口付近で【津波】または波に飲み込まれていると考えられる。
それは帰れると思っていた道が分断された衝撃による思考力の低下時間も踏まえて考えた結果だ。
総じて我々は彼が生きているという希望的観測を口に出してはいけないと結論付けている。
何故なら彼もこの国のために動いた人物の一人であり、守るべきであった市民なのだから。
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【ケース4、武藤 秀治(むと○ し○○じ)さん】
『地震…なのか??』
それはドライブレコーダーから撮っていた。目の前に映る車は激しく左右に揺れ建物も軋む音を鳴らす。アスファルト舗装の道路に亀裂が走り、歩道を歩いていた歩行者は皆しゃがんでいた。
『…海付近の地域では津波が到達している模様……か。なら俺のところは大丈夫だな』
車を端に寄せて停車、鍵を掛けずに避難を開始するが近辺には鉄筋コンクリート造の建物がない。だから彼に二つの選択肢が迫られる。
【ビル街へ向かう】か【少しでも高い建物に入るか】だ。前者は津波被害が出ているとされる海付近へ向かうことになり、後者はそこらへんの建物に入るため大した差は無いとされる。彼が選んだ選択肢を彼が後に撮った映像から分析しよう。
『すげぇな…ここらまで来ちまってやがる…』
彼は海付近に行くことになるがそれでも丈夫な建物に入ることが出来た。先ほども説明したが、たかが1メートルくらいとバカにしては即死する【津波】がここまで来ている。十分に死因に繋がる原因が目の前に広がっている。しかし二次災害とは何も【津波】だけではない。
『おい!あっちの方を見ろよ!!』
そう声を荒げるのは一緒に逃げたのか隣にいる男性だった。カメラがそちらを向けるとそこには二つの現象が映し出された。
一つ目は【火災旋風】。密集地帯であるからこそ発生してしまい多大なる被害を生み出す。有名な被害で言えば【関東大震災】で10万近くの死者が出たのだがその内訳の9万人という尊い命をこの災害が奪ったとされる。当時の報告によれば130近くの火災が起きたとされるが、この映像を見るに過去にも複数の【火災旋風】が起きたとも予想はできる。
二つ目は【津波火災】。これは【津波】によって原油などが内地へ運ばれそこで発火し【火災】が発生することだ。発生したのは【東日本大震災】で200から300という数の建物に被害を及ぼした。真夜中なのに火が灯っている中継映像は記憶に残っているだろう。
これら2つとも消化する事は難しく、問題視されている物だ。自然に弱まりそこから消化するほかないのだが…武藤さんは巻き込まれずに済んだことが映像からわかる。
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【ケース5、御堂 麗(○どう ○○か)さん】
彼女は特殊なケースだ。上に書いた【津波】、【火災】の2つよりも発生する場所は限定されるがそれでも東京都では必ず発生する現象がある。
それは【液状化現象】。
記憶がある方はわかるだろうが【北海道胆振東部地震】と呼ばれる大地震。そこでは昔は谷であった場所を火山灰などで埋め生活していたが水が溜まり揺れたことで水が表面に、そして緩んだ地表はコンクリートのように少しずつ固まって行った。
現在では復旧した都市だが当時は多大なる被害が出ていた事は事実だ。
だからこそ今回の現象と結び付けている。
『何あれ…車が沈んで行く??』
映し出されたのは車の車輪が泥のようになった地面に埋まって行く光景だった。我々は胆振の状態を情報共有しているため表現できるがしっかりと記憶している民間人は少数だろう。なんせ自分には縁がないと割り切って生活していたのだから。
これは皮肉ではない。ある地方の人々に不幸が訪れたらそれは確かに嘆かわしいことだ。だが誰も彼もが泣けば変わるのだろうか?という疑問もある。故に該当箇所ではない地方ではそれこそ『そんなことがあったんだ』という認識を持つ人が多くなるのは必然だ。
『お、おい!あんた!!なんd…』
『娘の命を助けようとしない奴なんていないだろ!!!』
