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第8話 塔の上

ディノ姫とアナイス、7人の王妃たちが塔の一番上に着いた時には、すでに城の中に敵兵が入り込んでいた。


塔の上から見ると、何か国かの旗を掲げた兵士が庭に点在しているのが分かる。


「あれはグレー王国の旗・・・そして隣にはロゼ王国の・・・。やはり近隣諸国の裏切りは本当だったのか・・・!」

火曜日のお母さまは苦々しく言いながら、鎧を身にまとう。


他の曜日の王妃たちもそれぞれ簡単な武装を始めた。


アナイスはディノを抱きしめて部屋の隅でガタガタ震えている。


ディノは、鎧と剣の鉄の香りを嗅いでいると、全身の血が熱くたぎってくるのを感じた。


(鉄の匂いは血の匂いと似ているんだ・・・。返り血を浴びるとその匂いが一層強くなって・・・)


「お母さま、私にも剣を下さい!」

ディノはアナイスを振りほどいて立ち上がった。

火曜日のお母さまはディノを愛おしそうに見た。


「まあディノ、なんてけなげなのでしょう。でも7歳の姫であるあなたは何も心配することはないのですよ。ここにいかなる敵が攻めて来ようとも、お母さまたちが守ってあげます。」


王妃たちは皆、文武両道で、剣の訓練も一通りしていた。

中でも火曜日のお母さまはもともと騎士としてお城に仕えていた剣の達人だった。

燃えるような赤毛をなびかせて闘う姿に王が一目惚れしたのだ。


「お願い、お願い・・・!」(オレなら戦えるんだ!!)

ディノが反対を押し切って剣を手に取ろうとした時、ディノの産みの母である日曜日のお母さまがその手を止めた。


「ディノ、王様から、あなたにはいかなる剣も触れさせてはならないとキツく言われているの・・・。それに剣って重いのよ。その天使のように白くて細い腕で持てるわけがないわ・・・。」

ディノと同じ茶色の髪、瞳で母は言った。

「お母さま・・・お願い剣を・・・だって私はきっと・・・・!」


その時、塔のすぐ下が騒がしくなり始めた。


「くっ、もうここまで来たのか・・・!ディノを急ぎあそこに隠さなければ・・・!」


塔の最上階の部屋の壁には、隠し部屋がある。人一人が、立って入るのがやっとの小さな空間。


「いいこと、ディノ。たとえ何があろうとも、ここから出てはいけません。声を上げてもいけません。外から鍵を掛けておきます。これは、3時間たてば解けてなくなる鍵ですから、閉じ込められたままになる心配はありません。

3時間たって、誰も助けに来ないようであれば、外で物音がしないのを確認して出ていらっしゃい。

みんなあなたのことを愛していますよ、ディノ・・・。」


月曜日のお母さまは、嫌がるディノを小部屋に押し込めた。

「お母さまっ!アナイス!」



「アナイス・・・。あなたには申し訳ないのだけれど、服を着替えてディノの身代わりになって欲しいの・・・。こんなことを頼むなんて・・・許してちょうだい。」

水曜日のお母さまがアナイスに頭を下げる。


「ああ王妃様、お顔をお上げください!アナイスは姫様のためでしたらなんでも喜んで致しますし、もとよりその覚悟にございます。!」


「や・・・やめて!どうしてそんなことをするの?お母さま!アナイス!」


壁の中からディノがいくら叫んでも返答はない。


そして間もなく、大勢の足音とともに兵士が入ってきた音が聞こえてきた。


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