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孤独の草原

 「この草原、広すぎない?」誰に問いかけた言葉かはわからないが、そう呟いてしまっても仕方ないほどに草原は広かった。街道と思われる切れ目に向けてひたすら進んでも一向にたどり着かない。おっさんの目算では1キロほど歩けば街道にたどり着けると踏んでいたが、かれこれ数時間歩いても街道と思われる切れ目が広くなるだけである。


 (走ってみるか?)以前のおっさんでは思いつきもしない発想。運動不足でメタボだったため、30分も歩けば息が上がっていたのに、この体では息が上がるどころか、まったく疲れないのである。華奢な見た目とは違い、圧倒的な力が秘められていそうだ。「軽く走ってみるか…ああああ!?」


 軽くのつもりが予想外の速度がでて思わず叫ぶおっさん。急制動をかけて止まったおっさんは後ろを振り向いてさらに驚く。(土埃が上がってる…。)おっさんが走った後には冗談のように高く土埃が上がり、草原が耕された畑のように土を晒していた。「うおおおおお!すげぇえええ!もしかしてチートって奴か!ひゃっほー!!」おっさん、年甲斐もなく大はしゃぎである。「これはもう、考査するしかないな!いえぁあ!」見知らぬ場所へ訳も分からず放り出され、別人になってしまった不安、ストレスのせいなのか、おっさんの脳内はよくわからない物質を垂れ流していた。


 「うおおおおおおおお!」雄叫びを上げおっさん、猛ダッシュ!地響きを立てひたすら走ること数時間。日が沈む前に街道と思われる場所へ到着。「広!道幅ひっろい!スゲー広い!」舗装はなかったが、ただ真直ぐに、そして広く道が続いていた。「しかし、この道…?はいったい何が通るためにこんなに広いんだ?」幅は400~500メートルはあるだろうか。そんなものが地平辺まで続いていた。そう左右ともに、地平線まで続いている。


 「どっちに行けばいいんだよ…」先ほどまでのはしゃぎぶりが嘘のように沈み込むおっさん。そもそも街道と思っていた道は、街に続いているかも怪しいほどに、その先には何も見えなかった。視界を遮るものもなく、ただ真直ぐに。まるでこの世界は草原しかない。そう思わせるほどにただひたすら真直ぐに。


 「ちくしょう…」その呟きは、草原の風に吹かれ、誰の耳に届くこともなく消えてしまった。








 「あー、喉乾いた。腹も減った」あれからおっさんは腰につっていた大剣を倒し、倒れた方に進んだ。何かを考える気力もなく、ただひたすら進んだ。日が沈み、星が空を満たした頃、ついには力尽き、倒れた。「誰か、助けてくれよ…うぅ」嗚咽を漏らし、ただ助けを求め眠りについた。


END










 いやいやいや、終わってねーから。おっさんは何かにツッコミを入れ、目覚めた。(あぁ…畜生。最悪だ。腹はすいたし、喉は乾いてるし)喉の渇きと空腹は相変わらずだが、睡眠をとったことにより体力と、そして若干の気力が回復していた。(この体は本当に頑丈なんだなぁ)おっさんがおっさんだった頃、こんな無茶をしていれば立ち上がることすらできなかっただろう。「はぁ」ため息を吐き(進むしか、ないか…)おっさんは地平線のその先を目指し、また走り出した。


 そう、走り出したのである。寝る前もひたすら走っていた。尋常ならざる体力に支えられ、この虚無のような草原を抜けたいという願いにより、ただ、ただ、ただ走ったのだ。そして、ついには人工物のような物を見つける。人はいない。だが何もない草原に現れた変化。「あああああああああ!!!!」それだけでおっさんは、歓喜に震えた。


 それは道の横に作られていた。休憩所のようなものだろうか。かなり大規模なもので、屋根こそなかったが、複数の水場と大量の椅子とテーブルが設置されていた。椅子とテーブルはすべて石で作られておりその場から動かせないよう固定されているようだ。「うぉおおお!水だぁああああ!」世紀末モヒカンのような雄叫びを上げ、おっさんは水場へ走るのであった。その水場は、噴水のような作りをしており、中央の穴から滾滾と水を湛えていた。


 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛いぎがえるううううう」現金なものだが、おっさんは先ほどまでの絶望を忘れはしゃいでいた。水を飲む、ただそれだけのことで、ただそれだけのことが、ひたすらに嬉しかった。


エロまでが遠い。何故なのか。

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