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悪役令嬢、断罪への手引き  作者: 翠雨
第一章 王立学園生活の始まり
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第五話 罠と過ち

済みませんでした。

やっと体調が戻りました。一日だけ無断で活動報告に書いていない日にお休みしてしまいましたが、また元気に投稿したいと思います。

これからもよろしくお願いいたします。

「おい、落ち着いたか? そんなに衝撃だったのかよ? この国じゃあ、三歳でも知ってる事なのによぉ。

しかも、頻繁に陛下との謁見もある。普通ならあんなに頻繁に会うことは出来ないんだぞ」


「別に、知らなかったわけじゃないですよ。それに謁見は『神樹』の経過報告だと思ってたんです」


知らなかったわけじゃない。ただ同じ家名の別の家だと思っただけなんだ。

ほら、マイヤー家なんて伯爵と子爵、男爵だけで五家は有る。

だから、レイデル家も二、三家くらい有るのだと思っていたのだ。


「お前が自分の家柄を何だと思ってたのかは知らないが、そもそも、俺がお前の父親に無理を言ってここに来たのは、お前の父親がこないだの王との謁見で

“次女がだいぶ育ってきた。水属性の魔法なら私を超えている”

って言ったって言う情報を摑んで、お前と面識を持っておこうと考えたからだ。

かの元魔術師団長を超える水属性魔法の使い手だぞ。

見逃す訳がない」


確かに、魔術師団長を超える魔法の使い手なら、逃すという選択は無いだろう。

だが、問題はその魔術師が私だと言うことだ。

まだ、父が元魔術師団長だという事実さえも受け止め切れていないのだから、私がそんな魔法の使い手だと言われても、全くピンとこない。

いくら、超絶名家の異才だと言われようとも、気分は貧乏辺境伯家の一般人なのだ。


「だとしたら、何故貴方は家が貧乏な事に気付いたのですか? 顔合わせのつもりだったのでしょう? 」


そう、彼の話には少々不可解な事があった。

彼は最初から家が貧乏だと知って脅しに来た訳では無いようだった。

ならば、何故家が貧乏だと気付いたのだろうか。辺境伯家として十分なもてなしは為たつもりだった。


「あぁ、その話は社交界での噂話の中でもかなり信憑性の高い物として小さな家にまで広まっていたんだ。

『神樹』の恩恵は多くの貴族にとって垂涎の代物だった。だが、相手は四大英傑の直系、確証がない状態で手を出すと痛手を負うかもしれないと、考えられたらしい。

そんで、お前の家が雇ったエルフの建築士が家にかけた結界魔法に阻まれた。

俺も、実際この家に来るまでは確証を持てなかった。だが、四大英傑の直系にしてはもてなしが質素過ぎたし、使用人の動きがぎこちなかった。メイド頭や、馬屋番は当てはまらなかったがな」


あれで質素だとは…………王都の大貴族は何と恐ろしいのだろうか。

きっと、湯水のように金を使って、王都の経済を回しているに違いない。


「あー、怯えている所悪いが、お前には王都にあるこの国最高の教育機関、王立学園に入学して貰う」


協力するんだろ? と、彼は人を殺せそうな程美しい満面の笑みを浮かべた。


その笑顔を見た途端、自分が罠にかかったことがわかった。

彼は対価なしに王太子の婚約者のふりなどするわけがなかった。きっと、全て上手くいった暁には王太子の側近の椅子が用意されていたに違いない。

そして、ここに来た理由、王太子の側近になったときに魔術師団長並みの腕前を持つ魔術師は喉から手が出るほど欲しいだろう。

何故なら、一の力を持つ百人に、百の力を持つ一人が勝てる可能性があるこの世界で誰にも知られずに強力な私兵を持つことは暗殺やその他諸々に一番有効な手立てであるからだ。

手に入れたら、私兵としてではなく魔術師団に入れてそれなりの地位を築かさせるのも良いかもしれない。

つまり、彼は私に女装を気付かれた瞬間からそれを使って私を手に入れようとしていた。全く、私に女装を気付かれた事など全くの予想外だっただろうに、いっそ清々しい程に面白い罠である。


今思えばこの時の私はちょっと浮かれていたのだ。

国家機密を知った高揚感からかもしれないし、私を見事に罠にかけた彼のせいかもしれない。


つまり浅慮だった。

実は彼はとても大きな欠点を抱えた人間で、後からそれがとてつもなく面倒な事態を引き起こすのだが、その時の私には彼が特別な人間に思えてならなかった。

翌朝にはそんな半ば崇拝に達しそうな感情なんて物は綺麗さっぱりと消えたが、その時は確かに思っていた、思ってしまっていたのだ。


本当の名前も知らない彼に対して、この人にならついていったも良いかな、なんて事を。


新しい風にときめいたこの夜、私は取り返しのつかない過ちを犯してしまっていたようです。

観閲ありがとうございました。

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