1足目
初めまして、私グリケィディア王国第一皇女アルビオンと申します。
以後お見知りおきを、よろしくお願い致しますわ。
「お嬢様、お目覚めの時間でございます」
「・・・ん」
「・・・今日はいい天気でございますよ」
「午後にお散歩したいわ、いいかしら?」
「はい、それではこちらに」
グリケィディア王国 第一皇女アルビオン
彼女の朝は側近のスイの一言から始まる。
皇女の朝は早い。
「へっ・・・ぶえっくしょい・・・」
「お嬢様」
「は、はい」
「そのくしゃみ、もう少しお淑やかにしてくださいませ」
「すみません」
スイは厳しいけど、何処か姉のようにしてくれる。
10も年が離れていれば、必然とそうなるのもわかるけど。
「おはようございます、お嬢様。」
「おはよう、サンゴ」
「お食事中申し訳ありませんが、本日の公務の説明を」
「どうぞ、話して」
サンゴはスイと同じ側近で、
厳しく、真面目、堅苦しい と3つ揃ってる
いわゆる堅物。
「アルビオン様、聞いておられますか?」
「す、すみません。ちょっと・・・」
いきなり笑い出した私にサンゴは厳しい目をする。
紅茶を口に含むと、ダージリンの甘い濃厚な味が広がった。
「やぁ、おはよう諸君」
「・・・!」
私以外の全てのものが、地にひざを付く。
「お父様、おはようございます」
「やぁ、アルビオン今日も美しいね」
「お褒めの言葉、光栄にございます」
父、グリケィディア王は足が悪く
車椅子の生活が多い。
今も側近に車椅子を押され、食卓に現れたよう。
それからは、父と私の朝の食事の時間。
この時間は1日の間で唯一、父と娘でいられる時間だったりする。
その昔、グリケィディア王国には
1人の優秀な皇子と1人の不幸な少女がおりました。
皇子は学問にも精通し、武芸もさることながら
まさに文武両道というとても優秀な少年でした。
少女は学問にこそ精通はしているものの、
武芸には全くの無頓着。
ましてや、両親を戦争で亡くすという可愛そうな運命の少女でした。
皇子と少女の出会いは通っていた学院でした。
皇子は男女とはず人気で、
少女は図書館で毎日本を読む、
それが2人の普通の日常でした。
ある日、皇子と少女はとても不思議な出会いをします。
少女がとても読みたい本を目の前で皇子に借りられてしまうのです。
この時、グリケィディアでは、レディーファーストがマナーでしたので
少女は皇子とあろう方がと啖呵を切ってしまうのです。
今となっては、それは運命的だったのかも知れません。
お互い名前しか知らない2人が出会い、
皇子はそれから女性と遊ぶのを辞めました。
本人には無意識だったのかも知れませんが
周りから見れば少女との出会いが引き金になったと言われていたのです。
ある夜、学院でのパーティがあった時、
少女はパーティには興味はなく、
その日は夜も図書館で本を読んでいました。
ただその日は何だか集中出来ず、
パーティが行われている講堂を見つめていました。
そこに1人の来客。
それは正装をした皇子でした。
少女は皇子に驚き、皮肉な言葉ばかりを並べてしまいます。
皇子は一言
『君に会いに来た』
と言いました。
少女は大人しく、皇子の手を取り、図書館で初めてのワルツを踊りました。
皇子の心の中に少女がいたように、
少女の心の中にも皇子がいたのです。
周囲は2人の付き合いを反対しました。
皇子の両親である国王と国王陛下は、何も言わず
少女は学院の友達から虐めを受けましたが
元々頑固な性格ゆえ、何をされても負ける気はしなかったようです。
2人が学院を卒業する時、少女は皇子の手を取り
両親がいる自分の住んでいた村を訪れます。
小さくひっそりと立てられた墓に少年は1つの誓いを立てます。
『彼女はとても澄んだ心を持っています。
そして、何にも変えることの出来ない、大切な存在です。
学院を卒業し、私は父の後を継ぐべく、様々なことをしていかなくてはいけません。
しかし、そこに彼女のいない生活は耐えることが出来ません。
周りは勿論反対をしています。
それでもいいと私は考えています。そばに彼女さえいれば、それで。
ご両親に今日は、そのことを伝えに来ました。
彼女さえいれば、皇子の地位など、どうでもいいと、私は心からそう思うのです。
心から彼女を愛していると、ここに誓いを』
少女は涙を流し、
とても嬉しそうに皇子に抱きつきました。
2人は手を取り、王と王妃の下に向かいました。
2人が城に着くと、国王陛下が少女の手を取りどこかに行ってしまいました。
『お前が愛しているのは、親のない孤児院の貧乏な女だ。
お前も知っての通り、周りからの反対の声が殆どだ。
しかしそれでも、彼女と婚約をすると申すか?』
国王の言葉をかみ締めるように皇子は、頷きました。
皇子は一言、国王である自分の父親にこう言ったのです。
『皇子としてではなく、一人の男として彼女を愛しているのです』
国王は微笑み、それを認めました。
それからの期間はあっという間に過ぎ、
2人が婚約をしたと発表をすると
認めてくれる国民などおらず、
学院を卒業した4年後の22歳の時に
2人はひっそりと小さな教会で結婚式をあげました。
豪華なドレスも、豪華な食事も、豪華な招待客も
何もない本当に小さな結婚式でした。
でも皇子も少女も本当に幸せそうで、
それを知った国民たちも、少しずつではありますが
2人のことを認めるようになっていったのです。
2人が結婚してから、数年後
待望の赤ちゃんが産まれました。
第一皇子と第一皇女。
その2人の皇子と皇女はとても優秀に育ち、
とても両親と似ていました。
国民たちは愛に家柄など関係ないのだと改めて実感したのです。
優秀な血を持った皇子。
不幸な血を持った少女。
2人が仲睦まじくしている姿は
とても国民から支持を得ました。
それからというものグリケィディア王国では、
第一皇子と第一皇女が産まれると
とても縁起がいいとされていました。
それは今日の今でも引き継がれているのです。
グリケィディア王国 第二王期、第十二章 45頁〜49頁
「第一皇子と第一皇女ね・・・」
本を閉じ、物思いにふけるアルビオン皇女。
彼女の前途多難は日々はこれから始まるのである。
作者のゆチャンです、どうも。
友人と話していた時に出来た話です。
脚色はあたしがしているのですが、
元々の話は2人で作ってます。
途中の話は長いですね。。。w
変えるかも知れません←
それでは次回を楽しみにお待ちくださいませ。
メールフォーム作りました。
何かあればどうぞ。
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