だが自分の身内がいれば話は変わる。何故私の身内が?何故俺の子供が?何故?何故?何故?。
結局人間というのはそういうものだ。誰かが傷ついても平気な顔をするくせに自分が知ってる顔がいれば形相を変える。そんな卑怯な生物だ。
だからこそ生まれる奇跡もある。
『わ、わかった!ならまずはこいつを持ってけ!あんたが娘さんを助けたと思ったら引っ張る』
『あとこれを持ってって、ハンマーなんて丁度いいものはないけど数枚の金貨とビニール袋でガラスは割れるというわ!』
『ここら辺にマンホールはない。だけど地割れによって穴が空いてるかもしれないからこの棒を持って行きな』
一人目は紐を、二人目はビニール袋を、3人目はスライドバーを。ちなみにスライドバーとは工事中と表現するためにおいてあるコーンとバーのバーの方のことである。
また他にもその場には人物はいたがこの3人以上に具体的な活動をしていない。
だがこの奇跡は父親である男性が諦めないからこそ起きた物である、周囲が持っている知識を使ったからこその結果である。
この後、娘さんは助けられ外的傷害もなく無事だったとのこと。たとえ全く意味のない知識であっても人助けに繋がる。
知ろうとする力はいつか自分以外の人をも助けれる。だが知ろうとしないのは何も得られない。助けようとしても助けられず無力であることを実感させられるだけだ。
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【いつか必ずやってくる悲劇】
結局のところこれらは作者の妄想。過去のデータを参照して少しのリアリティを加えただけの事。
確かに【阪神淡路大震災】ほどの損害が出ないかもしれない、【関東大震災】ほどの【火災】は発生しないのかもしれない、【東日本大震災】ほどの【津波】は来ないのかもしれない、【北海道胆振東部地震】ほどの【液状化現象】は起きないのかもしれない。
だが『絶対に発生しないと断言できる人物』はこの世にいるのだろうか。いや詐欺師や自分の仮説に酔っている科学者には届かないだろう。しかし今言いたいのは一般市民だ。
多くの被害は発生する、それは大前提になるがそれでも回避する選択の余地はある。完璧な選択をすれば生き残れるかもしれないが状況が許さないだろう。だからこそ選択肢を多くしてほしい。
日本政府が発表した将来起こるであろう被害は
建物の全壊85万棟、死者1万1千人、重傷者3万7千人、中軽傷者17万人、帰宅困難者700万人。
環状7号および6号線にて火災が多数。
一ヶ月後でも避難所生活者が270万人、疎開者が140万人、ガス停止65万件。
そして東京都に住んでいる人口は930万人(2015年のデータ抜粋)。意味をちゃんと伝えると東京都だけでそれだけの被害が出る。首都圏で考えればどうだ?さらに視野を広げれば併発地震が起きてもおかしくない、南海トラフ地震が同時に発生してもおかしくない。
現に【東日本大震災】では原子力発電所と石油コンビナートが二次災害として被害を起きている。
大多数が不幸になることは確実。なのに今日という安全が続いているからとそれから目を逸らすのは話が違うのではないだろうか。
いや何も毎日地震が起きるかもと不安がってほしいのではなく、ただ何もできず大自然と言う名の強大な暴力を前に何もせず無抵抗になんて…自己的解釈だが『つまらない』だろう。
多くの可能性を秘めいてる生物が、今まで種族レベルで生き残ってこれた知性という武器を破棄してそれを選ぶなんて冗談じゃない。
少しの努力で全ては一変するのに多くの人はあと一歩でやめてしまう。届かないと思い込んで、自分には力がないと考えて、悪い方に考えて考えてそして思考を放棄する。
考えて活路を見出す種族がそれをやらなくなれば何になる。
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最後に言うが、あくまで今の自分を変えろとは言わない。ただ努力したらいつのまにか前の自分よりも良い自分になっているはずだ。
この空は誰も彼にも平等に訪れる。
時刻は夕方、みんなが帰る時間。そう言わんばかりに今日の空は快晴で雲に邪魔されることなく赤く紅く光が地球を照らしていく。