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悪役令嬢、断罪への手引き  作者: 翠雨
第一章 王立学園生活の始まり
4/19

第四話 彼の秘密と新事実

観閲ありがとうございます。

遅くなって済みません。


長くなりそうなので切らせて貰いました。

短めです

「お前、さ。気付いただろ、俺が女じゃ無いこと」


彼は盛大に淑女の顔をかなぐり捨て、不敵な笑みを顔に浮かべる。

私に男で有ることがばれていたら、彼も都合が悪い筈なのに、彼の表情は一切怯えた様子を見せなかった。

どころか、男としての顔を出した事で、先程よりも態度がでかい気もする。

いや、でかい。私の事もお前呼ばわりである。


さっきまでの麗しい令嬢は何処へ行ったのか、いっそ清々しいまでの猫被りだ。


「うわっ」


私はこの状況で何か言わなければならなかったのだろう。否定か肯定か、少しでも会話を進められる言葉を。


だが、私が発したのは時間差で出た驚きの声だった。


「何だよ、色気のねぇ声だな。せっかく俺がここまで近づいてやってるのによぉ」


彼は滅多に人に近づけないというご尊顔を歪めながら、不満げな声を出した。


だが、そんな物求められても困る。私は実の父親から女らしくないと日々言われ続けている位なのだ。

女性らしい色気を出すなど、幾ら不満げな声を出されても無理だ。


そして、私は気付いてしまった。今の台詞で私が逃げる機会を無くしたことに。

あの時、一言否定して、鍵を開けて出て行けば良かったのだ。


厄介事の匂いがするが、今は彼の話を聞くしか無いだろう。

王太子の婚約者が男なんて下手したら国家反逆罪に繋がるかもしれないのだから。


「確かに私は気付いてしまいました。わざわざ確かめたという事は、話してくださるのですよね、事情を。

どうせレイデル家が貧乏なのも知っていて、協力しろとか言い出すんでしょう。」


真剣な顔をして彼の美しい薄紫色の目を見つめる。


「そうだ、話のわかる奴は嫌いじゃない」


彼は満足げな顔をした。

本当に表情がよく変わる人だ、今までどうやってお淑やかにしていたのだろうか。


私と彼は今まで座っていた椅子にまた座り直した。


「俺の事情かぁ、ちょっと長くなるからな。質問はその後にしてくれよ」


「事の始まりは今から二十年前に遡る。丁度、今の陛下が王太子で今の俺たちと同い年だった時の話だ。

知っていると思うが、一応話しておくぞ。

単刀直入に言ってしまえば陛下が恋に落ちたんだよ侯爵令嬢と。

その侯爵令嬢が今の王妃殿下な訳なんだが。

勿論、そのとき陛下はまだ公式に発表されていないものの婚約者が居たし、相手の令嬢にも居た。

まぁ、そこから色々あって、陛下の婚約者と侯爵令嬢の婚約者が両思いだった事がわかったりだとか、侯爵令嬢がその時の王妃殿下、今の王太后殿下に教えを請いたり、つまりなんだかんだで上手くいった。

でも、そんなこと何度も成功するわけがない。

で、ここからが俺も関わってくる話だ。

息子が産まれたとき、陛下は考えた。自分の息子はきっと自分と同じように良い令嬢を見つけるだろう。

その時に婚約が邪魔になってはいけない。だが、王太子に婚約者をつけない訳にはいかない。

そこで、陛下は思いついた。そうだ、男を女装させて婚約者にしようと。

突拍子もない考えだよな、だけどな成功しちまったんだよ。何故なら王太子と同年代に母親の生き写しとまで言われた、俺という超女顔が居たからだ

そんで、俺は陛下から婚約祝いの名目で幻影魔法が付与された宝石、いわゆる魔法石を預かって女のふりしている訳だ」


彼は、物憂げな顔で溜息をつく。


私、知らなかった。二十年前にそんなことがあったなんて。


「おいおい、その顔は知らなかったって事かよ。かなり最初で躓いてるじゃねぇか。

何で知らないんだよ。お前の両親の話だろ? 」


両親の話とはどういう事だろうか? 私の親は国王夫妻じゃないぞ。


「まだ気付かねぇのかよ。良いか、お前の母親は元陛下の婚約者で、お前の父親は元王妃殿下の婚約者だよ」


え、侯爵家の中でも王家に嫁げるような家柄だったんですか? 母さん。

王妃殿下って、元々王家に嫁いでも問題ない家柄の出でしたよね。家ってそんな人を嫁に貰えるような家柄だったんですか? 父さん。


彼は溜息をついた。


「お前、自分の家柄事も理解していないのか? 」


済みません、理解しておりません。

しかも、さっきから思考を読まれているような気がするのですが、そこんとこ如何なんでしょうか?


「ふん、俺は公爵令息だぜ? お前の考えなんて表情を見ればわかる。それくらいじゃなきゃすぐに欲深い貴族につけ込まれる。

お前は違ったかもしれないが、俺はそういう世界で生きているんだよ。今までもこれからも…………な」


彼は偉そうに話し始めたのに、最後は切なそうに呟いた。

感情の起伏の激しい俺様だ。


正直言って面倒くさいが、協力するからには、彼にはしっかりと情報を教えて貰わなければ困る。


「で? 私の家柄がなんなんです? 」


「良いか、お前の家はうちの国パレスエルテ王国を作った四大英傑のうち、『魔道の至宝』レイヴン・レイデルの直系。

ただ一つ、王家より魔力量の多い人間が産まれる可能性が有り、どの時代にも天才・鬼才・異才を生み出した超絶名家だ!

そして、近代の当主も『神樹レトゥレリィト』が生まれるまでは魔術師団長として才能を発揮し、その息子は剣の鬼才、娘は商いの天才と名高い」


超絶名家って、家が?

貧乏辺境伯家が?

あのほわほわした天然の兄さんが剣の鬼才?

あの兄さんを毎日殴ってた姉さんが商いの天才?


彼は意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「因みにお前は、レイデル家当主が魔法の才能が有るので自分で育てると言い、社交界に一度も出していない秘蔵の娘。

知る人ぞ知る異才だそうだ」


し、死ぬ。


次々と新事実がわかってきたこの夜、私はちょっと死にそうです。


観閲ありがとうございました。

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