エピローグ
「攻撃隊、全滅しました!」
敵艦に機銃掃射を行っていた相田が悲壮な声を上げた。
急上昇して敵弾を避けた坂巻が、改めて海域を確認する。対空砲火の乱れ飛ぶその中に味方機の姿はもはや見えず、敵艦隊は再び強固な陣形を組もうとしていた。
「くそ、ここまでか!」
憎らし気に敵空母を睨んだ、次の瞬間。
「ああ!? 機長見てください!」
相田の報告を聞くまでも無く、坂巻はその光景に目を奪われていた。
敵空母の舷側に大きな水柱が上がり、船体が傾斜していく。
「やりやがった……あいつら、やりやがった! 相田、打電だ!」
「合点!」
『敵空母に命中弾一、自爆突入一。敵艦は傾斜炎上中』
相田が素早く電鍵を叩き、戦果を伝える。
(根拠地では、今頃拍手喝采だろうな……)
散って行った仲間達の顔を思い浮かべながら、坂巻は黒煙を吹き上げる敵空母を見下ろしつつ感慨に耽っていた。
防御力に定評のある米空母が魚雷の一本位で沈みはしないだろうが、この損害を無視して侵攻を続けるとも思えない。少なくともショートランドの連中が撤退する時間位は、稼げた筈だ。
満足気に頷き、敵艦の対空射程から逃れようと機体を翻した時。
「機長、二時の方向に敵編隊。ガ島からの敵援軍と思われます」
相田が、まるで明日の天気を伝える様な口調で報告して来た。
見るとソロモンに昇る朝日を背に、遠目にも殺気に満ち溢れた敵戦闘機が数十機、一直線に向って来ている。
「どうする? 相田。逃げるかね?」
坂巻も、相変らず緊張感の欠片も無い口調で聞き返す。
「この鈍亀で、ですか? もう日も上がりましたから、まず無理でしょうね」
「よし。ならば戦おう。殴り込むぞ!」
「そうしましょう。靖国で宮さん達に先輩面されたくありませんからね」
相田の軽口に、坂巻は返答代わりに鋭いターンを打って敵編隊へと機首を向けた。
了